2025年04月18日

消費者物価(全国25年3月)-コアCPI上昇率は25年度入り後も3%台が続く公算

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は4ヵ月連続の3%台

消費者物価指数の推移 総務省が4月18日に公表した消費者物価指数によると、25年3月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.2%(2月:同3.0%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:3.2%、当社予想も3.2%)通りの結果であった。

電気・都市ガス代の支援策により2月に続きエネルギー価格の上昇率は抑えられたが、食料(生鮮食品を除く)の伸びが一段と加速したことがコアCPIを押し下げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.9%(2月:同2.6%)、総合は前年比3.6%(2月:同3.7%)となった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(2月:前年比5.8%→3月:同6.0%)の上昇率は若干拡大したが、灯油(2月:前年比9.3%→3月:同8.8%)、電気代(2月:前年比9.0%→3月:同8.7%)、ガス代(2月:前年比3.4%→3月:同2.4%)の上昇率が鈍化したため、エネルギー価格の上昇率は前年比6.6%と2月の同6.9%から若干縮小した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比6.2%(2月:同5.6%)と上昇率が前月から0.6ポイント拡大した。食料(生鮮食品を除く)は24年7月の前年比2.6%を底に8ヵ月連続で上昇率が高まった。米類が前月からさらに伸びを高めた(2月:同80.9%→3月:同92.1%)ことに加え、それ以外の品目でも値上げの動きが継続している。

内訳をみると、米類のほかに、チョコレート(同29.6%)、調理パスタ(同11.3%)、コーヒー豆(同21.1%)、果実ジュース(同15.7%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、カップ麺(同▲2.5%)、調理カレー(同▲0.9%)など下落する品目も見られる。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比1.4%(2月:同1.3%)と上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。外国パック旅行費が前年比▲3.9%(2月:同▲2.8%)と2ヵ月連続で下落したが、外食(2月:前年比3.2%→3月:同3.6%)、宿泊料(2月:前年比5.2%→3月:同6.6%)、クリーニング代B(2月:前年比4.8%→3月:同5.9%)の上昇率が高まった。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.53%(2月:0.55%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.39%(2月:1.26%)、その他財が0.61%(2月:0.57%)、サービスが0.68%(2月:0.63%)であった。

2.物価上昇品目数が4ヵ月連続で増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、3月の上昇品目数は414品目(2月は405品目)、下落品目数73品目(2月は77品目)となり、上昇品目数が4ヵ月連続で前月から増加した。上昇品目数の割合は79.3%(2月は77.6%)、下落品目数の割合は14.0%(2月は14.8%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は65.3%(2月は62.8%)であった。

3.コアCPI上昇率は25年度入り後も3%台が続く公算

コアCPI上昇率は4ヵ月連続で3%台となった。食料(生鮮食品を除く)は23年8月の前年比9.2%をピークに24年7月には同2.6%まで鈍化したが、その後は輸入物価の再上昇に米価格の高騰が加わったことから再び上昇率が高まり、25年3月は同6.2%となった。
食料品の輸入物価、国内企業物価、消費者物価 川上段階(輸入物価、国内企業物価)の食料品価格の上昇率は23年夏頃に比べれば低水準にとどまっているが、企業の値上げに対する抵抗感が薄れていることもあり、価格転嫁率が高まっている。消費者物価の食料の上昇率はさらに高まることが見込まれる。

また、電気・都市ガス代の支援策は25年3月使用分(CPIヘの反映は4月)で終了(3月は値引き額が縮小)することから、エネルギー価格の上昇率はしばらく高止まりする。

コアCPI上昇率は、25年度入りには高校授業料の無償化によって押し下げられるものの、当面3%台で推移する公算が大きい。現時点では、コアCPI上昇率が2%台に低下するのは7月以降と予想している。

なお、米国の関税引き上げに伴う先行き不透明感の高まりを受けて、政府は電気・ガスの支援策再開を検討している。補助金の規模にもよるが、支援策は24年も実施されているため、前年比上昇率の押し下げ幅は限定的にとどまるだろう。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年04月18日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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