2025年01月14日

米雇用統計(24年12月)-非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に上回ったほか、失業率が横這い予想に反して低下

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数が市場予想を上回ったほか、失業率は横這い予想に反して低下

1月10日、米国労働統計局(BLS)は12月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+25.6万人の増加1(前月改定値:+21.2万人)と+22.7万人から下方修正された前月を上回り、24年3月以来の水準となったほか、市場予想の+16.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.1%(前月:4.2%、市場予想:4.2%)と前月から▲0.1ポイント低下、横這いを見込んだ市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.5%(前月:62.5%、市場予想:62.5%)とこちらは前月、市場予想に一致した。(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:12月の雇用統計は労働市場全般の改善を示唆

事業所調査の非農業部門雇用者数(前月比)は12月が+25.6万人と24年3月以来の水準となったほか、過去2ヵ月分の修正幅が▲0.8万人の小幅な下方修正に留まった結果、過去3ヵ月の月間平均増加ペースは+17.0万人と24年10月時点の同+12.5人から雇用の伸びが加速したことを示した。もっとも、24年初の+24.3万人からは大幅に低下しており、通年でみた雇用増加ペースの鈍化傾向は続いている。

家計調査は12月の失業率が4.1%と3ヵ月ぶりに低下し、労働需給が依然タイトであることが示されたほか、今月は季節調整係数の見直しに伴う年次改定で24年7月が4.3%から4.2%に下方修正され、当初想定された以上に労働需給がタイトであることを確認した。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.3%(前月:+0.4%、市場予想:+0.3%)と前月から低下、市場予想に一致した。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 前年同月比は+3.9%(前月:+4.0%、市場予想:+4.0%)とこちらは前月から低下、横這いを見込んだ市場予想を下回った(図表1)。このため、時間当たり賃金は前月比、前年同月比ともに3ヵ月ぶりの低下となった。

このようにみると、12月の雇用統計は非農業部門雇用者数の堅調な伸びや失業率の低下など24年通年では労働市場の鈍化傾向が続いているものの、年末にかけては労働市場が堅調となったことを確認する結果となった。このため、12月の雇用統計と、ここ数ヵ月インフレ率の低下が足踏み状態となっていることを考慮すると、次回1月のFOMC会合で利下げが決定される可能性は非常に低下したと言えよう。

3.事業所調査の詳細:小売業が増加した一方、製造業は減少

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+23.1万人(前月:+14.8万人)と前月から伸びが大幅に加速した(図表2)。

民間サービス部門の中では、医療・社会扶助サービスが前月比+7.0万人(前月:+8.0万人)、娯楽・宿泊が+4.3万人(前月:+5.2万人)と堅調を維持したものの、前月から伸びが鈍化した。

一方、運輸・倉庫が+1.0万人(前月:+0.3万人)、専門・ビジネスサービスが+2.8万人(前月:+0.9万人)と前月から伸びが加速したほか、小売業が+4.3万人(前月:▲2.9万人)と前月からプラスに転じた。

財生産部門は前月比▲0.8万人(前月:+3.4万人)と前月からマイナスに転じた。建設業が+0.8万人(前月:+0.8万人)と前月から横這いとなった一方、製造業が▲1.3万人(前月:+2.5万人)と前月からマイナスに転じて財生産部門全体を押し下げた。

政府部門は前月比+3.3万人(前月:+3.0万人)と前月から小幅ながら伸びが加速した。内訳をみると、州・地方政府が+2.7万人(前月:+3.0万人)と前月から小幅ながら伸びが鈍化した一方、連邦政府が+0.6万人(前月:横這い)と前月から伸びが加速して政府部門全体を押し上げた。
前月(11月)と前々月(10月)の雇用増加数(改定値)は前月が+21.2万人(改定前:+22.7万人)と▲1.5万人下方修正された一方、前々月が+4.3万人(改定前:+3.6万人)とこちらは+0.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.8万人の小幅な下方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って1月8日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+12.2万人(前月:+14.6万人、市場予想:+14.0万人)と前月から低下し、市場予想も下回った。この結果、ADP社の統計は前月から雇用者数の伸びが加速した雇用統計とは不整合な結果となった。
 
12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が35.69ドル(前月:35.59ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.3時間)と前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,224.17ドル(前月:1,220.74ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働力人口は3ヵ月ぶりに増加

家計調査のうち、12月の労働力人口は前月対比で+24.3万人(前月:▲12.4万人)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。内訳を見ると、失業者数が▲23.5万人(前月:+14.9万人)と前月から大幅なマイナスに転じたものの、就業者数が+47.8万人(前月:▲27.3万人)と失業者数の減少を上回る増加を示して労働力人口全体を押し上げた。非労働力人口は▲6.8万人(前月:+29.8万人)と5カ月ぶりにマイナスに転じた。

これらの結果、労働参加率は62.5%と小数第1位では前月から横這いとなったものの、小数第2位までみると62.51%(前月:62.46%)と3ヵ月ぶりに増加に転じた(図表5)。

一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は12月が83.4%(前月:83.5%)とこちらは全体の労働参加率とは対照的に前月から▲0.1%ポイント低下した。男女の内訳は、女性が77.9%(前月:77.7%)と前月から0.2%ポイント上昇した一方、男性が89.0%(前月:89.3%)と前月から▲0.3%ポイント低下して全体を押し下げた。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
失業率は12月が4.1%と3ヵ月ぶりに低下した(図表6)。一方、サームルール指標は12月が+0.40%ポイントとなり、3ヵ月連続で景気後退の開始を示すとされる+0.5%ポイントを下回った。

12月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は155.1万人(前月:165.4万人)と前月から▲10.3万人の大幅な減少となった。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは22.4%(前月:23.1%)と前月から▲0.7%ポイント低下した(図表7)。一方、平均失業期間は23.7週(前月:23.6週)とこちらは前月から+0.1週長期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(156.2万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(435.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、12月が7.5%(前月:7.7%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.4%ポイント(前月:+3.5%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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(2025年01月14日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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