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- 2025・2026年度経済見通し-25年1-3月期GDP2次速報後改定
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2025年06月09日
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1.2025年1-3月期の実質GDPは前期比年率▲0.2%へ上方修正
6/9に内閣府が公表した2025年1-3月期の実質GDP(2次速報値)は前期比▲0.0%(年率▲0.2%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(年率▲0.7%)から上方修正された。
2025年1-3月期の法人企業統計の結果を受けて、設備投資は前期比1.4%から同1.1%へ下方修正されたが、民間在庫変動が前期比・寄与度0.3%から同0.6%へ上方修正されたこと、1次速報後に公表された基礎統計の結果が反映され、民間消費が前期比0.0%から同0.1%へ上方修正されたことが成長率の上振れにつながった。
2025年1-3月期2次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。実質GDP成長率は2024年4-6月期が前期比年率3.8%から同3.9%へ上方修正される一方、2024年7-9月期が前期比年率1.0%から同0.9%へ、10-12月期が前期比年率2.4%から同2.2%へ下方修正された。この結果、2024年度の実質GDP成長率は0.8%と1次速報と変わらなかった。
2025年1-3月期の法人企業統計の結果を受けて、設備投資は前期比1.4%から同1.1%へ下方修正されたが、民間在庫変動が前期比・寄与度0.3%から同0.6%へ上方修正されたこと、1次速報後に公表された基礎統計の結果が反映され、民間消費が前期比0.0%から同0.1%へ上方修正されたことが成長率の上振れにつながった。
2025年1-3月期2次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。実質GDP成長率は2024年4-6月期が前期比年率3.8%から同3.9%へ上方修正される一方、2024年7-9月期が前期比年率1.0%から同0.9%へ、10-12月期が前期比年率2.4%から同2.2%へ下方修正された。この結果、2024年度の実質GDP成長率は0.8%と1次速報と変わらなかった。
(トランプ関税の影響が一部で顕在化)
米国の関税引き上げが本格化した2025年4月の貿易統計によれば、米国向けの輸出金額は前年比▲1.8%(3月:同3.1%)と4ヵ月ぶりに減少した。内訳をみると、輸出数量は前年比1.2%(3月:同▲4.9%)と11ヵ月ぶりに増加に転じており、数量面では関税引き上げの影響は表れていない。一方、輸出価格は3月の前年比8.4%から▲3.0%へと急低下した。輸出価格低下の一因は円高だが、為替レートの変動以上に輸出価格指数が低下した。
また、25%の追加関税が課せられた米国向け自動車輸出は前年比▲4.8%(3月:同4.1%)と4ヵ月ぶりの減少となった。輸出数量は前年比11.8%(3月:同5.7%)と伸びを高めたが、輸出価格が前年比▲14.8%(同▲1.5%)と低下幅が急拡大したことが輸出金額の減少につながった。
貿易統計の輸出価格指数は円ベースのため、為替変動の影響が含まれるが、日本銀行の「企業物価指数」では、契約通貨ベースと円ベースの輸出物価指数が公表されている。4月の北米向け乗用車の輸出物価指数は契約通貨ベースで前年比▲4.6%となり、3月の同▲1.5%から低下幅が拡大した(円ベースは3月:前年比▲1.8%→4月:同▲10.2%)。
米国の関税引き上げが本格化した2025年4月の貿易統計によれば、米国向けの輸出金額は前年比▲1.8%(3月:同3.1%)と4ヵ月ぶりに減少した。内訳をみると、輸出数量は前年比1.2%(3月:同▲4.9%)と11ヵ月ぶりに増加に転じており、数量面では関税引き上げの影響は表れていない。一方、輸出価格は3月の前年比8.4%から▲3.0%へと急低下した。輸出価格低下の一因は円高だが、為替レートの変動以上に輸出価格指数が低下した。
また、25%の追加関税が課せられた米国向け自動車輸出は前年比▲4.8%(3月:同4.1%)と4ヵ月ぶりの減少となった。輸出数量は前年比11.8%(3月:同5.7%)と伸びを高めたが、輸出価格が前年比▲14.8%(同▲1.5%)と低下幅が急拡大したことが輸出金額の減少につながった。
貿易統計の輸出価格指数は円ベースのため、為替変動の影響が含まれるが、日本銀行の「企業物価指数」では、契約通貨ベースと円ベースの輸出物価指数が公表されている。4月の北米向け乗用車の輸出物価指数は契約通貨ベースで前年比▲4.6%となり、3月の同▲1.5%から低下幅が拡大した(円ベースは3月:前年比▲1.8%→4月:同▲10.2%)。
関税引き上げによる輸出への影響は、価格競争力の低下に伴う数量の減少と輸出企業の価格引き下げに分けられる。両者ともに輸出金額の減少を通じて企業収益の悪化につながるが、4月の貿易統計では後者の動きが顕著に表れたと考えられる。
