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- 資金循環統計(24年7-9月期)~個人金融資産は2179兆円と前年比58兆円増加したが、物価上昇を加味すると前年割れに
2024年12月18日
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1.個人金融資産(24年9月末):前年比58兆円増、前期末比34兆円減
2024年9月末の個人金融資産残高は、前年比58兆円増(2.8%増)の2179兆円となった1。過去3番目の高水準ながら、7四半期ぶりに過去最高の更新が途絶えた形になった。年間で見た場合、資金の純流入が14兆円あったほか、内外で株高が進んだことで時価変動2の影響がプラス44兆円(うち国内株式等がプラス21兆円、投資信託がプラス14兆円)発生し、個人金融資産残高を押し上げた。
次に四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(6月末)比で34兆円減と、8四半期ぶりに減少した。例年、7-9月期は一般的な賞与支給月を含まないことから資金の純流入が進みづらい傾向があり 、今回も5兆円の純流出となった。さらに、この間に国内株価が急落し、円高が大きく進んだことで、時価変動の影響がマイナス29兆円(うち国内株式等がマイナス16兆円、投資信託がマイナス6兆円)発生し、資産残高を大きく目減りさせた(図表1~4)。
次に四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(6月末)比で34兆円減と、8四半期ぶりに減少した。例年、7-9月期は一般的な賞与支給月を含まないことから資金の純流入が進みづらい傾向があり 、今回も5兆円の純流出となった。さらに、この間に国内株価が急落し、円高が大きく進んだことで、時価変動の影響がマイナス29兆円(うち国内株式等がマイナス16兆円、投資信託がマイナス6兆円)発生し、資産残高を大きく目減りさせた(図表1~4)。

