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インバウンド消費の動向(2024年10-12月期)-2024年の消費額は8.1兆円、訪日客数は3,687万人で過去最高

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに~2024年は過去最高の8.1兆円、2023年(5.3兆円)を大幅超過
前稿1では2024年7-9月期までの状況を確認したところ、コロナ禍前の同時期と比べ、訪日外客数は2割弱、消費は65%ほど増加していた。外客数と比べて消費額の伸びが大きい背景には、円安や日本国内のインフレの状況が相対的に低水準にあることで、訪日客が割安感を感じやすいことがあげられる。また、前期に引き続き、訪日中国人観光客の回復基調は強まり(コロナ禍前の75%程度まで回復)、外客数がついに首位に返り咲いた(前期は韓国が首位)。消費額は前期に引き続き首位で、コロナ禍を約5%上回った。
本稿では、観光庁「インバウンド消費動向調査(2024年10-12月期)」を中心にインバウンド消費の現状を捉えていく。
1 久我尚子「訪日外国人消費の動向(2024年7-9月期)~9月時点で2023年超えの5.8兆円、2024年は8兆円も視野に」、ニッセイ基礎研レポート(2024/10/30)
2――訪日外客数~2024年9月は287.2万人で2019年より26.4%増、7-9月期は首位に中国が復活
一方、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられた後の2023年10-12月期(769万1,628人、2019年同期比+22万7,399人、増加率+18.1%)では、韓国(26.8%、全体に占める割合+18.1%pt)が最も多く、次いで台湾(16.0%、同+0.5%pt)、中国(10.8%、同▲18.6%pt)、香港(8.2%、同▲0.2%pt)、米国(7.5%、同+1.5%pt)と続き、東アジア諸国で全体の約6割を占めることは変わらないが、中国の比率が大幅に低下する一方で、他の上位国の比率はおおむね伸びていた。
さらに、最新の2024年10-12月期(998万8,993人、2019年同期比+229万7,365人、増加率+33.8%)では、同様に最多が韓国(23.5%、同+14.8%pt)に戻り、次いで中国(17.4%、同▲12.0%pt)、台湾(14.6%、同▲0.9%pt)、米国(7.7%、同+1.7%pt)、香港(7.1%、同▲1.3%pt)と続いている。2024年7-9月期では、インバウンドの再開以降で初めて中国が首位に返り咲いていたが(全体に占める割合は23.9%)、今期は韓国が中国を再び上回っている。
また、訪日外客数の上位国を中心に、2019年10-12月期に対する2024年同期の増減率を見ると、韓国は実に261.2%増加し、3.6倍に達している。この大幅な増加は、対比となる2019年同期が、日本政府による半導体の輸出管理強化によって反日感情が高まり、訪日客数が大幅に減少した時期であるためだ。なお、米国(2019年同期比+71.1%)や豪州(同64.0%)も2倍弱に増え、台湾(同+26.4%)や香港(同+13.0%)の増加も目立つ。一方で中国からの訪日外客数は依然として大幅に減少した状況にあるものの(同▲20.9%)、回復傾向にはあり、2019年同期と比べた増減率は2023年4-6月期▲80.9%→同年7-9月期▲65.0%→同年10-12月期▲62.3%→2024年1-3月期▲38.8%→同年4-6月期▲26.4%→同年7-9月期▲24.2%→今期▲20.9%と推移している。なお、中国からの訪日客数の減少分(▲45万8,397人)は、韓国の増加分(+169万8,785人)でカバーされて余りある状況にある。
また、2024年10-12月期の時点では、コロナ禍前の外客数を下回っている国もあるものの、いずれも2023年と比較すれば増加傾向にある。その背景には、前稿までに述べてきたように、円安や他国と比べて低いインフレ率により、日本旅行の割安感が依然として続いていることが影響している。
2 訪日外客とは、外国人正規入国者から日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者のこと。駐在員やその家族、留学生等の入国者・再入国者は訪日外客に含まれる。
(2025年02月06日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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