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2025年09月09日

世界生命保険マーケット将来予測-2035年収入保険料各国ランキング-今後10年は年平均5%成長

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛

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ドイツ最大の保険グループであるアリアンツは、2025年5月27日付で、「Allianz Global Insurance Report 2025: Rising demand for protection」を公表した。同レポートでは、世界の保険マーケットの2024年における現状や、各国の10年後の収入保険料を予測しており、アリアンツでは毎年同時期に公表している。

同レポートによれば、2024年における世界の保険マーケットは、対前年で損害保険は7.7%増、生命保険は同10.4%増であり、特に生命保険は著しい成長を示した。

また、2035年までの間において、損害保険は平均4.5%、生命保険は同5.0%の成長を予測している。
【図表1】保険マーケット成長率(世界合計)

1――2024年の世界保険市場の状況

1――2024年の世界保険市場の状況

2024年における世界の生命保険マーケット(合計値)は、上記のとおり対前年で10.4%増と好調だった。

(図表2)は、2024年の保険料収入ランキングである。

トップの米国は、高金利が続く中で、金利が低下する前に年金への駆け込み加入が多く発生したことを背景に1、対前年23.0%増2と大幅に進展しており、近年著しい成長を続けている中国(19.7%)、インド(11.1%)を上回る水準となった3
【図表2】2024年各国生保収入保険料(上位10か国)
日本は、中国、英国に続いて、第4位となっている。日本の増加率が、対前年▲18.7%と大幅減少であるが、生命保険協会が公表している収入保険料は、2024年度36.8兆円、2023年度37.5兆円、2024年度は対前年▲1.9%であり、実態としては微減となっている。アリアンツの数値が大幅減となっている背景は不明であるが、2024年の記録的な円安も一因と考えられる4
 
1 「Allianz Global Insurance Report 2025」 P8。
2 各国の増加率は、「Allianz Global Insurance Report 2025」ならびに「同2024」掲載数値より、筆者にて計算した。以下、同様。
3 「Allianz Global Insurance Report 2025」によれば、過去10年間(2014年-2024年)の生保収入保険料の平均増加率は、中国11.7%、インド10.2%に対して、米国は4.8%となっている。
4 アリアンツの同レポートは、各国の収入保険料はユーロにて掲載されていることから、上記生命保険協会公表による収入保険料(2024年度36.8兆円、2023年度37.5兆円)を2024年平均レートにてユーロ換算すると、2024年対前年数値は▲9.0%、月別でみると最も円安となった7月平均レートだと、▲12.8%となる。
(円・ユーロの換算レートは、日銀「外国為替市況(日次)」より、年平均値、7月平均値を算出した。)

2――2035年の世界生命保険市場の将来予測

2――2035年の世界生命保険市場の将来予測

(図表3)は、上記レポートによる2035年における世界各国の生保収入保険料の予測値である。アリアンツでは、今後10年間の世界の生保マーケットについて、不確実性は高まっているものの、金利上昇の恩恵を受け、平均で5.0%増になると予想している。
【図表3】2035年の生保収入保険料予測(上位10か国・地域)
各国別にみてみると、米国は、トップを堅持しているものの、2024年時点では2位の中国の2倍近い水準(米国8,608億ドル、中国4,568億ドル)となっているのに対し、2035年には中国が8割強の水準に迫っている。また、2024年には第9位だったインドは、2035年には英国に次いで第4位に、日本はそれらに続いて第5位になることが予想されている5,6

アリアンツは、2025年の世界のGDP成長率は、2.3%と、パンデミック以来の低水準に落ち込むと予想している7。米国のトランプ関税や、地政学的要因等を背景に、世界的な不確実性は、パンデミック時並みに高まるとされている。

政治・経済面における世界的な不確実性が高まる中で、世界の生保マーケットは、先が見通しにくい状況となっており、今後も引き続き注視して参りたい。
 
5 インドは、図表2の参考で示したとおり、昨年の「Allianz Global Insurance Report 2024」では、2034年には第3位になることが予想されていた。また、表にはないが、「同 2023」における2033年予測でも、第3位とされていた。
6 一方、フィッチ(Fitch Solutions Group Limited, BMI)による2034年の生保収入保険料予測によれば、トップの米国(11,301億ドル、2024年からの平均増加率4.2%)に続いて、中国(6,082億ドル、同4.4%)、日本(4,744億ドル、同5.4%)、英国(3,266億ドル、同2.6%)、フランス(2,324億ドル、同1.8%)、カナダ(2,282億ドル、同6.5%)、インド(2,020億ドル、同7.4%)、ドイツ(1,850億ドル、同6.5%)、イタリア(1,782億ドル、同5.0%)、韓国(1,219億ドル、同3.9%)となっている。当予測では、2034年においても依然として米国は中国の2倍近い(1.86倍)水準となっており、両者の差は大きい。また、日本は第3位、インドは第7位となっており、予測主体によって、結果も区々である。
7 なお、IMFによる2025年の世界GDP成長率は、2.9%となっている。(IMF「World Economic Outlook database: April 2025」の数値より、筆者にて計算。)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月09日「保険・年金フォーカス」)

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保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛 (ありむら ひろし)

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴
  • 【職歴】
    1989年 日本生命入社
    1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
    1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

    2023年~ 大阪経済大学経済学部非常勤講師

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