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2025年03月07日
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(リスク評価)
(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 成長率に対するリスクは引き続き下方に傾いている
- 貿易の緊張が深刻化すれば、輸出の低迷や世界経済の弱体化によってユーロ圏の成長が下押しされるだろう
- 世界的に貿易政策に関する不確実性が継続していることが投資を減少させる可能性がある
- ロシアの正当化されないウクライナとの戦争や、中東での悲劇的な紛争のような地政学的な緊張は引き続き主要な不確実性となっている
- 金融政策引き締めの効果がラグをもって予想以上に長く続けば成長率が低下する可能性がある
- 同時に、資金調達環境の緩和やインフレ率の低下が域内の消費や投資回復を加速させれば、成長率が高まる可能性がある
- 防衛やインフラへの支出増加もまた成長を押し上げる可能性がある
- 世界的な貿易摩擦の増加がユーロ圏のインフレ見通しにさらなる不確実性をもたらしている
- 全般的に貿易の緊張が深刻化すれば、ユーロの減価と輸入コストの上昇をもたらし、インフレ率の押し上げ圧力になる可能性がある
- 同時に関税が高くなった結果、ユーロ圏の輸出への需要が低下し、また他の国々で過剰に生産されたモノがユーロ圏への輸出に振り向けられれば、インフレへの下押し圧力が生じるだろう
- 地政学的緊張はエネルギー市場、消費者景況感、設備投資に関連し、両面のインフレリスクをもたらす
- 異常気象や気候変動危機の展開が、食料品価格を予想以上に上昇させる可能性もある
- インフレ率は賃金や利益が予想以上に上昇すれば、上振れする可能性がある
- 防衛とインフラへの支出が増加することで、総需要を押し上げインフレが上昇する可能性がある
- しかし、金融政策が予想以上に需要を低下させれば、インフレ率は下方のサプライズとなるかもしれない
(金融・通貨環境)
- ユーロ圏の市場金利は1月会合以降に低下していたが、ここ数日は財政政策見通しが修正されたことを受けて上昇している
- 我々の利下げは企業や家計の借入コストを段階的に低下させており、貸出伸び率は上昇している
- 同時に過去の金利引き上げが依然として信用残高に波及していることが金融調達環境の緩和に対する逆風となっており、総じて貸出は抑制されている
- 企業向けの新規貸出平均金利は12月の4.4%から4.2%に低下した
- 対照的に市場ベースでの企業の負債発行費用は3.7%と12月の水準より0.2%ポイント上昇した
- 同期間で、家計の新規住宅ローン金利は3.4%から3.3%に低下した
- 銀行の企業への貸出伸び率は、毎月の新規貸出量が緩やかなもと、12月の1.7%から1月には2.0%に上昇した
- 企業による負債性証券発行は前年比3.4%に上昇した
- 住宅ローン貸出は引き続き緩やかに上昇しているが、全体としては低調で前年比1.3%となった
(結論)
- (声明文冒頭に記載の決定に再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 今後について。金融政策が実質的に制限的ではなくなりつつあると述べている。これは、利下げのペースを落とす、もしかしたら4月に一時停止するかもしれないという意味か。このようなシナリオについて本日の会合で議論したか
- これは軽微な変更ではなく、一定の意味を持つ変更である
- 我々は静的な評価から、より進化的なアプローチに移行している
- 利下げを始めてから1.5%ポイントという旅程を考慮し、その結果、実質的に制限的ではなくなりつつあるという事実を認めている
- 財政政策に関連して。防衛支出拡大、ドイツではインフラについてもかなり思い切った転換が行われようとしている。市場の大きな反応も見られる。理事会は経済や金融政策にこれがどのような変化をもたらすと見ているか
- 2つの見解があり、ひとつはこれが進展中であり、注意深くならなければならない
- どのように機能し、タイミング、資金調達について理解することで、成長やインフレ率への採取的な影響度合いの結論や評価を引き出すことができる
- 結論を下すことはできないが、理事会では欧州の成長を支え、経済を押し上げるだろう点は明らかになった
- 実質的に制限的ではない金融政策姿勢について。貸出は依然として減少している。企業は借入や投資を控えているように見えるが、何がECBの金融政策姿勢を制限的でないようにしているのか
- 銀行貸出調査をもとにした評価では、ここ数四半期と現状を比較すると前月対比で貸出は増えている
- 借入は力強く、強固で、堅調な水準ではないが、確実に増加している
- 4月にあるかもしれない一時停止について。不確実性を考慮すると、域内インフレが頑固に高いと見られるなかでは、さらなる賃金データを入手できるまで待つべきなのか
- 我々は事前に金利経路を確約しない
- 過去の金融政策の声明文でも見られた文だが、不確実性の水準に鑑みて、より一層妥当なものとなっている
- 理事会全体の総意として、事前の経路を確約しないし、おそらくより一層データに依存することになるだろう
- 過去に向かう先は明確で、ペースやタイミングのみが問題だと述べた。過去にはインフレ率が今年にかけて目標に到達するとの言及もあったが、今はなくなった。本日も繰り返されなかった。本日の利下げの背景にはどの程度の総意があったのか
