2025年03月04日

法人企業統計24年10-12月期-経常利益(季節調整値)は過去最高を更新したが、設備投資は低調

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.経常利益は2四半期ぶりの増益

経常利益の推移 財務省が3月4日に公表した法人企業統計によると、24年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比13.5%(7-9月期:同▲3.3%)と2四半期ぶりの増益となった。非製造業が前年比6.4%(7-9月期:同4.6%)と16四半期連続の増益となったことに加え、製造業が前年比26.7%(7-9月期:同▲15.1%)と2四半期ぶりの増益となった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)
製造業は、売上高の伸びが24年7-9月期の前年比2.8%から同2.2%へ鈍化したが、売上高経常利益率が23年10-12月期の7.5%から9.3%へ大きく改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因は4四半期連続のマイナスとなったが、変動費要因が前年差1.7ポイントの大幅プラスとなった。原油価格の下落などから変動費が前年比▲0.0%と売上高の伸びを大きく下回ったことが利益率を押し上げた。

非製造業は、売上高の伸びが24年7-9期の前年比2.5%から同2.7%に高まったことに加え、売上高経常利益率が23年10-12月期の6.1%から6.3%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。変動費要因はマイナスとなったが、人件費が前年比0.1%(7-9月期:同4.2%)の低い伸びとなったことから、人件費要因がプラスとなった。

2.経常利益(季節調整値)は過去最高を更新

経常利益を業種別に見ると、製造業は、輸送用機械(前年比▲2.0%)が2四半期連続、金属製品(同▲15.0%)が3四半期連続の減益となったが、情報通信機械(前年比163.7%)、電気機械(同88.5%)、食料品(同73.8%)、生産用機械(同61.4%)が大幅増益となり全体を押し上げた。

非製造業は、物品賃貸業(前年比▲14.6%)、情報通信業(同▲27.7%)が前年比二桁の減益となったが、建設業(同23.7%)、不動産業(同26.9%)、運輸・郵便業(同34.4%)、電気業(同24.4%)が高い伸びとなり、全体として増益を確保した。

季節調整済の経常利益は前期比12.1%(7-9月期:同▲10.2%)と2四半期ぶりに増加した。製造業が前期比36.8%(7-9月期:同▲17.7%)、非製造業が前期比0.3%(7-9月期:同▲6.1%)といずれも2四半ぶりに増加した。
経常利益(季節調整値)の推移 経常利益(季節調整値)は30.1兆円(7-9月期:26.8兆円)となり、過去最高水準を更新した。製造業が11.9兆円となり、それまでのピーク(24年4-6月期の10.6兆円)を上回った。

円安にもかかわらず輸出数量は伸び悩んでいるが、輸出金額の拡大が製造業の売上、収益の拡大をもたらしている。また、円安は非製造業には輸入物価上昇によるコスト増を通じて収益の圧迫要因となるが、販売価格への転嫁が十分に行われているため、売上、収益の拡大傾向が維持されている。

3.設備投資は低調

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比▲0.2%(7-9月期:同8.1%)と15四半期ぶりに減少した。製造業は前年比0.8%(7-9月期:同9.2%)と増加を維持したが。非製造業が前年比▲0.8%(7-9月期:同7.4%)と10四半期ぶりに減少した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比0.6%(7-9月期:同2.0%)と3四半期連続で増加した。製造業が前期比0.7%(7-9月期:同5.0%)と2四半期連続、非製造業が前期比0.5%(7-9月期:同0.4%)と3四半期連続で増加した。

企業収益の好調を受けた潤沢なキャッシュフローを背景に企業の設備投資意欲は強いが、人手不足や建設資材高が設備投資の抑制要因になっていると考えられる。

4.10-12月期・GDP2次速報は下方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、3/11公表予定の24年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.5%)となり、1次速報の前期比0.7%(前期比年率2.8%)から下方修正されると予想する。

設備投資は1次速報の前期比0.5%から同0.1%に下方修正されるだろう。
2024年10-12月期GDP2次速報の予測 設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比3.1%(7-9月期:同9.5%)と15四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比4%程度となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比▲5.6%(7-9月期:同2.9%)と5四半期ぶりの減少となった。

1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比4.8%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され、1次速報の前期比・寄与度▲0.2%から変わらないだろう。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年03月04日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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