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- 高水準の賃上げをもたらしたのは人手不足か、物価高か
2025年04月11日
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■要旨
- 2025年の春闘賃上げ率が2年連続で5%台の高水準となることがほぼ確実となった背景には、賃上げ率を左右する労働需給、企業収益、物価の3要素がいずれも大きく改善していることがある。
- 特に強調されることが多いのは、人手不足に伴う賃金上昇圧力の高さだが、アベノミクス景気の時期も現在と同様に労働需給がひっ迫していたにもかかわらず賃上げが本格化することはなかった。この数年で大きく変化したのは物価上昇率であり、本格的な賃上げの決め手となったのは物価高と考えられる。
- 通常、人手不足の時には労働生産性が上昇するが、最近は人手不足感が非常に強いにもかかわらず多くの業種で労働生産性が低迷しており、人手不足感と実態的な人手不足が乖離している可能性がある。
- 労働需給、企業収益、物価が賃金上昇率に及ぼす影響を多変量自己回帰(VAR)モデルで推計したところ、賃金上昇率への影響が最も大きいのは物価で、企業収益、労働需給がそれに続く形となった。
- 米国が発動した相互関税によって景気の先行き不透明感が増している。景気悪化に伴う物価上昇率の低下は名目賃金の伸び率鈍化に直結するが、より重要なのは実質賃金の伸び率である。2026年の春闘賃上げ率が前年を下回ることは避けられそうもないが、物価上昇率を上回るベースアップが確保できるかが注目される。
(2025年04月11日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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