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- 日銀短観(12月調査)~景況感はほぼ横ばい、総じて「オントラック」を裏付け、日銀の利上げを後押しする内容
2024年12月13日
■要旨
- 12月短観では、注目度の高い大企業製造業で景況感の小幅な改善が示された。世界的なAI関連需要や自動車生産の回復などが追い風になったとみられる。一方、大企業非製造業では、物価高による消費マインドの低迷や気温の高止まり等が重荷となり、景況感が弱含んだ。
- 先行きの景況感は総じて悪化が示された。製造業では、トランプ米政権による関税引き上げへの警戒感が景況感に現れたと考えられる。非製造業では、人手不足の深刻化(とそれに伴う人件費上昇)や金利上昇に対する懸念などを受けて景況感が悪化した。
- 2024年度の設備投資計画(全規模)は、前年比9.7%増と上方修正された。例年12月調査では投資額が上乗せされる傾向が強いが、実態としても、投資余力が確保されるなかで、省力化・脱炭素・DX・サプライチェーン再構築等に伴う投資需要を反映した堅調な計画が維持された。ただし、年度末に向けては、工事の遅れ等に伴う計画の下方修正リスクに注意が必要になる。
- 物価関連項目は総じて高止まりし、企業による値上げ継続姿勢を示唆している。
- 今回の短観では、景況感は総じて底堅く、設備投資計画は強めとなったほか、高いインフレ予想や値上げの継続意向、強い人手不足感などが確認されたことで、日銀にとって、追加利上げの根拠となる「経済・物価が見通しに沿った経路を辿っている(オントラックにある)」との判断を後押しする材料となるだろう。ただし、そのことが即時の利上げを決定付けるわけではない。前回会合以降に円安は進んでおらず、利上げを急ぐ必要性は高まっていないうえ、政府が予算や税制改正などで景気への配慮を示す中で利上げを決めることの間の悪さもありそうだ。従って、利上げに説得力を持たせる意味でも、当面は更なる情報の蓄積、特にカギとなる来春闘での高い賃上げの実現性を見定め、高い賃上げが具体的に見込めるようになる来年1月に利上げに踏み切ると予想している。仮に円安が急速に進むようであれば、12月への前倒しも。
(2024年12月13日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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