2025年01月15日

アンケート調査から読み解く企業の物流戦略の現状と課題(2)~商慣行見直しやドライバー負荷軽減、共同配送、標準化、物流DXを推進する長期ビジョン・中期計画策定の社会的要請高まる

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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4.企業の物流戦略の方向性

本稿では、三菱地所リアルエステートサービス株式会社と共同で実施したアンケート調査の一部を紹介し、政策パッケージなどの各種施策が物流業務に与える影響や、物流戦略の中期計画策定の状況、物流に関わる社会潮流等を確認した。

「商慣行の見直し」では、荷主企業は「納品期限、物流コスト込み取引価格等の見直し」、物流企業は「荷主・物流事業者間における物流負荷の軽減」との回答が最多であった。「物流の効率化」では、荷主企業は「即効性のある設備投資の促進」、物流企業は「物流標準化の推進」に期待を寄せている模様だ。また、「荷主・消費者の行動変容」では、荷主企業・物流企業ともに「荷主の経営者層の意識改革・行動変容」との回答が最多であった。物流関連2法の改正により、一定規模の荷主企業は、「物流統括管理者」の選任が義務付けられたことから、物流企業と連携し、中長期な視点で物流に関する諸問題の解決にあたることが期待される。

また、物流業務のアウトソーシングは進展しているものの、物流戦略の策定を外部に委託している企業は限られている。物流戦略の長期ビジョン・中期計画では、物流企業の8割以上が策定している一方、荷主企業の約半数は策定していないと回答した。

物流戦略に影響を与えると考える社会潮流では、「トラックドライバー不足」、「施設内従業員不足」、「石油等エネルギー価格の変動」との回答が上位であった。今後の物流戦略を考える上で、人手不足および燃料費高騰への対応が最優先事項となっている。
図表-11  企業の物流戦略に関する回答結果(まとめ)
企業は、「2024年問題」で顕在化した人手不足および輸送コスト高騰に対応すべく、商慣行の是正や、パレット等の規格統一等を通じて物流業務の効率化を本格的に進めると考えられる。さらに、物流戦略が重要な経営課題となるなか、物流施設へのニーズ等についても大きく変化することが予想される。

次回のレポートでは、物流施設利用の現状を概観した上で、物流不動産市場への影響等について考察したい。
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年01月15日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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レポート紹介

【アンケート調査から読み解く企業の物流戦略の現状と課題(2)~商慣行見直しやドライバー負荷軽減、共同配送、標準化、物流DXを推進する長期ビジョン・中期計画策定の社会的要請高まる】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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