2025年03月27日

「早食いは太る」は本当か~食べる速さは、肥満リスクをどの程度予測できるか

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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3|どういう人が「早食い」なのか
では、どういう人が「食べるのが速い」と回答しているのか、2つ目のデータセットを使って、性、年齢群別に回答をみた。男性は、ほとんどが「本人」だったため、本人と家族の合計を示すが、女性は、本人と家族を分けて示す(図表5)。「本人」は、就労していて自分が本人として健康保険に加入している人で、「家族」は家族の被扶養家族として加入していることから、社会保険の対象となるような働き方はしていない人である。なお、「本人」は、職場でほぼ全員が健康診断を受けるのに対し、「家族」は健康診断を受けていない人も多い。さらに、結果を家族の職場に届け出ている人は一部であると考えられることから、ここでは傾向だけをみる。
図表5 食べる速さ(性、年齢、女性は本人・家族別)
男性と女性の本人と家族に共通する特徴としては、それぞれ~29歳で「遅い」が最も高いことと、30歳以降、高年齢になるにしたがって「ふつう」が高くなることだった。

男性では「速い」の割合が全体と比べて高いのは30~44歳、「遅い」の割合が高いのは29歳以下と60~74歳だった。職場でも家庭でも忙しい頃に速い傾向がありそうだ。この年代は、生活習慣病のリスクが高い年代でもある。

女性は本人では45~59歳、家族では30~44歳で「速い」の割合が高かったが、男性ほど年齢による差はなかった。女性の本人と家族に共通する特徴としては、「遅い」が高年齢になるにしたがって徐々に低下することだった。また、本人と家族を比べると、どの年代においても「本人」で「速い」の割合が高い。「家族」として加入している人では「速い」が低く、「ふつう」が高かった。

図表5の女性における本人と家族のちがいから、「人と比較して食べる速度が速いか」という質問は、場合によっては曖昧さを含む可能性が考えられる。「家族」として加入している人では食べる速さを意識する機会が少なく「ふつう」と回答しがちであることや、「本人」として加入している人では同僚と食事をとる機会が多いと考えられ、同僚と比べて「速い」「遅い」といった速さを意識しやすい等の背景が推測できる。

4――「食べる速さ」は、肥満リスクを予測する可能性

4――「食べる速さ」は、肥満リスクを予測する可能性

以上のとおり、「人と比較して食べる速度が速いか」といった質問は、誰と比較するか、また食べる速さを意識する機会があるかどうかで回答が異なる可能性が考えられた。しかし、そういった回答の曖昧さがあっても、なお、食べる速さが「速い」と回答した年はもちろん、その4年後の肥満と関連があった。さらに、1年目にBMIが普通体重で服薬等がない人であっても、食べるのが速い人では、4年後には肥満になっている割合が高かった。

食べる速さが「速い」人は、男性では30代以上で多く、60代以上では少なくなっており、働き盛りの年代に多いことが示唆された。女性も働いている人の方が、働いている人の家族として加入している人よりも速い人が多いことから、職場で、決められた時間に同僚と食事をとることで、自分のペースで食事がしにくいのかもしれない。家族として加入している女性では、結婚や出産等のライフイベントが重なると考えられる30~44歳で「速い」が高く、やはり自分のペースで食事がしにくい可能性が考えられた。

現在は、40歳以上を生活習慣病リスクが高まる年代として特定健診の対象としており、研究事例が多いが、今回の結果からは30歳代でも「速い」人は、生活習慣病になるリスクが高い可能性があった。したがって、生活習慣の見直しは、40歳以上に限らず、若い年代でも見直すきっかけを作ることが重要だろう。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年03月27日「基礎研レポート」)

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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

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【「早食いは太る」は本当か~食べる速さは、肥満リスクをどの程度予測できるか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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