2023年12月01日

2024年はどんな年? 金融市場のテーマと展望

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 2023年のこれまでの市場を振り返ると、長期金利は利上げ長期化に伴う米金利上昇やYCCの柔軟化等を受けて上昇。ドル円は米金利が上昇するなか、日銀が大規模金融緩和を継続したことで大幅な円安ドル高に。日本株は大幅な円安と経済活動の再開を受けて大幅な上昇となった。それぞれ、米国の利上げ長期化に伴う米金利の上昇が主因となっており、今年の金融市場は「米利上げに大きく左右された一年」と総括できる。
     
  2. この先2024年の市場を展望するうえで最も注目されるのも米国の経済・物価情勢と金融政策の行方だが、これに加えて、日銀の金融政策正常化、主要国の選挙の行方なども注目材料となる。このうち、米物価上昇率は利上げの効果などによって景気が減速に向かうことなどから緩やかに低下に向かい、FRBは春に利下げを開始すると見ている。日銀の金融政策については来年4月に正常化へと舵を切ると予想している。
     
  3. 来年の相場展開を考えると、まず、長期金利は来年春に日銀のYCC撤廃とマイナス金利政策解除に伴って上昇するものの、日銀は金利の抑制姿勢を続けるとみられることや、FRBの利下げに伴って米長期金利が低下に向かうことが上昇を抑制するだろう。具体的な水準としては、一時的に1%を超える場面も想定されるものの、来年年末にかけて1%を若干下回る水準を中心に推移すると予想。
     
  4. ドル円については、米国の段階的な利下げを主因として円高ドル安に向かうと予想している。米長期金利の低下がドル安圧力になる。ただし、足元の市場は既に前のめり的に来年の速いペースでの利下げを織り込んでいるため、当面はドルが高止まりしやすいだろう。その後、春に向けて利下げが現実味をもって市場で織り込まれていくことで、ドルが緩やかに下落していくイメージだ。利下げ開始後も先々の利下げを織り込む形で米長期金利の低下が進み、緩やかなドル安基調が続くと見ている。日銀が春に金融政策の正常化に舵を切ることも円高圧力になるものの、既述の通り、日銀は金利の抑制姿勢を続けると見られるため、影響は限定的に留まる。来年末時点の水準は1ドル136円前後になると見込んでいる。
     
  5. 日本株については、年初に一旦下落する可能性が高いと見ている。FRBが政策金利を高水準で維持するなか、米景気の減速感が強まるためだ。一方、春頃からは米国の段階的な利下げに伴う米株上昇が追い風になる。円高と日銀の金融政策正常化が株価の重石になるものの、米株上昇の影響がやや上回ると見ている。現時点では、来年末時点の日経平均株価は34000円台半ばと予想している。

 
■目次

1.トピック: 2024年はどんな年?金融市場のテーマと展望
  ・2023年の振り返り・・・米利上げが市場の主役に
  ・2024年はどんな年?
  ・中心的なシナリオとリスク
2.日銀金融政策(11月)
  ・(日銀)維持(開催なし)
  ・今後の予想
3.金融市場(11月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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