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ファイナンシャル・ウェルビーイングについて(1)-基本的な概念と枠組み

生活研究部 研究員 西久保 瑛浩
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3.ファイナンシャル・ウェルビーイングの構成要素と尺度
CFPB(2015)は、米国の現役世代と高齢者を対象としたインタビュー調査および専門家によるディスカッションから、前述のFWBの定義に加え、FWBには「現在/将来」と「安心/選択の自由」の2軸で区分される4つの中心的な要素が存在することを発表した(図表2)。4つの要素はそれぞれ、「月々や日々の家計を管理できること」「経済的ショックに対応する能力があること」「人生を楽しむための選択ができる経済的な自由があること」「経済的な目標を達成するための軌道に乗っていること」であり、現在最も代表的なFWBのフレームワークであるといえる。また、CFPB(2017)はこれらの定義や4要素に基づき10項目からなるFWBの尺度を開発しており、当該尺度を用いて米国内のFWBの測定を行っている(図表3)。
5 Sorgente, A., & Lanz, M. (2019)”The multidimensional subjective financial well-being scale for emerging adults: Development and validation studies. International Journal of Behavioral Development”
6 Sorgente, A., Atay, B., Aubrey, M., Bhatia, S., Crespo, C., Fonseca, G.,Güneri, O.Y., Lep, Ž., Lessard, D., Negru-Subtirica, O., Portugal, A., Ranta, M., Relvas. A.P., Singh, N., Sirsch, U., Zupančič, M. & Lanz, M.(2024)"One (Financial Well-Being) Model Fits All? Testing the Multidimensional Subjective Financial Well-Being Scale Across Nine Countries"
4.まとめ
繰り返しになるが、FWBの考え方では単に収入や資産・負債の多寡が経済的な幸/不幸を意味するものではない。そうした経済状況を踏まえたうえで、自身の現在・将来が経済的に豊かであると感じられるかどうかが重要なのである。したがって、自身にとってのFWBが何か、どのようにすればそれが実現できるかを国民一人ひとりが考え、追求することが必要であり、それによって自身の金融行動が真に正しい(=自身の思う経済的な豊かさの実現につながる)のかそうでないのか、初めて判断することができる。同時に、裏を返せば、これからの金融機関には、顧客の物質的な経済状況のみならず、FWBを考慮したサービスの提供が求められることになるだろう。
また、現在行われているFWBに関する研究は、当然のことながらFWBの基本的な概念を補強する主旨のものやFWBに対する影響要因を探る視点ものが多い。特に、金融リテラシーとFWBの関係性などは世界的にもしばしば取り上げられるテーマである。しかし、現実の事象としてFWBの変化が人々の行動にどう影響するかという視点では、十分に広範な研究が行われているとはいえない。一部、FWBの向上が労働生産性に対して与える影響に関しては積極的に研究が行われているものの、FWBが人々の経済状況に関する極めて基本的な意味をもつ指標である以上、労働のみならず消費や投資の側面にも影響を及ぼすことは十分に予想される。
何がFWBを決定づけるか、FWBが何を決定づけるか、今後の研究の広がりが期待される。
次稿(ファイナンシャル・ウェルビーイング(2))では、FWBと金融商品、とりわけ生命保険商品との関係性について考察していきたい。
(2025年01月30日「研究員の眼」)

03-3512-1795
- 【経歴】
2018年 日本証券業協会 入職
2024年 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
【加入団体等】
・日本マーケティング・サイエンス学会
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