足元の10-12月期については、一般的な賞与支給月を含むことから、例年、資金の純流入が進む傾向がある。また、9月末以降、国内株価が持ち直し、円安が進んだことから(図表4)、時価変動の影響も明確なプラスに働いているものと推測される。
従って、12月末にかけて株価やドル円が横ばい圏で推移すれば、12月末時点の個人金融資産残高は9月末時点の残高を明確に上回り、2200兆円前後に回復する可能性が高い。
1 今回、2024年4-6月期の計数が改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
2.家計の資金流出入の詳細:現預金の取り崩しが大、リスク性資産への資金流入は継続
現預金の内訳としては、まず現金が純流出(1.3兆円)となっている(図表8)。例年、7-9月は賞与支給の関係で純流入が進みづらい傾向があるが、今回は前年同期(0.4兆円の純流出)を明確に上回る純流出となっている。決済におけるキャッシュレス化の進行、インフレによる価値の目減り懸念に加え、7月からの新紙幣発行を機にタンス預金の一部が取り崩されたためと推測される。
また、今回は流動性預金(普通預金など)からの純流出(6.7兆円)が際立っている。前年同期(0.0兆円の純流入)、一昨年同期(1兆円の純流入)はわずかながら純流入であった。既述の通り、資金余剰が少なかったうえ、リスク性資産などへの資金シフトが生じたためだ。日銀による7月末の追加利上げを受けて、9月以降、普通預金金利が引き上げられたものの、引き上げは小幅かつ水準も定期預金を大きく下回っているため、資金をつなぎ留めることは出来なかったようだ。
一方、定期性預金(定期預金など)は引き続き純流出(2.4兆円)となったものの、純流出の規模は4兆円前後であった前年・一昨年同期を下回り、9四半期ぶりの小幅となった。引き続き明確な純流出ではあるものの、利上げ等によって預金金利の水準が切り上がったことによって、現金や流動性預金から一部資金が流入したり、満期到来分が再び定期預金として預け入れられたりしたことで、純流出の規模がやや抑制された可能性が高い。
次に、リスク性資産等への投資フロー(時価の変動は含まない)を確認すると(図表7)、まず代表格である株式等が0.2兆円の純流出となった。7-9月期は株価が大きく下落したが、損切り目的の売りと押し目を狙った買いが交錯したことで小動きに留まったと推測される。
一方、投資信託は2.7兆円の純流入となり、純流入の規模は前年同期(2.2兆円)や一昨年同期(1.1兆円)を上回った。株価の急落や円の急伸を受けた解約も一定程度出た模様で、3四半期ぶりの低水準にはなったものの、新NISAの普及を追い風に堅調な純流入が続いている。トレンドを見るために4半期累計フローを確認した場合でも(図表9)、投資信託への資金流入拡大が顕著になっている。
さらに、その他資産では(図表10)、確定拠出年金内の投資信託(0.4兆円の純流入)で順調な純流入が続いているほか、対外証券投資(1.4兆円の純流入)の純流入が現行基準で遡れる2005年以来の過去最大を記録した。預金金利よりも金利水準が高い国債(0.7兆円の純流入)の純流入規模も約7年ぶりの高水準となっている。
7-9月期は株価の急落や円の急伸といった市場環境の激変を受けて損失が発生した家計も多かったとみられる。ただし、新NISAの普及や長引くインフレが追い風となり、家計のリスク性資産等に対する前向きな投資スタンスは途絶えていない。
また、今回は流動性預金(普通預金など)からの純流出(6.7兆円)が際立っている。前年同期(0.0兆円の純流入)、一昨年同期(1兆円の純流入)はわずかながら純流入であった。既述の通り、資金余剰が少なかったうえ、リスク性資産などへの資金シフトが生じたためだ。日銀による7月末の追加利上げを受けて、9月以降、普通預金金利が引き上げられたものの、引き上げは小幅かつ水準も定期預金を大きく下回っているため、資金をつなぎ留めることは出来なかったようだ。
一方、定期性預金(定期預金など)は引き続き純流出(2.4兆円)となったものの、純流出の規模は4兆円前後であった前年・一昨年同期を下回り、9四半期ぶりの小幅となった。引き続き明確な純流出ではあるものの、利上げ等によって預金金利の水準が切り上がったことによって、現金や流動性預金から一部資金が流入したり、満期到来分が再び定期預金として預け入れられたりしたことで、純流出の規模がやや抑制された可能性が高い。
次に、リスク性資産等への投資フロー(時価の変動は含まない)を確認すると(図表7)、まず代表格である株式等が0.2兆円の純流出となった。7-9月期は株価が大きく下落したが、損切り目的の売りと押し目を狙った買いが交錯したことで小動きに留まったと推測される。
一方、投資信託は2.7兆円の純流入となり、純流入の規模は前年同期(2.2兆円)や一昨年同期(1.1兆円)を上回った。株価の急落や円の急伸を受けた解約も一定程度出た模様で、3四半期ぶりの低水準にはなったものの、新NISAの普及を追い風に堅調な純流入が続いている。トレンドを見るために4半期累計フローを確認した場合でも(図表9)、投資信託への資金流入拡大が顕著になっている。
さらに、その他資産では(図表10)、確定拠出年金内の投資信託(0.4兆円の純流入)で順調な純流入が続いているほか、対外証券投資(1.4兆円の純流入)の純流入が現行基準で遡れる2005年以来の過去最大を記録した。預金金利よりも金利水準が高い国債(0.7兆円の純流入)の純流入規模も約7年ぶりの高水準となっている。
7-9月期は株価の急落や円の急伸といった市場環境の激変を受けて損失が発生した家計も多かったとみられる。ただし、新NISAの普及や長引くインフレが追い風となり、家計のリスク性資産等に対する前向きな投資スタンスは途絶えていない。
3.その他注目点:家計の資金余剰は縮小、日銀の国債保有割合はやや低下

一方、家計部門の資金余剰は0.7兆円に留まり、余剰額は4-6月期(3.2兆円)やコロナ禍前の平均5を下回っている。物価上昇による実質賃金の押し下げ圧力が続く一方、7-9月に個人消費が持ち直したことが影響したと考えられる。
なお、政府部門は4.6兆円の資金不足(4.6月期は6.5兆円の資金不足)、海外部門は8.1兆円の資金不足(4-6月期は7.0兆円の資金不足)となっており、それぞれ資金不足が継続している。

最大保有者である日銀の国債保有高は9月末時点で572兆円と6月末から3兆円増加した。ただし、この間に金利上昇に伴う時価上昇が6兆円発生しているため、時価の変動を除いたベースでは保有高はやや減少している。国債買入れ額の抑制や8月からの買入れ減額開始が寄与した。この結果、日銀の保有シェアも46.7%と6月末(46.9%)をやや下回った(図表12)。日銀の保有シェアは緩やかな低下基調にある。ただし、このうち1年超の長期国債に限った場合の日銀のシェアは52.6%と、引き続き全体の過半を日銀が保有している状態となっている。
日銀は7月末に公表した計画に基づいて、今後も国債の買入れを段階的に減額していくとみられる。この場合、日銀の国債保有高は今後も減少していくことになるため、他のどの投資家がどれだけ肩代わりをしていくのかが注目される。
3 統計で遡れる2005年4-6月期以降
4 2017~19年における各四半期の平均は2.7兆円の資金余剰
5 2017~19年における各四半期の平均は4.0兆円の資金余剰
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(2024年12月18日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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