2025年02月28日

鉱工業生産25年1月-電子部品・デバイスは在庫調整局面へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1月の生産は3ヵ月連続で低下

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が2月28日に公表した鉱工業指数によると、25年1月の鉱工業生産指数は前月比▲1.1%(12月:同▲0.2%)と3ヵ月連続で低下し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.2%、当社予想は同▲0.7%)通りの結果となった。出荷指数は前月比▲1.5%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.9%と4ヵ月ぶりの上昇となった。

1月の生産を業種別に見ると、自動車は前月比6.9%と3ヵ月ぶりに上昇したが、半導体製造装置等の生産用機械が同▲12.3%と急速に落ち込んだほか、在庫調整局面に入りつつある電子部品・デバイスが同▲5.4%と大きく落ち込んだ。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は24年10-12月期の前期比7.5%の後、25年1月は前月比▲11.0%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は24年10-12月期の前期比1.8%の後、25年1月は前月比0.1%となった。

GDP統計の設備投資は24年7-9月期の前期比▲0.1%の後、10-12月期は同0.5%と2四半期ぶりに増加した。GDP統計の設備投資は一進一退となっているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は24年10-12月期の前期比1.9%の後、25年1月は前月比1.9%となった。耐久消費財が前月比5.6%(10-12月期:前期比2.6%)、非耐久消費財が前月比2.6%(10-12月期:前期比0.8%)となった。

GDP統計の民間消費は、24年4-6月期、7-9月期に前期比0.7%と高めの伸びとなった後、10-12月期は同0.1%と低い伸びにとどまった。物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果一巡が消費の伸びを抑えた。25年1月の消費財出荷指数は堅調だったが、その他の消費関連指標はそれほど強くない。25年1月の消費者物価(総合)は米や生鮮食品の高騰もあり前年比4.0%と2年ぶりの4%台となった。冬のボーナスが大幅増加となったことは好材料だが、物価の上昇ペース加速が消費の抑制につながっている。消費の持ち直しは当分緩やかにとどまる可能性が高い。

2.電子部品・デバイスは在庫調整局面入り

製造工業生産予測指数は、25年2月が前月比5.0%、3月が同▲2.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(1月)、予測修正率(2月)はそれぞれ▲3.1%、0.5%であった。

予測指数を業種別にみると、1月に大きく落ち込んだ生産用機械、電子部品・デバイスは2月はそれぞれ前月比14.0%、同9.7%の大幅増産計画となっている。しかし、1月の実現率がそれぞれ▲6.8%、▲12.8%の大幅マイナスとなっていることを踏まえれば、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。また、1月に前月比9.1%の高い伸びとなった輸送機械は2月が前月比0.4%、3月が同▲4.1%と弱めの計画となっている。

25年2月の電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は5.6%(12月:12.5%)と17ヵ月連続のプラスとなったが、プラス幅は7月の41.7%をピークに6ヵ月連続で縮小した。1月は出荷が前年比▲1.8%(12月:同▲1.4%)とマイナス幅が拡大する一方、在庫が前年比▲7.3%(12月:▲13.8%)とマイナス幅が縮小した。電子部品・デバイスは在庫調整局面入りしている可能性が高い。
最近の実現率、予測修正率の推移/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
25年1月の生産指数を2、3月の予測指数で先延ばしすると、25年1-3月期の生産は前期比0.6%となるが、実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があることを考慮すると、1-3月期は2四半期ぶりの減産となる可能性もある。

鉱工業生産は増産と減産を繰り返しており、22年以降は2四半期続けて増産となったことがない。生産の牽引役となっていた電子部品・デバイスが調整局面に入る中、輸出の低迷が続く可能性が高いことから、鉱工業生産は当面、一進一退の動きが続くことが予想される。

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(2025年02月28日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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