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- 人口減少、高齢化は経済成長をどれだけ抑制してきたのか
2025年02月28日
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■要旨
消費者物価上昇率が3年連続で2%を上回るなど、日本経済は長年続いたデフレからは脱却したが、経済成長率は低迷が続いている。経済成長率停滞の要因として人口減少の影響が挙げられることが多いが、日本の実質GDP成長率の長期低迷に大きく寄与しているのは、一人当たりGDP成長率の低下であり、人口減少の影響は限定的である。
人口減少と同時に高齢化が進展していることも経済成長率低迷の理由とされることがある。一人当たりGDPの伸び率低下は、供給面からは労働生産性上昇率の低下によって説明できるが、そのほとんどが年齢階級別の労働生産性上昇率の低下によってもたらされており、年齢構成の変化(高齢化)による影響は小さい。
高齢化の影響を需要面からみると、実質消費支出の伸びは長期にわたり鈍化傾向が続いているが、その主因は、各年齢階級の消費支出が低迷していることであり、高齢化による世帯主の年齢構成変化の影響は小さい。
経済成長率の長期低迷の主因となっている一人当たりGDP成長率の低下は、人口減少とは基本的に無関係である。また、健康寿命の延伸や様々な政策・制度変更によって、高齢者の属性が時代とともに変化していることもあり、少なくとも現在までは高齢化の影響は限定的である。日本経済が長期停滞から抜け出すためには、人口減少や高齢化を巡る過度な悲観を払拭することも必要と考えられる。
■目次
1――はじめに
2――人口動態と経済成長の関係
3――高齢化と経済成長~供給面からのアプローチ~
4――高齢化と経済成長~需要面からのアプロ―チ~
5――まとめ
消費者物価上昇率が3年連続で2%を上回るなど、日本経済は長年続いたデフレからは脱却したが、経済成長率は低迷が続いている。経済成長率停滞の要因として人口減少の影響が挙げられることが多いが、日本の実質GDP成長率の長期低迷に大きく寄与しているのは、一人当たりGDP成長率の低下であり、人口減少の影響は限定的である。
人口減少と同時に高齢化が進展していることも経済成長率低迷の理由とされることがある。一人当たりGDPの伸び率低下は、供給面からは労働生産性上昇率の低下によって説明できるが、そのほとんどが年齢階級別の労働生産性上昇率の低下によってもたらされており、年齢構成の変化(高齢化)による影響は小さい。
高齢化の影響を需要面からみると、実質消費支出の伸びは長期にわたり鈍化傾向が続いているが、その主因は、各年齢階級の消費支出が低迷していることであり、高齢化による世帯主の年齢構成変化の影響は小さい。
経済成長率の長期低迷の主因となっている一人当たりGDP成長率の低下は、人口減少とは基本的に無関係である。また、健康寿命の延伸や様々な政策・制度変更によって、高齢者の属性が時代とともに変化していることもあり、少なくとも現在までは高齢化の影響は限定的である。日本経済が長期停滞から抜け出すためには、人口減少や高齢化を巡る過度な悲観を払拭することも必要と考えられる。
■目次
1――はじめに
2――人口動態と経済成長の関係
3――高齢化と経済成長~供給面からのアプローチ~
4――高齢化と経済成長~需要面からのアプロ―チ~
5――まとめ
(2025年02月28日「基礎研レポート」)

03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/03/21 | 消費者物価(全国25年2月)-コアCPI上昇率は当面3%前後で推移する見通し | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/03/19 | 貿易統計25年2月-関税引き上げ前の駆け込みもあり、貿易収支(季節調整値)が黒字に | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/03/11 | 2024~2026年度経済見通し-24年10-12月期GDP2次速報後改定 | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/07 | 可処分所得を下押しする家計負担の増加-インフレ下で求められるブラケットクリープへの対応 | 斎藤 太郎 | 基礎研マンスリー |
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