2025年02月18日

家計消費の動向(~2024年12月)-物価高でメリハリ傾向が強まるが、全体では緩やかに改善傾向

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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4――おわりに~2024年は物価高でメリハリ消費の強まり、2025年は実質賃金増で消費拡大が期待

本稿では、総務省「家計調査」を用いて、コロナ禍以降、2024年12月までの二人以上世帯の消費動向を捉えた。その結果、2023年5月の5類移行後、消費行動は平常化に向かっているものの、物価高によって可処分所得が伸び悩む中で、食料や日用品などの日常的な消費は抑制される一方、コロナ禍で控えられていた旅行・レジャーなどの非日常的な消費が比較的優先される傾向にあり(とはいえ、コロナ禍前より低水準)、消費者の選択性がより高まっている様子がうかがえた。また、2024年を振り返ると、娯楽の中でも割高感や優先度などから温度差が生じており(国内旅行や遊園地と比べて、海外旅行や外食の回復基調が弱いことなど)、消費者はコストパフォーマンスを重視し、より慎重に消費対象を選ぶ傾向、つまりメリハリ消費の傾向が一層強まる様子が見て取れた。さらに、これまでも指摘してきたように、バスやタクシーの運転手の高齢化による供給不足やテレワークの普及など行動変容に伴う支出額の減少といった、社会や消費構造変化の影響も確認された。

冒頭で述べたように、個人消費は引き続き緩やかな改善傾向を示しているが、2024年12月時点では依然としてコロナ禍前の水準を下回っている。その要因としては繰り返しになるが、可処分所得が増加していないために消費が抑制されていることがあげられる。

一方で2025年は昨年に引き続き、高い賃上げが見込まれ、年後半には賃金の上昇率が物価上昇率を安定的に上回ると予測されている4。そうなれば、消費者が実際に使えるお金が増え、従来のメリハリ消費において「節約」の比重は徐々に和らぎ、消費全体が活発化していくことが期待される。なお、別のレポート5で述べたが、最近の消費行動においては「推し活」をはじめとする「こだわり消費」の存在感が増しており、この「こだわり消費」も今後の消費回復を後押しする要因となるだろう。
 
4 斎藤太郎「2024~2026年度経済見通し」、ニッセイ基礎研究所、基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.334](2025/1/9)
5 久我尚子「2025年の消費動向~節約一服、コスパ消費から推し活・こだわり消費の広がり」、ニッセイ基礎研究所、研究員の眼(2025/2/13)

(2025年02月18日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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