現時点では、日本企業は米国の関税引き上げに対して、輸出数量の落ち込みを緩和するために価格の引き下げを行っていることが窺える。関税引き上げの影響は様々な波及経路を通じて広範囲に及ぶこと、顕在化するまでにタイムラグが生じることから、4月単月の動きだけでは判断できない。関税引き上げの影響が数量面、価格面にどのように出てくるかを見極める上で、5月以降の貿易統計が注目される。
現時点では、日本企業は米国の関税引き上げに対して、輸出数量の落ち込みを緩和するために価格の引き下げを行っていることが窺える。関税引き上げの影響は様々な波及経路を通じて広範囲に及ぶこと、顕在化するまでにタイムラグが生じることから、4月単月の動きだけでは判断できない。関税引き上げの影響が数量面、価格面にどのように出てくるかを見極める上で、5月以降の貿易統計が注目される。
(2026年の春闘賃上げ率は鈍化へ)
連合が6/5に公表した「2025春季生活闘争 第6回回答集計結果」によれば、2025年の平均賃上げ率は5.26%(前年実績比+0.22%)、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.71%となった。2025年の春闘賃上げ率が、33年ぶりの高水準となった2024年(5.10%)に続き5%台となることは確実とみられる。
春闘賃上げ率が高水準を続けている背景には、賃上げ率を左右する労働需給、企業収益、物価の3要素がいずれも大きく改善してきたことがある。しかし、先行きについては、トランプ関税による景気減速を受けて、賃上げを巡る環境も悪化することが見込まれる。人口減少、少子高齢化という人口動態面の要因で企業の人手不足感が強い状態は継続する可能性があるが、輸出の減少を起点とした企業収益の悪化や物価上昇率の低下が賃上げの抑制につながるだろう。
2026年の春闘賃上げ率は4.2%と予想する。厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)によれば、2024年の春闘賃上げ率は5.33%と33年ぶりの高水準となり、2025年も5%台となることが見込まれる(当研究所の予想は5.20%)。2026年の春闘賃上げ率が前年から大きく下がることは避けられない情勢だが、4%台前半の賃上げ水準は、定期昇給を除いたベースアップでみれば2%台後半であり、引き続き日銀の物価目標の2%を上回っている。
連合が6/5に公表した「2025春季生活闘争 第6回回答集計結果」によれば、2025年の平均賃上げ率は5.26%(前年実績比+0.22%)、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.71%となった。2025年の春闘賃上げ率が、33年ぶりの高水準となった2024年(5.10%)に続き5%台となることは確実とみられる。
春闘賃上げ率が高水準を続けている背景には、賃上げ率を左右する労働需給、企業収益、物価の3要素がいずれも大きく改善してきたことがある。しかし、先行きについては、トランプ関税による景気減速を受けて、賃上げを巡る環境も悪化することが見込まれる。人口減少、少子高齢化という人口動態面の要因で企業の人手不足感が強い状態は継続する可能性があるが、輸出の減少を起点とした企業収益の悪化や物価上昇率の低下が賃上げの抑制につながるだろう。
2026年の春闘賃上げ率は4.2%と予想する。厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)によれば、2024年の春闘賃上げ率は5.33%と33年ぶりの高水準となり、2025年も5%台となることが見込まれる(当研究所の予想は5.20%)。2026年の春闘賃上げ率が前年から大きく下がることは避けられない情勢だが、4%台前半の賃上げ水準は、定期昇給を除いたベースアップでみれば2%台後半であり、引き続き日銀の物価目標の2%を上回っている。

実質賃金上昇率が持続的・安定的にプラスとなるのは、名目賃金上昇率が2%台後半で推移する中、消費者物価上昇率(持家の帰属家賃を除く総合)が2%台前半まで鈍化することが見込まれる2025年10-12月期以降と予想する。
2.実質成長率は2025年度0.3%、2026年度0.9%を予想
2025年1-3月期のGDP2次速報を受けて、5/19に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2025年度が0.3%、2026年度が0.9%と予想する。成長率見通しは5月時点と変えていない。
2025年1-3月期は前期比年率▲0.2%と4四半期ぶりのマイナス成長になったが、前期の反動で外需が大幅マイナスとなったことがその主因で、均してみれば景気は緩やかな回復基調を維持している。しかし、先行きについては、米国の関税引き上げの影響で輸出が大きく下押しされることは不可避と考えられる。また、消費者物価上昇率の高止まりから民間消費の低迷が続き、トランプ関税による不確実性の高まりを受けて、設備投資が抑制されることが想定される。
