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- 英国金融政策(2月MPC公表)-利下げ決定、今後の段階的・慎重姿勢は維持
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1.結果の概要:予想通り政策金利を引き下げ
【金融政策決定内容】
・政策金利(バンクレート)を4.50%に引き下げる(7対2で、2名は4.25%への引き下げ主張)
【議事要旨等(趣旨)】
・成長率見通しは、24年0.75%、25年0.75%、26年1.5%、27年1.5%(短期部分を下方修正)
・インフレ見通しは、24年2.5%、25年3.5%、26年2.5%、27年2%(10-12月期の前年比、上方修正)
・金融政策の制限度合いのさらなる緩和は段階的かつ慎重なアプローチが適切となる
・インフレ持続リスクに加え、経済の需供バランスに関する証拠を注視する
・米国の関税政策による英国への影響はほとんどの経路で経済活動を低下させると見られる一方、インフレ率は低下経路と上昇経路の双方がある
・長期均衡金利は、推計の不確実性は大きいものの、前回2018年時点の評価よりも若干上昇した証拠がある
2.金融政策の評価:インフレリスクについては、需給バランスも考慮
2名は大幅利下げを主張したが、このうち1名2は議事要旨で長期的に政策金利が高止まりすると見られる点に言及している。また、声明文でも「金融政策の制限度合いのさらなる緩和は段階的かつ慎重なアプローチが適切」との従来の表現を維持しており、MPCのスタンスは引き続き慎重であり、ハト派に傾斜を強めた訳ではないと見られる。むしろ、今回公表された金融政策報告書(MPR)ではインフレ見通しを上方修正され、インフレ持続のリスクも引き続き警戒されている。加えて今会合ではインフレを持続させる要因として、経済の需給バランスにも注視するとし、供給制約が強まる場合は、(需要が弱く成長回復が遅くても)より制限的な金融政策が必要になる可能性があるとしている。
先行きの金融政策については、会合時点で金融市場に織り込まれた政策金利の経路(これはMPRの見通し前提にもなる)は25年の利下げ幅で0.85%であり段階的かつ慎重なアプローチとも整合的な織り込み具合といえる(0.25%ポイントの利下げ換算で3-4回分、11月見通し時には4回相当の利下げが織り込まれていたため、やや利下げの織り込み回数は少なくなった)。これが今後の利下げの基本シナリオとなるだろう。
1 例えば、ブルームバーグの予想中央値は据え置きだった
2 タカ派で知られるマン委員と見られる。大幅利下げを主張したもう1名はハト派で知られるディングラ委員。
3.金融政策の方針
- MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、持続的な経済成長と雇用を支援する
- MPCは中期的かつフォワードルッキングなアプローチを採用し、持続的なインフレ目標達成に必要な金融政策姿勢を決定する
- 2月5日に終了した会合で、委員会は多数決により政策金利(バンクレート)を0.25%ポイント引き下げ4.5%とする(7対2で決定3)、2名は政策金利を0.5%ポイント引き下げ、4.25%に引き下げることを希望した
- 以前の外的ショックが解消され、金融政策の抑制的な姿勢が2次的効果を抑制し、長期のインフレ期待を安定させてきたため、ここ2年はディスインフレ過程が大きく進展した
- この進展は、MPCは持続的なインフレ圧力を引き続き政策金利を制限的な領域に維持する一方で、制限的な政策の度合いを段階的に緩和することを可能にさせた
- CPIインフレ率は24年10-12月期で2.5%となった
- 国内インフレ圧力は緩和しているが、依然としてやや高止まりしており、指標の一部は予想よりも緩和ペースが遅い
- 基調的な国内インフレ圧力はさらに弱まると見られるものの、世界的なエネルギーコストの上昇と規制価格の変更がヘッドラインインフレ率を押し上げ、25年7-9月期には3.7%に達すると予想される
- その後、CPIインフレ率は2%目標付近まで低下すると見られるが、委員会はより持続的なインフレ圧力の兆候に多くの注意を払う
- GDP成長率は11月の金融政策報告書時点の予想よりも弱く、企業と家計の景況感指標は低下した
- GDP成長率は今年半ばには上向くと予想される
- 労働市場は引き続き緩和が続いており、総じてバランスしていると判断される
- 生産性伸び率は依然の推計よりも弱く、委員会は経済の供給能力の伸びが弱いと判断される
- その結果、最近の需要減速でも弛み(slack)はごくわずかに拡大したのみと判断される
- インフレ率を持続的に2%目標に戻すことを支援し、委員会は政策金利を今会合で4.5%に引き下げるだけの国内物価と賃金のディスインフレ過程に十分な進展があったと判断する
- 委員会の中期的なインフレ見通しの見解に基づき、金融政策の制限度合いのさらなる緩和は段階的かつ慎重なアプローチが適切となる
- インフレの持続性を取り巻くリスクに加えて、金融政策に影響しうる経済の需要面と供給面の軌道を取り巻く不確実性も存在する
- 供給に対して需要が相対的に弱い状況が大きくなる、もしくは長く継続すれば、インフレ圧力は押し下げられ、より制限度合いを緩和した政策金利の経路が可能である
- 需要に対してより供給が抑制されれば、物価と賃金圧力が持続的となり、相対的により制限的な金融政策経路と整合する
- 委員会は引き続きインフレの持続性のリスク、および経済の需要と供給の総合的なバランスに関して証拠が示唆することについてよく注視する
- 金融政策は、中期的に、インフレ率の持続的な2%目標への回帰に対するリスクがさらに解消するまで、引き続き十分な期間(sufficiently long)、制限的にする必要がある
- 委員会は各会合で金融政策の制限度合いを適切に決定する
3 今回反対票を投じたのはディングラ委員およびマン委員。前回は政策金利の据え置きが決定されるなかラムズデン委員(副総裁)、ディングラ委員、テイラー委員が利下げを主張した。
(2025年02月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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