- 決定は全会一致(consensus)であり、反対意見はなかった
- ただし、1名ホルツマン総裁は棄権した
- ロシアの資産に関して。欧州ではそれらの資産を差し押さえるという政治的要求が高まっていると思われる。これは法的な前例となるだろう。その場合、準備通貨としてのユーロの地位への影響はどうなると考えるか
- ECBが議論することではないが、どのような決定が下さるにしても国際法の根拠が他の投資家にとって重要だと確信している
- 旅のスピードに疑問はあるが、方向性は明確だという以前の主張について。今日の視点から見ても方向性は明確なのか、一方向しかないのか
- 我々はデータに機敏に反応しなければならない
- データが適切な金融政策が利下げと示すなら、利下げをする
- データが適切な金融政策は利下げではないと示すなら、一時停止する
- 最近の市場の反応について。借入コストは財政のニュースに反応して上昇した。ユーロ圏の政府債務の緊張が再燃する懸念はあるか
- 我々はここ24時間の市場動向で政策姿勢を変更するつもりはない
- 利回りには大きな変化があったが、スプレッドの変化は非常に限られていた
- これは伝達効果の堅牢性と欧州国際の堅牢性に関するひとつの回答だと考える
- さきほどの質問に関して。説明を端的に言えば、あなたの回答は旅の方向性はもはや明らかでないということか
- 先ほどかなり手の込んだ回答をしたのは、状況が白黒つけがたく単純ではないからである
- 我々は今まで以上にデータに依存し、会合毎に決定していく
- 2%目標の到達時期に注意を払っている方のために補足すると、スタッフ見通しでは25年の終わりではなく、26年初となっている
- これはエネルギー価格が影響している
- インフラと防衛支出の潜在的な増加が成長率とインフレ率の押し上げになると指摘したことについて。理事会では、今後、どちらの方が潜在的により影響するとの議論があったか。政府が計画しているこれまでに分かっていることを踏まえて、あなたの見解はどうか
- 我々のスタッフは素晴らしい仕事をし、機敏でもあるが、これらの発表はここ24時間で行われたもので、欧州のGDP成長率への寄与や、インフレ率への影響を特定できる状況にはない
- 我々はもしすべてが機能すれば成長を押し上げるだろうと信じているが、大きなもしであり、決定され、議会を通過し、実行される必要があり、正直なところまだこれからであり、今後数日から数週間は注意を払い、それから経済に与える影響や、それがどのように分配されるかを予測する必要がある
- あなたは過去に金融政策と財政政策は種々の支出に連携して機能すべきだと述べた。この投資には緩和的な金融政策を携えるべきか
- 我々は、厳格に物価の安定という責務を守るつもりである
- もし、質問の趣旨が、我々が資金調達の取り組みに参加するかどうかということであれば、それはECBの目的ではない
- 不確実性とリスク、特に地政学的なものについて。メルツ氏が数日前に述べたように「なんでも(whatever it takes)」する状況にあると考えているか
- 私が言うことではない。その表現が適切であるかは政治指導者の判断による
- 量的引き締めについて。ECBはかなり前からQTを実施しており、あなたの比喩を使えば、冷や水を注いでいる。TLTROの返済が止まり、APPとPEPPの保有も止まった。QTは利下げサイクルの間も続き、市場がタイト化し、長期金利が急上昇している現在も行われている。理事会はQTの金融政策および実質的に制限的でないという状況にたいし、この影響を考慮し、定量化しているのか
- 我々は元来、これらを金融政策の一部とはみなしていない
- これは、舞台裏で動いているものであり、かなり早い段階から周知していた
- 我々が最近使用し、今後の原動力にもなる主要な金融政策手段は金利であり、QTではなく、その他の資金調達プログラムでもない
- 我々は半実仮想を用いて計算しようと作業しており、大きな影響があるとは認識されていない
- デジタルユーロについて。トランプ政権はFRBの中央銀行デジタル通貨のプロジェクトを停止し、FRBはデジタルドルについて4年間は保留にされる可能性がある。ECBとデジタルユーロの計画にとっては一種の絶好の機会に見える。米国の変化を踏まえ、ECBの立場はどうか。ECBはデジタルユーロの発行をどのように進めるのか
- 最終的にはデジタルユーロを寝かせるのではなく、実現させるよう注力している
- しかし、他の関係者、欧州委員会、欧州理事会、欧州議会が立法手続きを完了させなければ動き出すことはできない
- 本日の議論と合意、摩擦について。現在の経済あるいは中期的な見通しについてより多様な見解があるのか
- 我々はかなり、広範囲にわたり、情熱的に活発な議論を行った
- ここ数週間を踏まえた上で、依然として関税や通商に関しては交渉が望ましいと考えているか、それともある程度の強硬姿勢を示すべきか
- 個人的な見解としては、強い立場から交渉を行うべきである
- 関税、特に報復措置を伴う場合には、良いことはなく、すべてを考慮すればマイナスを影響があることは分かっているためである
(2025年03月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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