2025年04月01日

雇用関連統計25年2月-失業率は低下したが、有効求人倍率、新規求人倍率が悪化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率が5ヵ月ぶりに低下

完全失業率と就業者の推移 総務省が4月1日に公表した労働力調査によると、25年2月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.4%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から15万人の減少となる中、就業者が前月から11万人減少し、失業者は前月から6万人減少の168万人(いずれも季節調整値)となった。失業率は5ヵ月ぶりに低下したが、労働市場からの退出が失業者の減少をもたらしており、良い内容とはいえない。
就業者数は前年差40万人増(1月:同65万人増)と31ヵ月連続で増加した。男女別には、男性が前年差2万人減と4ヵ月ぶりに減少したが、女性が前年差42万人増と36ヵ月連続で増加した。

産業別には、製造業が前年差12万人減(1月:同14万人減)と5ヵ月連続で減少、卸売・小売業が同16万人減(1月:同10万人増)と2ヵ月ぶりに減少したが、宿泊・飲食サービス業が同21万人増(1月:同22万人増)、生活関連サービス・娯楽業が同8万人増(1月:同11万人増)、医療・福祉が同23万人増(1月:同32万人増)と増加した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ40万人増(1月:同73万人増)と36ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差27万人増(1月:27万人増)と16ヵ連続で増加、非正規の職員・従業員数が前年差13万人増(1月:同46万人増)と2ヵ月連続で増加した。

2.有効求人倍率、新規求人倍率ともに低下

有効求人倍率の推移 厚生労働省が4月1日に公表した一般職業紹介状況によると、25年2月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.24倍(QUICK集計・事前予想:1.26倍、当社予想も1.26倍)となった。有効求人数が前月比▲1.7%の減少となり、有効求職者数の減少幅(同▲0.5%)を上回ったことが求人倍率の低下につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.02ポイント低下の2.30倍となった。新規求人数が前月比▲4.1%の減少となり、新規求職申込件数の減少幅(同▲3.4%)を上回った。
産業別新規求人数 新規求人数(原数値)は前年比▲5.9%(1月:同▲0.4%)と4ヵ月連続で減少し、減少幅が拡大した。産業別には、情報通信業(1月:前年比1.6%→2月:同▲4.3%)が3ヵ月ぶりに減少したほか、建設業(1月:前年比▲0.9%→2月:同▲9.1%)、製造業(1月:前年比▲2.1%→2月:同▲6.5%)、宿泊・飲食サービス業(1月:前年比▲0.4%→2月:同▲17.6%)、生活関連サービス・娯楽業(1月:前年比▲5.0%→2月:同▲10.5%)の減少幅が前月から拡大した。

25年2月の失業率は5ヵ月ぶりに低下したが、非労働力化の進展が失業者の減少をもたらしており、良い内容とはいえない。また、企業の人手不足感が強い状態が続いているにもかかわらず求人数が減少している背景には、企業の求人がハローワークから他のチャネルにシフトしていることがあることは確かだが、求人数の減少ペースが拡大していることは気になるところだ。米国の関税引き上げなどから景気の先行き不透明感が高まっており、労働市場にも悪影響が及ぶことが懸念される。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年04月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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