コラム
2025年04月08日

投資部門別売買動向(25年3月)~海外投資家・個人ともに売り越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2025年3月の日経平均株価は、米国の追加関税発効を受けて月初は軟調に始まり、前月末の3万7,155円から下落した。ただし、5日夜にメキシコ・カナダ向けの猶予措置が示されたことで警戒感が一時後退し、6日の日経平均株価は3万7,704円まで反発した。その後は、米ハイテク株安や日銀の追加利上げ観測、円高進行が重荷となり、相場はもみ合いが続いた。中旬以降は米株高や円安傾向も追い風となって指数は上昇し、26日には月間高値(終値)となる3万8,027円をつけた。しかし同日夜にトランプ米大統領が自動車関税の発動を表明したことを受けて、世界景気の減速懸念が再燃。景気敏感株を中心に売りが広がり、日経平均株価は月末の31日に1,500円超下落して3万5,617円で24年度の取引を終えた。投資部門別では、信託銀行、事業法人が買い越す一方で、海外投資家、個人が売り越した(図表1)。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2025年3月(3月3日~28日)の投資部門別の売買動向をみると、信託銀行が現物と先物の合計で8,154億円の買い越しと、3月最大の買い越し部門であった。週単位で見ると、第1週(3月3日~7日)と第4週(3月24日~28日)にそれぞれ5,247億円、5,025億円と大幅に買い越した。例年、年度末には配当金再投資に伴う買い需要が高まる傾向があり、今年度も買いが優勢となった(図表2)。
図表2 信託銀行は買い越し
3月は事業法人も現物と先物の合計で3,221億円の買い越しと、46カ月連続で買い越した。第1週(3月3日~7日)には2,034億円買い越し、その後も第2週・第3週(3月10日~21日)にかけて買い越しが継続したものの、いずれも金額は1,000億円未満にとどまり小幅な動きとなった。一方、年度末が近づいた第4週(3月24日~28日)は75億円の小幅な売り越しに転じており、例年通り、期末の自社株買いは控える傾向が示された(図表3)。
図表3 事業法人は46カ月連続買い越し
一方、海外投資家は現物と先物の合計で1兆5,448億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。週単位で見ると、第1週(3月3日~7日)および第2週(3月10日~14日)はそれぞれ4,139億円、5,467億円の売り越しと続き、米国の関税政策や景気減速懸念を背景にリスク回避の動きが強まった。第3週(3月17日~21日)は一転して6,981億円の買い越しとなったが、26日夜のトランプ米大統領の自動車関税発動の表明を受けてリスクオフムードが再燃し、第4週(3月24日~28日)は1兆2,822億円の大規模な売り越しに転じた。相場の反発局面で短期的な買いも見られたが、全体としては特に月末にかけて強い売り圧力が相場を下押しした(図表4)。
図表4 海外投資家は大幅売り越し
また、3月は個人も現物と先物の合計で6,082億円の売り越しとなった。第1週から第3週(3月3日~21日)にかけては、いずれも売り越しが続き、特に第3週(3月17日~21日)には4,982億円売り越した。一方、第4週(3月24日~28日)は5,880億円の買い越しに転じており、月末にかけての急落局面では押し目買いが入ったようだ(図表5)。
図表5 個人も売り越し

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(2025年04月08日「研究員の眼」)

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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