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BMIと体型に関する認識のズレ~年齢・性別による認識の違いと健康行動の関係

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――はじめに
「日本女性の"やせ"の特徴4」で紹介したとおり、日本の女性、特に若年女性は、やせ(BMI5が18.5kg/m2未満。以下、単位の表記は省略する。)の割合が高いことや、継続的にやせている人の割合が上昇していることが、他国と比較しても顕著な特徴となっている。上記資料によると、FUSの主な原因として、「生来の体質による体質性痩せ」「SNS、ファッション誌などのメディアの影響によるやせ志向」「社会経済的要因・貧困などによる低栄養」の3つの視点があるとされている。
このうち、「メディアの影響によるやせ志向」とは、メディア等の影響により、「痩せ=美」という価値観が浸透し、特に若年女性において、食事摂取制限を中心とした減量行動(いわゆるダイエット)の志向が強まっており、現代の親世代を含む成人の多くが、理想体重を痩せた体型に偏って認識している実態が指摘されている。
そこで、本稿では、ニッセイ基礎研究所が行っている「被用者の働き方と健康に関する調査6」の結果を使って、若年女性だけでなく、男性や中高年女性を含めてBMIと自分の体型に対する認識の実態について、男女や年齢による特徴を紹介する。
なお、本調査は、全国の18~64歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象としてインターネットで行った調査であることから、国全体の状況とは異なる可能性がある。
1 日本肥満学会ほか、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会
2 日本肥満学会(2025年4月)「閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題―新たな症候群の確立について―(https://www.jasso.or.jp/data/Introduction/pdf/academic-information_statement_20250416.pdf)」(2025年6月23日アクセス)
3 乾愛「女性の低体重・低栄養症候群(FUS)とは?-日本肥満学会が新たな疾患概念を提唱、プレコンセプションケアが解決の一助となるか-(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=82308?site=nli)」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2025年6月17日)
4 村松容子「日本女性の"やせ"の特徴(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=82528?site=nli)」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2025年7月2日)
5 BMIは、Body Mass Index=[体重(kg)]÷[身長(m)2]
6 本調査は、全国の18~64歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象とするインターネット調査で、全国6地区、性別、年齢階層別(10歳ごと)の分布を、国勢調査の分布にあわせて回遊している。調査は毎年3月にインターネットで実施している。2025年調査の回収数は5784である。
2――分析結果
(1) 対象者のBMIと、自分の体型に対する認識
まず、この調査における対象者の性・年齢群別BMI区分(図表1)と、自分の体型に対する認識を尋ねた結果(図表2)を示す。本稿では、安定した結果を得るため、2021年~2025年の計5年分の調査の結果をプールしたデータのうち、BMIが取得可能なものを使った。
日本肥満学会では、18.5未満を「やせ(低体重)」、18.5以上25未満を「普通体重」、25以上を「肥満」としている。一方、厚生労働省ではBMIが22を、肥満との関連が強い糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)に最もかかりにくい数値として標準体重としている7ことから、本稿では、BMIが18.5以上25未満の普通体重を22を境として2つに分け、(1)18.5未満、(2)18.5以上22未満、(3)22以上25未満、(4)25以上の4区分とした。
自分自身の体型に対する認識は、自分について「肥満である」または「やせている」に当てはまるかどうかを尋ねた結果とした。調査では、「肥満である」「やせている」の両方を同時に選ぶことはできず、いずれも選ばなかった場合を「ふつう」と考えているとみなした。
その結果、BMI区分は、男女とも概ね年齢が高いほどBMIが高い区分の割合が高く、年齢が低いほどBMIが低い区分の割合が高い傾向があった。男女を比較すると、男性の方がBMIが高い区分の割合が高く、BMIが18.5未満の割合は女性が男性を大幅に上回った。自分の体型に対する認識は、男女とも、「肥満」の割合は年齢が高いほど高く、男女とも18~34歳で1割程度、55歳以上で2割程度と、男女の差は小さい。「やせ」の割合は男性はBMI区分の(1)BMI<18.5と同じく年齢が低いほど高かったが、女性はBMI<18.5とは異なり、年齢が低いほど低い傾向があった。
このように、18~34歳の女性はBMIでは18.5未満の「やせ」が他年代の女性と比べて最も高かったが、自分の体型を「やせている」と考えている割合は他年代の女性と比べて最も低かった。
7 厚生労働省e-ヘルスネット「肥満と健康(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-001.html)」(2025年6月23日アクセス)
続いて、性・年齢群別に、BMI区分別の自分の体型に対する認識を示す(図表3)。
まず、現在のBMIが(1)18.5未満の人についてみる。一般に、「やせ」に分類されるとおり、自分を「肥満」と考えている人は、男女ともすべての年齢群でほとんどいない。「やせ」と考えている割合は、男女とも若いほど低く、若年ほど「ふつう」と考える傾向があった。全年齢群で女性は男性よりも低く、女性の方が「ふつう」と考えており、18~34歳の女性ではおよそ7割が「ふつう」と認識している。
つづいて、BMIが(2)18.5以上22未満である人についてみる。この区分は、一般には、「普通(やせ気味)」である。今回の結果でも「肥満」と考えている人は5%未満と低く、「ふつう」と考えている割合が(1)18.5未満と比べて大幅に増え8~9割にのぼった。年齢別にみると、男女とも若いほど「ふつう」と考えていて、女性が男性よりも「ふつう」と考える傾向がある点は(1)18.5未満と同様だった。
次に、(3)BMIが22以上25未満である人についてみると、「肥満」と考えている割合が高くなってくる。男性では年齢によらず1割程度で、女性は男性と比べて高く一番低い18~34歳で20%、一番高い55歳以上で27.7%と年齢が高いほど高かった。「やせ」と考えている人はほとんどいない。
最後に、(4)BMIが25以上である人についてみると、他区分と比べて「肥満」が大幅に高い。年齢別にみると、男女とも18~34歳で低く、35歳以上は年齢よらず18~34歳より高い。女性が男性よりも「肥満」と考えている割合が高い。逆に言えば、BMIが25以上であっても、男性の4割程度は、「ふつう」と考えていた。
これらの結果、BMIが低くても「ふつう」と思う傾向は、18~34歳や女性、特に18~34歳女性に多い傾向があるが、BMIが低いのに「太っている」と思ってしまうといった認識の大きな乖離は少ないと考えられる。
男女で差があったのは18.5以上25未満のいわゆる「ふつう」の評価で、18.5以上22未満で、女性は「ふつう」と考え、22以上25未満で、男性が「ふつう」と考える傾向があった。
(2025年07月03日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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