2025年02月17日

QE速報:10-12月期の実質GDPは前期比0.7%(年率2.8%)-3四半期連続のプラス成長も、内需は低迷

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 10-12月期は前期比年率2.8%と3四半期連続のプラス成長

本日(2/17)発表された2024年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.7%(前期比年率2.8%)と3四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測1月31日:前期比0.3%、年1.0%)。

物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡したことから、民間消費は前期比0.1%とほぼ横ばいにとどまった。高水準の企業収益を背景に設備投資は前期比0.5%の増加となったが、民間在庫変動が前期比・寄与度▲0.2%のマイナスとなったことから、国内需要は前期比▲0.1%と3四半期ぶりに減少した。

一方、輸出が前期比1.1%と3四半期連続で増加する中、輸入が前期比▲2.1%の減少となり、外需が前期比・寄与度0.7%のプラスとなったことが成長率を大きく押し上げた。
 
名目GDPは前期比1.3%(前期比年率5.1%)と3四半期連続で増加し、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前期比0.6%(7-9月期:同0.3%)、前年比2.8%(7-9月期:同2.4%)となった。国内需要デフレーターが前期比0.4%(7-9月期:同0.2%)と前期から伸びを高めたことに加え、輸出デフレーターが前期比1.0%となり、輸入デフレーターの伸び(同0.3%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
<需要項目別結果>
2024年10-12月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。実質GDP成長率は、2024年1-3月期(前期比年率▲2.2%→同▲1.9%)、4-6月期(前期比年率2.2%→同3.0%)、7-9月期(前期比年率1.2%→同1.7%)がいずれも上方修正された。一方、2023年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率0.7%のプラスから同▲0.3%のマイナスへと下方修正された。この結果、実質GDPは2023年7-9月期から2024年1-3月期まで3四半期連続のマイナス成長となった。
 
2024年(暦年)の実質GDPは前年比0.1%(2023年は1.5%)とかろうじて4年連続のプラス成長を確保した。家計部門は低調だったが(民間消費:前年比▲0.1%、住宅投資:同▲2.3%)、設備投資が前年比1.2%の増加となったこと、公的需要が前年比0.5%の増加となったことが実質成長率を押し上げた。

名目GDPは前年比2.9%(2023年は5.6%)と4年連続のプラス成長となった。GDPデフレーターは前年比2.9%(2023年は4.1%)と3年連続のプラスであった。
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.1%とほぼ横ばいにとどまった。物価高による下押し圧力の強い状態が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡し、家計の可処分所得が前期から減少したことが消費の伸びを抑制した。実質家計消費の内訳を形態別にみると、自動車、家電などの耐久財が前期比3.6%と7-9月期(同3.1%)に続き高い伸びとなったほか、外食、旅行、宿泊などのサービス(同0.1%)も増加したが、食料品などの非耐久財(同▲0.3%)、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲1.7%)は減少した。

雇用者報酬は、名目・前年比5.8%となり、7-9月期の同4.0%から伸びが急加速した。7-9月期に続きボーナスの高い伸びが雇用者報酬を押し上げた。実質雇用者報酬は前年比3.3%(7-9月期:同1.4%)と3四半期連続で増加した。
 
住宅投資は前期比0.1%と3四半期連続で増加した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2024年4-6月期の81.9万戸から7-9月期が78.3万戸、10-12月期が78.0万戸と水準を切り下げている。住宅価格上昇の影響等から住宅投資は弱い動きが続いている。GDP統計の住宅投資は3四半期連続で増加したが、コロナ禍前(2019年平均)の水準を大きく下回り、停滞が続いている。
 
設備投資は前期比0.5%と2四半期ぶりに増加した。日銀短観2024年12月調査では、2024年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が9月調査から▲0.1%下方修正されたが、前年度比10.0%の高い伸びとなっている。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に、人手不足対応の省力化投資、デジタル化に向けた情報関連投資、Eコマース拡大に伴う建設投資などを中心に回復基調が続いている。
 
公的需要は、政府消費が前期比0.3%と4四半期連続で増加したが、公的固定資本形成は前期比▲0.3%と2四半期連続で減少した。
 
外需寄与度は前期比0.7%(前期比年率3.0%)と5四半期ぶりのプラスとなった。財貨・サービスの輸出が前期比1.1%の増加となる一方、財貨・サービスの輸入が同▲2.1%の減少となったことから、外需が成長率を大きく押し上げた。財輸出は前期比0.1%と低迷したが、インバウンド需要の拡大などからサービス輸出が前期比4.1%の高い伸びとなり輸出を押し上げた。

2025年1-3月期は4四半期連続のプラス成長を予想するが、下振れリスクは高い

2024年10-12月期は3四半期連続のプラス成長となったが、民間消費の水準は依然としてコロナ禍前(2019年平均)を▲0.4%下回っている。消費活動の正常化にはまだ距離がある。現時点では、2025年1-3月期の実質GDPは前期比年率1%程度のプラス成長を予想しているが、物価の上振れなどを要因として、引き続き民間消費を中心に下振れリスクは高い。
 
 

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(2025年02月17日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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