2024年12月05日

日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の11と予想、日銀の利上げ判断を補強するか

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

文字サイズ

■要旨
 
  1. 12月短観では、注目度の高い大企業製造業で景況感の小幅な悪化が示されそうだ。この場合、昨年後半以降、景況感が一進一退の域を脱していない形になる。自動車生産の回復等が支えになったものの、中国・欧州経済の低迷などが逆風になったと考えられる。また、大企業非製造業も、物価高による消費マインドの低迷等が重荷となり、業況判断DIが前回から弱含むと予想している。
     
  2. 先行きの景況感も総じて悪化すると予想。製造業では、トランプ米次期政権による関税引き上げや米中貿易摩擦激化への警戒感が現れるだろう。非製造業では、物価高の長期化による消費の腰折れや人手不足等に対する懸念が先行きの景況感を下押しすると見ている。
     
  3. 2024年度の設備投資計画(全規模)は、前年比9.0%増と前回調査からわずかに上方修正されると予想。例年12月調査では、中小企業を中心に投資額が上乗せされる傾向が強い。さらに、実態としても、堅調な収益を背景として十分な投資余力が確保されるなかで、省力化・脱炭素・DX・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を反映した堅調な投資計画が維持されると見込んでいる。
     
  4. 日銀は今後の金融政策について、「経済・物価の見通しが想定通り実現していくとすれば、それに応じて政策金利を引き上げる」との方針を掲げていることから、今後の金融政策を見通すうえで、今回の短観の内容が全体的に見て日銀の見通しに沿った内容となるかが注目される。具体的には、業況判断DIや設備投資計画のほか、「販売価格判断DI」、「企業の予想物価上昇率」の動向が注目される。企業が来年度の賃上げ原資確保のために販売価格引き上げの勢いを維持する意向か?企業の販売価格・賃金設定にプラスの影響を与える予想物価上昇率が引き続き2%以上で推移しているか?がポイントになる。

 
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

12月短観予測:景況感は総じて弱含みも、投資は堅調、インフレ予想も不変
  ・非製造業の景況感もやや悪化
  ・設備投資計画は堅調を維持
  ・注目ポイント:販売価格の見通し・インフレ予想など
  ・日銀の利上げ判断を補強する材料に

(2024年12月05日「Weekly エコノミスト・レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の11と予想、日銀の利上げ判断を補強するか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の11と予想、日銀の利上げ判断を補強するかのレポート Topへ