2024年10月25日

米労働市場の緩やかな減速が継続-景気が堅調を維持する中、失業率の大幅上昇は回避へ

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 24年9月の雇用統計は非農業部門雇用者数(前月比)が予想外に大幅な上昇を示したほか、失業率が2ヵ月連続で低下するなど改善を示した。ただし、労働市場の緩やかな減速傾向に大きな変化はない。
     
  2. 24年7月以降、失業率が景気後退の開始を示すとされるサームルールに抵触したものの、堅調な労働供給を反映しており、現状で景気後退の兆候はみられない。
     
  3. 労働供給は移民労働力人口の増加を背景に回復基調が持続しているものの、南部国境からの不法越境者数は24年以降減少に転じており、労働供給の回復も一服する見通し。
     
  4. 求人数の低下が続いているほか、大企業を中心に企業の採用意欲が低下している一方、企業の人員削減数には大幅な増加がみられておらず、労働需要の低下が失業者数の大幅な増加に繋がっていない状況。
     
  5. 労働需給の緩和に伴い賃金上昇率は低下基調が持続。労働力不足を背景にした転職者の大幅な賃金上昇も解消されており、今後も賃金上昇率は低下が続く見込。
     
  6. FRBは9月以降金融緩和政策に転換したものの、これまでの累積的な金融引締めの影響もあって、当面労働市場の減速傾向は続こう。ただし、米景気がソフトランディングする可能性が高まっており、失業率の大幅上昇は回避されよう。
(図表1)米国の雇用動向(非農業部門雇用増と失業率)
■目次

1.はじめに
2.米労働市場の減速は継続
  (雇用統計)9月は雇用者数、失業率ともに改善。サームルール抵触は景気後退を意味しない
  (労働供給)プライムエイジ(25-54歳)の回復持続も今後は回復鈍化の可能性
  (労働需要)労働需要は低下も大幅な人員削減は回避
  (賃金)労働需給の緩和から賃金上昇率の低下基調は持続
3.今後の見通し

(2024年10月25日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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