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がんに関する知識とがん検診受診率・がんに関する備え

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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つづいて、がんに関する上記情報の認知と、2年以内4に、5つの部位についてがん検診を受けたかどうかを部位ごとに線形確率モデルで推計した。説明変数は、がんを怖いと思うかどうか(「こわい」「どちらかと言えばこわい」を1、「どちらかと言えばこわくない」「こわくない」「わからない」を0とするダミー変数)と、上記8つの質問についての認知状況(「よく知っている」を4、「知っている」を3、「聞いたことがある程度」を2、「知らなかった」を1)とした。性、年齢、未既婚、職業、同居家族の有無、健康状態を調整した。
その結果、「日本では、死亡者の約3人に1人が、がんで死亡している」を認知しているほど、大腸がん、肺がん、子宮頸がん、「がん全体の5年生存率は50%を超えている」を認知しているほど、乳がん、子宮頸がんの検診は受けていない。また、「日本では、約2人に1人が、将来、がんにかかると推測されている」を認知しているほど、大腸がんと肺がん、「子宮頸がんのように若い世代で増えているがんもある」を認知しているほど、子宮頸がん、「がんの中には、ウィルスや細菌の感染によって発症するものもある」を認知しているほど、胃がん、「厚生労働省では、がん検診を推奨している」を認知しているほど大腸がん、肺がん、子宮頸がん、「がんの早期発見・早期治療は、がん罹患後の生存率に大きく影響する」を認知しているほど、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんの検診をそれぞれ受けていた。
4 既述のとおり、厚生労働省では大腸、肺について年に1回、胃、乳房、子宮頚部について2年に1回受けることを推奨しているが、本調査は自治体によるがん検診が始まるタイミングである6月に行った調査であることや、記憶に基づいて回答を行っている人が多いと考えられることから、2年以内に受けている人を「がん検診を受けた」と考えた。
「がん全体の5年生存率は50%を超えている」を知っている人では、がん検診受診率も低かったが、がんが怖いと思う人も相対的に少ないだけでなく、がんに対する備えの面でも相対的に重要ではないと考える傾向がみられ、がんを特別な病気と捉えていない可能性が考えられる。
4――おわりに
多くの情報については、知っているほど検診を受けている傾向があるが、今回「日本では、死亡者の約3人に1人が、がんで死亡している」と「がん全体の5年生存率は50%を超えている」は、知っているほど、いくつかの部位について検診を受けていない傾向が見られた。これらの情報は「よく知っている」で、がんをこわいと思う気持ちが少ない人もいた。また、多くの情報については、認知しているほど、がんに対する備えを重要だと回答していた。しかし、「がん全体の5年生存率は50%を超えている」は、認知している人ほど、がんへの備えを重要視していない傾向があった。
がんに関する各情報は、それぞれの情報が単発的に認知されている様子がうかがえたことを踏まえて、がん検診の普及を図る観点からは、「がん全体の5年生存率は50%を超えている」については、その背景にがん検診受診率の向上にともなう早期発見の増加や医療技術の進歩があることをあわせて伝えたり、生存率が高くなったからこそ、治療しながら日常生活を送ることを踏まえた準備をする必要性を伝えていく必要があるだろう。
(2024年12月20日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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