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2025年08月06日

インフレは生活を豊かにするのか?-求められるインフレなき賃金上昇

神戸大学経済経営研究所 リサーチフェロー ニッセイ基礎研究所 客員研究員 高橋 亘

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■要旨

インフレが物価高という名で生活苦をもたらしているのに、インフレを待望した「物価と賃金の好循環」を疑う声は高まらず実質賃金の下落が続いている。暮らし向きの改善には、賃金・所得の増加は必須だが、そのためにインフレは論理的には必要はないし、逆に実際には暮らし向きを悪化させている。インフレと賃上げでは、優先すべきは賃上げであり、必ずしもインフレを先行させる必要はない。賃金は、企業・個人の業績によって決まるもので、インフレ自体では実質賃金の上昇は望めない。

本稿1では、好循環論などのインフレ待望政策を批判的に検討するとともにインフレを伴わない賃上げの方途について考えていく。そのなかで、賃上げに対する経営の責任と政府自身が率先すべき賃上げ策として、エッセンシャルワーカーの処遇改善などを挙げた
 
1 本稿は同名の神戸大学経済経営研究所デイスカッション・ペーパーを転載したものである。


■目次

1――はじめに:インフレ政策・好循環論への疑問
2――政策目標の在り方:最優先は暮らし向きの改善
3――インフレと賃金上昇
  1|賃金と物価の好循環:フィリップス曲線では実質賃金は低下
  2|インフレによる経済活性化:懸念は価格機能への悪影響
  3|価格転嫁とホームメードインフレ:負担の分担と便乗値上げ
  4|2%のインフレ目標:現状の問題点
4――賃金上昇、インフレ以外の途
  1|賃金上昇:マクロの原則とミクロの原則
  2|生産性の上昇:経営による工夫が必要
  3|賃金上昇とコーポレート・ガバナンス改革:賃上げは経営の決断
  4|エッセンシャルワーカーの賃上げの優先:政府の率先が重要
5――結びに代えて:ケインズの観察

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月06日「基礎研レポート」)

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