2025年4-6月期は民間消費、設備投資等の国内需要が伸び悩む中、輸出が減少することから前期比年率▲0.9%と2四半期連続のマイナス成長となるだろう。7-9月期は輸出の減少ペースが緩やかとなること、物価上昇率の鈍化を受けて民間消費が緩やかに持ち直すことなどから、前期比年率0.2%とかろうじて3四半期ぶりのプラス成長になると予想する。しかし、現在停止されている相互関税の上乗せ分が発動された場合には、マイナス成長が継続し、景気後退に陥るリスクが高まるだろう。
2025年度後半以降は、関税引き上げの影響が徐々に減衰し、輸出が下げ止まる中、民間消費、設備投資を中心に国内需要が増加し、潜在成長率を若干上回る年率1%程度の成長が続くことが予想される。
2025年1-3月期は前期比年率▲0.2%と4四半期ぶりのマイナス成長になったが、前期の反動で外需が大幅マイナスとなったことがその主因で、均してみれば景気は緩やかな回復基調を維持している。しかし、先行きについては、米国の関税引き上げの影響で輸出が大きく下押しされることは不可避と考えられる。また、消費者物価上昇率の高止まりから民間消費の低迷が続き、トランプ関税による不確実性の高まりを受けて、設備投資が抑制されることが想定される。
2025年4-6月期は民間消費、設備投資等の国内需要が伸び悩む中、輸出が減少することから前期比年率▲0.9%と2四半期連続のマイナス成長となるだろう。7-9月期は輸出の減少ペースが緩やかとなること、物価上昇率の鈍化を受けて民間消費が緩やかに持ち直すことなどから、前期比年率0.2%とかろうじて3四半期ぶりのプラス成長になると予想する。しかし、現在停止されている相互関税の上乗せ分が発動された場合には、マイナス成長が継続し、景気後退に陥るリスクが高まるだろう。
2025年度後半以降は、関税引き上げの影響が徐々に減衰し、輸出が下げ止まる中、民間消費、設備投資を中心に国内需要が増加し、潜在成長率を若干上回る年率1%程度の成長が続くことが予想される。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は2023年9月以降、前年比で2%台の伸びが続いていたが、「酷暑乗り切り緊急支援」の終了に伴う電気・都市ガス代の上昇率急拡大を主因として2024年12月に同3.0%となった後、食料(除く生鮮食品)の上昇ペース加速を主因として2025年4月には同3.5%まで伸びを高めた。
食料(除く生鮮食品)は2023年8月の前年比9.2%をピークに2024年7月には同2.6%まで鈍化したが、その後は輸入物価の再上昇に米価格の高騰が加わったことから再び上昇率が高まり、2025年4月は同7.0%となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は2023年9月以降、前年比で2%台の伸びが続いていたが、「酷暑乗り切り緊急支援」の終了に伴う電気・都市ガス代の上昇率急拡大を主因として2024年12月に同3.0%となった後、食料(除く生鮮食品)の上昇ペース加速を主因として2025年4月には同3.5%まで伸びを高めた。
食料(除く生鮮食品)は2023年8月の前年比9.2%をピークに2024年7月には同2.6%まで鈍化したが、その後は輸入物価の再上昇に米価格の高騰が加わったことから再び上昇率が高まり、2025年4月は同7.0%となった。

これに対し、2023年初から足もとまでの飲食料品の輸入物価上昇率は15%程度と前回の上昇局面の4分の1程度にとどまっているが、この間に消費者物価の食料(除く生鮮食品)は10%以上上昇している。人件費や物流費の価格転嫁に加え、物価高が継続したことで企業の値上げに対する抵抗感が薄れていることがこの背景にあると考えられる。食料(除く生鮮食品)の上昇率は当面高止まりする可能性が高い。
エネルギー価格は政策に左右される展開が続いている。政府は物価高対策として、5/22からガソリン補助金の新制度を導入している。これまでは、小売価格の上限を設定し、それに応じた補助金を支給していたが、今回の制度では補助金を定額10円(1リットル当たり)で固定する形となった(ただし、1回あたりの変動幅を最大5円程度に抑えながら段階的に移行しており、6/5~11の支給単価は9.4円となっている)。今回の見通しでは、ガソリン補助金は6/12~18に10円となった後、2026年度末まで継続すると想定した。
また、電気・都市ガス代の支援策は2025年3月使用分(CPIヘの反映は4月)でいったん終了したが、7~9月使用分で再開されることとなった。ただし、電気・都市ガス代の支援策は2024年8~10月使用分でも実施されており、値引き額は今回のほうが小さい。このため、支援策によるエネルギー価格の前年比上昇率の押し下げ幅は限定的にとどまるだろう。
2022年に始まった今回の物価上昇は、円安・原油高に伴う輸入物価上昇を起点としたものだったが、円安修正や原油価格の下落などから輸入物価はこのところ大きく低下している。このため、食料以外の財価格の上昇率は徐々に鈍化する可能性が高い。
(2025年06月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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