- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費文化 >
- 「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話)
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話)

生活研究部 研究員 廣瀬 涼
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――May the 4th be with you
StarWars.comによると、「May the 4th(フォースと共にあらんことを)」という言葉遊びが初めて注目されたのは、1979年5月4日、イギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーの就任時で、彼女の率いる保守党は、ロンドン・イブニング・ニュース紙に広告を掲載し、「May the Fourth Be with You, Maggie. Congratulations.」と祝福したそうだ2,3。『エピソード4/新たなる希望』公開の2年後の話だ。日本では2014年に一般社団法人・日本記念日協会によって「スター・ウォーズの日」が正式な記念日として認定されている。
この日は、例年世界各地でさまざまなイベントが開催されている。本国アメリカでは、カリフォルニアのディズニーランドで「Disneyland After Dark: Star Wars Nite」と呼ばれる特別ナイトイベントが開催される4。筆者も例年このAfter Darkパーティに足を運んでおり、その日にしか出会えないキャラクターやフード、パレードやショーなどを楽しんでいる。
日本においては2025年4月26日(土)~5月6日(火)に横浜・みなとみらいエリアで「STAR WARS DAY YOKOHAMA MINATOMIRAI 2025」5が開催され、ランドマークプラザ、MARK IS みなとみらい、グランモール公園、横浜市役所、桜木町駅周辺といったエリア全体で、キャラクターによるグリーティングやフォトスポット、ワークショップなど、様々なイベントが展開される。また、渋谷のSHIBUYA TSUTAYAでは5月4日(日・祝)~5月11日(日)まで「STAR WARS GALAXY in SHIBUYA」6が開催され、特別映像や等身大のキャラクタースタチューなどが大型展示やグッズ販売イベントも行われている。
1 銀河を司るエネルギー「フォース」と光刃を形成する剣「ライトセーバー」を用いて戦う、銀河の平和と自由と正義の守護者
2 Jay Wallis (WFAA) VERIFY: Yes, 'May the 4th Be With You' started from a British political ad, May 4, 2021 , https://www.wfaa.com/article/news/verify/may-the-4th-be-with-you-originated-british-political-ad-margaret-thatcher/287-6ca76316-c2a0-432d-8dde-38a2685881a4
3 Tim Chan, Sage Anderson May the 4th Be With You: The 15 Best Merch, Toys and Collectibles for ‘Star Wars’ Fans, RollingStone, May 4, 2024, https://www.rollingstone.com/product-recommendations/lifestyle/best-star-wars-toys-gifts-collectibles-828847/
4 https://disneyland.disney.go.com/events-tours/disneyland/after-dark-star-wars-nite/
5 https://yokohama-swday.com/
6 https://starwars.disney.co.jp/news/20250410_02
2――10万人以上のファン、幕張に集う
筆者もこのイベントに参加したが、なにより強く感じたのは、海外ファンたちの熱量の高さだった。イベント開催の前々日、事前予約していたチケットを受け取りに会場を訪れた際、すでに最寄り駅の海浜幕張駅は“スター・ウォーズ一色”の空気に包まれていた。イベントがまだ始まっていないにもかかわらず、ファンたちは思い思いのコスチュームやスター・ウォーズを意識した服装に身を包み、自然とその場で語り合い、作品への愛を共有していた。イベント当日も早朝から長蛇の列ができ、来場者たちはそれぞれが目当ての展示やパネル、限定グッズを目指して整然と列を成していた。
筆者が参加した『マンダロリアン&グローグー』パネルでは、ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディCEO、ジョン・ファブロー監督や主演のペドロ・パスカル、映画で新キャラクターを演じるシガーニー・ウィーバーらが登壇。世界的スターを生で見るという体験も、こうしたイベントならではの魅力の一つだ。パネルディスカッションの中で「どこから来たのか」という問いかけが観客に向けられた際、明らかに日本国内よりも海外からの参加者のほうが多い印象を受けた。ルーカスフィルムの発表によると、今回の東京開催ではチケットが過去最速で完売し、来場者数は10万5,000人を突破。2023年にロンドンで開催された前回と比べて8%の増加となったという。来場者の内訳を見ると、55%がアジア太平洋地域から、47%が日本国内、31%がアメリカからの参加者であり、最終的に、125の国と地域からファンが東京に集まり、前回の64か国を大きく上回る国際的な盛り上がりとなった7。スター・ウォーズというコンテンツが、世界中に熱狂的なファンを持つことはよく知られているが、こうした大規模イベントに遠方から駆けつけるファンの行動力には改めて驚かされる。
7 Borys Kit, Abid Rahman, Patrick Brzeski Star Wars Celebration Announces Los Angeles as Next Location as Japan Edition Winds Down, The Hollywood Reporter, April 19, 2025 https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/star-wars-celebration-2027-los-angeles-next-location-1236196152/
3――SWAG
SWAG文化の魅力は、最初から知っている人だけのものではない。SNSで偶然目にしたり、イベント会場でふとSWAGをもらった体験から、その存在を知る人も多い。そして次第に、「今度は自分が誰かに渡す側になりたい」と感じるようになり、受け取る側から“贈る側”へと、自然と立場が移っていく。このあたたかな連鎖こそ、ファン文化の醍醐味だ。この「好き」を分かち合う手段は、ファンダムの中で育まれたカルチャー9ではあるものの、今やそれ自体がイベントの大きな魅力のひとつとなり、なくてはならない文化として確かな存在感を放っている。
ちなみに、4月20日には次回の開催地が発表され、2027年のスター・ウォーズ セレブレーションはロサンゼルスで開催されることが決まった。この年は、映画『エピソード4/新たなる希望』が公開されてから50周年という節目の年にあたる。会場では、SWAGを交換したファン同士が「See you in L.A.!」と声をかけ合う姿があちこちで見られた。普段はSNSでも接点がない、名前も知らない相手かもしれない。けれど、「あのときのセレブレーションにも来てたよね」「今回も来てると思ってたよ」と、言葉を交わせるのが、この場の魔法だ。そんな仲間に再会できる場。それが、ファンイベントの最大の魅力なのだと筆者は感じている10。
自分の「好き」を、全力で楽しみたい。人生をかけてそのコンテンツを追いかけたい。たとえ開催地が地球の反対側であっても、ためらわずに足を運ぶ。それが、オタクの生きざまなのだ。
8 SWAGにStuff We All Getという意味を込めて使用するファンもいる。
9 企業がGiveawayとしてプレゼントや限定グッズを配るという事はもちろんあったため、SWAGそのものを生み出したのはファンではない可能性の方が高いが、オリジナルのグッズを作って配るという行為そのものはファン発祥だろう。
10 特に本国においてはコミコンやD23EXPOを始めとしたスター・ウォーズ関連のファンイベントが頻繁に開催されており、コアなファン同士が顔を合わせることができる機会も多い。
(2025年04月30日「研究員の眼」)

03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
廣瀬 涼のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/30 | 「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) | 廣瀬 涼 | 研究員の眼 |
2025/04/25 | 「ほめ曜日」×ご褒美消費-消費の交差点(9) | 廣瀬 涼 | 基礎研レター |
2025/04/22 | 小学生から圧倒的人気【推しの子】-今日もまたエンタメの話でも。(第4話) | 廣瀬 涼 | 基礎研レター |
2025/04/15 | 完全没入型テーマパーク“Universal Epic Universe” いよいよ5月22日オープン-今日もまたエンタメの話を。(第3話) | 廣瀬 涼 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話)のレポート Topへ