2025年03月19日

貿易統計25年2月-関税引き上げ前の駆け込みもあり、貿易収支(季節調整値)が黒字に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易収支(季節調整値)は2ヵ月ぶりの黒字

財務省が3月19日に公表した貿易統計によると、25年2月の貿易収支は5,845億円の黒字となったが、黒字幅は事前の市場予想(QUICK集計:7,397億円、当社予想は9,350億円)を下回った。輸出が前年比11.4%(1月:同7.3%)と前月から伸びを高める一方、輸入が前年比▲0.7%(1月:同16.5%)と3ヵ月ぶりに減少したため、貿易収支は前年に比べ9,999億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比2.9%(1月:同▲1.7%)、輸出価格が前年比8.3%(1月:同9.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲3.9%(1月:同8.5%)、輸入価格が前年比3.3%(1月:同7.1%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は1,823億円と2ヵ月ぶりの黒字となった(1月は▲6,013億円の赤字)。輸出が前月比4.0%の高い伸びとなる一方、輸入が同▲4.1%の減少となった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 25年2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=80.5ドル(当研究所による試算値)と、1月の76.7ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台前半で推移しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、3月に80ドル程度となった後、4月には70ドル台まで低下することが見込まれる。

2.関税引き上げ前の駆け込みで米国向け自動車輸出が増加

25年2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲3.3%(1月:同▲3.5%)、EU向けが前年比▲9.9%(1月:同▲18.2%)、アジア向けが前年比6.5%(1月:同▲1.7%)、うち中国向けが前年比5.0%(1月:同▲15.2%)となった。

25年2月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比4.6%(1月:同▲3.2%)、EU向けが前月比9.5%(1月:同▲17.0%)、アジア向けが前月比3.5%(1月:同▲3.2%)、うち中国向けが前月比17.6%(1月:同▲7.4%)、全体では前月比5.5%(1月:同▲6.5%)となった。

輸出数量指数は1月が弱く、2月が強いが、このうちアジア、中国向けについては、中華圏の春節の時期が昨年とずれている(24年は2月中旬、25年は1月下旬)ことにより、1月が押し下げ、2月が押し上げられているためである(当研究所の季節調整値は春節の影響が除去しきれていない)。25年1、2月の平均を24年10-12月期と比較すると、アジア向けは+0.6%、中国向けは▲0.3%であり、均してみれば横ばい圏の動きとなっている。

また、米国向け輸出の25年1、2月平均は24年10-12月期を2.3%上回っているが、これは自動車輸出(金額ベース)が1月の前年比21.8%に続き、2月も同13.9%と高めの伸びとなったことが寄与している。関税引き上げに備えた駆け込みが生じていると考えられる。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/地域別自動車輸出
輸出は全体としては横ばい圏で推移しているが、関税引き上げ前の駆け込み輸出が含まれている可能性が高いことには留意が必要だ。先行きについては、米国の関税引き上げによって大きく落ち込むことが懸念される。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年03月19日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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