2025年02月03日

米個人所得・消費支出(24年12月)-PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに前月から上昇も市場予想には一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想に一致した一方、個人消費は市場予想を上回る

1月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は12月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月:+0.3%)と前月を上回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.7%(前月改定値:+0.6%)と+0.4%から上方修正された前月、市場予想の+0.5%を上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.4%(前月改定値:+0.5%)と+0.3%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想の+0.3%は上回った(図表5)。貯蓄率1は3.8%(前月:4.1%)と前月から▲0.3%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.1%)と前月から上昇した一方、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も前月比+0.2%(前月:+0.1%)とこちらも前月から上昇、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.6%(前月:+2.4%)と3ヵ月連続で上昇した一方、市場予想(+2.6%)に一致した。コア指数は+2.8%(前月:+2.8%)と前月、市場予想(+2.8%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:堅調な個人消費が持続

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は10月の+0.5%となった後、11月が+0.6%と前月から+0.2%ポイント上方修正されたほか、12月も+0.7%と9月以来の高い伸びとなった(図表1)。

この結果、実質GDPにおける個人消費は10-12月期の前期年率で+4.2%と高い伸びとなった前期の+3.7%からさらに伸びが加速した。これは23年1-3月以来の水準であり、堅調な個人消費が持続していることを確認した(図表1)。

これに対して、個人所得(前月比)、可処分所得(同)ともに+0.4%と堅調なものの、個人消費を下回った結果、貯蓄率が3.8%と22年12月以来、2年ぶりの水準に低下した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は前月比で総合指数、物価の基調を示すコア指数ともに前月から上昇したほか、総合指数は前年同月比でも3ヵ月連続で上昇しており、足元でインフレの低下傾向は一服している。

3.所得動向:自営業者収入の伸びが加速

12月の個人所得(前月比)は、賃金・給与が+0.4%(前月:+0.5%)と堅調を維持したものの、前月から伸びが鈍化した(図表2)。一方、利息配当収入が+0.2%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じたほか、移転所得が+0.2%(前月:+0.1%)と前月から小幅に伸びが加速したほか、自営業所得が+0.5%(前月:+0.2%)と伸びが加速して個人所得を押し上げた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、12月の名目が+0.4%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は+0.1%(前月:+0.1%)とこちらは前月に一致した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:ガソリン・エネルギーを中心に非耐久財消費が増加

12月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.9%(前月:+1.1%)と堅調を維持したものの、前月から小幅に伸びが鈍化した一方、サービス消費が+0.6%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費は、耐久財が+0.6%(前月:+2.7%)と高い伸びとなった前月からは伸びが鈍化した一方、非耐久財が+1.0%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。

耐久財では、自動車・自動車部品が+0.8%(前月:+6.3%)、家具・家電が+0.4%(前月:+0.9%)、娯楽財・スポーツカーが+0.4%(前月:+1.6%)といずれも前月から伸びが鈍化した。

非耐久財では衣料・靴が+0.6%(前月:+0.9%)と前月から伸びが鈍化した一方、食料・飲料が+0.8%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速したほか、ガソリン・エネルギーが+5.2%(前月:▲0.5%)と前月からプラスに転じて非耐久財消費を押し上げた。

サービス消費は、外食・宿泊が▲0.2%(前月:+0.4%)と前月からマイナスに転じたほか、娯楽サービスが+0.5%(前月:+1.4%)、金融サービスも+0.4%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した。一方、住宅・公共料金が+0.8%(前月:+0.2%)。医療サービスが+0.4%(前月:+0.3%)、輸送サービスが+3.9%(前月:+0.9%)と前月から伸びが加速してサービス消費を押し上げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前年同月比でマイナス継続も前月比では2ヵ月連続上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.7%(前月:+0.2%)と2ヵ月連続のプラスとなったほか、前月からプラス幅が拡大した(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.3%)とこちらは8ヵ月連続でプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲1.1%(前月:▲4.0%)とマイナス幅は縮小したものの、5ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。食料品価格指数は+1.6%(前月:+1.4%)と90ヵ月連続でプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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(2025年02月03日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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