2024年12月10日

2025年はどんな年? 金融市場のテーマと展望

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

文字サイズ

■要旨
 
  1. 2024年のこれまでの市場を振り返ると、長期金利は日銀による金融政策正常化の進行を受けて上昇。ドル円は乱高下したが、堅調な米国経済動向とトランプ再選を受けて円安ドル高に。日本株は米株の上昇と円安の進行などを受けて上昇している。日米金融政策や米経済の動向、トランプ氏の再選といった大型の材料を巡って市場の思惑が激しく揺れ動き、総じて不安定な展開となった一年と総括できる。
     
  2. この先2025年の市場を展望するうえで最も注目されるのは1月に発足する「トランプ政権による政策発動とその経済への影響」だが、これに加えて、「地政学リスクの動向」、「国内景気と日銀利上げの行方」、「参院選と国内政局の行方」なども注目材料となる。関税引き上げなどトランプ氏の政策が2025年の年初から一部実行されることに伴い、年後半には米国の物価上昇率が押し上げられ、FRBは年後半の利下げを見送ると想定。一方、国内では来春闘でも高い賃上げが実現し、日銀は1月と7月に追加利上げを実施すると見込む。
     
  3. 来年の相場展開を考えると、まず、日本の長期金利は日銀による段階的な利上げ継続と計画に沿った国債買入れ減額によって緩やかな上昇トレンドを辿ると見ている。1%台前半を中心に推移し、来年末の水準は1.3%台と予想している。
     
  4. ドル円については、年前半はFRBの利下げが継続される一方、日銀が利上げを実施することが円高ドル安圧力となるものの、トランプ政権による関税引き上げ、強制送還の開始を受けてインフレ再燃・FRBの利下げ停止観測が台頭し、ドルの下値を支える形となり、1ドル150円前後での推移となる。年後半には、実際に米国で物価上昇率が上振れ、FRBの利下げも見送られることがドルを支えるが、関税引き上げ等の影響が現れることで米国・世界経済の減速懸念が高まるほか、貿易摩擦激化への警戒やトランプ減税延長による米財政悪化懸念も燻ることで、やや円高に振れると見ている。来年末の水準として1ドル146円を予想している。
     
  5. 最後に、日本株については、年前半はFRBの利下げ継続に伴う米経済の下支え期待や来春闘での高い賃上げ実現による国内景気の回復期待によって上昇に向かう可能性が高いと見ている。一方、年後半には米国で関税引き上げ等の影響が現れ、FRBの利下げも見送られることで米国・世界経済の減速懸念が高まるほか、貿易摩擦激化への警戒も燻り、やや下落すると見ている。現時点では、来年末の日経平均株価として40000円前後を予想している。
■目次

1.トピック:2025年はどんな年?金融市場のテーマと展望
  ・2024年の振り返り・・・大型の材料を巡る思惑で不安定な一年に
  ・2025年はどんな年?
  ・中心的なシナリオとリスク
2.日銀金融政策(11月)
  ・(日銀)変更なし(開催なし)
  ・今後の予想
3.金融市場(11月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

(2024年12月10日「Weekly エコノミスト・レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【2025年はどんな年? 金融市場のテーマと展望】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

2025年はどんな年? 金融市場のテーマと展望のレポート Topへ