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2025年06月19日

米住宅着工・許可件数(25年5月)-着工件数はコロナ禍で落ち込んだ20年5月以来の水準に減少

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:住宅着工、許可件数ともに市場予想を下回る

6月18日、米国センサス局は5月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は125.6万件(前月改定値:139.2万件)と136.1万件から上方修正された前月、市場予想の135.0万件(Bloomberg集計の中央値)を大幅に下回り、コロナ禍で落ち込んだ20年5月以来の水準に減少した(図表1、図表3)。

先行指標である着工許可件数(季節調整済、年率)は139.3万件(前月:142.2万件)と前月、市場予想の142.2万件を下回った(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:集合住宅の着工件数が前月比で大幅に減少

住宅着工件数の伸びは前月比▲9.8%(前月:+2.7%)と前月からマイナスに転じた(図表3)。戸建て住宅が+0.4%(前月:▲3.0%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じたものの、集合住宅が▲29.7%(前月:+16.0%)と2桁のマイナスに転じて着工件数全体を押し下げた(図表4)。

前年同月比は▲4.6%(前月:+0.5%)と3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。集合住宅が+4.1%(前月:+42.2%)と3ヵ月連続でプラスを維持した一方、戸建てが▲7.3%(前月:▲12.6%)と前月からマイナス幅は縮小したものの、5ヵ月連続のマイナスとなって全体を押し下げた。

地域別寄与度(前月比)は、西部が+2.6%ポイント(前月:▲3.7%ポイント)と前月からプラスに転じた一方、北東部が▲5.0%ポイント(前月:+2.0%ポイント)、南部が▲5.8%ポイント(前月:+5.8%ポイント)と前月からマイナスに転じたほか、中西部が▲1.5%ポイント(前月:▲1.3%ポイント)と2ヵ月連続のマイナスとなった。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が▲2.0%(前月:▲4.0%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表5)。戸建てが▲2.7%(前月:▲5.0%)と3ヵ月連続でマイナスとなったほか、集合住宅も▲0.8%(前月:▲2.0%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表6)。

前年同月比は▲1.0%(前月:▲2.5%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。集合住宅が+10.5%(前月:+4.8%)と2桁のプラスとなった一方、戸建てが▲6.4%(前月:▲6.1%)と12ヵ月連続のマイナスとなって許可件数全体を押し下げた。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、25年6月が32(前月:34)と前月からの回復を見込んだ市場予想(36)に反して、22年12月以来の水準に悪化した(図表7)。

内訳は販売現況が35(前月:37)と12年6月以来の水準に落ち込んだほか、販売見込みが40(前月:42))、客足が21(前月:23)とそれぞれ23年11月以来の水準に悪化した。

6月の結果について、NAHBのバディ・ヒューズ会長は「住宅ローン金利の上昇と関税、経済の不確実性により、買い手はますます傍観者に移動しています」と住宅需要が低迷している状況を示した。また、NAHBは最新の調査で建設業者の37%が6月に値下げを報告したとし、これは22年に月次統計を開始して以来の高い水準となったことを指摘した。このような住宅需要の弱さに加え、住宅着工許可件数がマイナスとなっていることを踏まえると当面住宅着工件数は軟調に推移することが見込まれる。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月19日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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