2022年12月02日

2023年はどんな年? 金融市場のテーマと展望

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 2022年のこれまでの市場を振り返ると、日本株は一進一退が続いて総じて上値の重い展開となり、やや下落。ドル円は大幅な円安ドル高となった。米国で予想を大幅に上回るインフレが進み、その対応としてFRBが急速な利上げを続けたことで米金利が急上昇したことがそれぞれの主因となっている。米金利上昇からの金利上昇圧力がかかる中、日銀が日本の長期金利を強力に抑制したことが、金利差拡大を通じて円安に拍車をかけた。
     
  2. この先2023年の市場を展望するうえで最も注目されるのは、今年の市場を大きく揺るがした米国のインフレと金融政策の行方だが、これに加えて、米国景気、日銀の金融緩和、原油価格などの行方も大きな注目材料となる。米国の物価上昇率は利上げの効果によって米国が緩やかな景気後退に陥ることなどから緩やかに低下に向かい、FRBは3月に利上げを停止すると見ている。ただし、物価目標との大きな乖離が残ることから、利下げは2024年に先送りする可能性が高いだろう。日銀金融政策については来年秋に枠組み修正(実質的な緩和縮小)が行われると予想。原油価格については、需給が次第に引き締まっていくことでやや上昇すると予想している。
     
  3. ドル円については、米物価上昇率低下、利上げ停止、利下げの織り込みを受けて円高ドル安に向かうと予想している。日銀の政策修正に伴って日本の金利が小幅に上昇することも円高に働くだろう。一方で、市場は足元で米利下げを前のめり的に織り込んでいるため遠からずその修正が入り、一旦ドルが持ち直す場面が想定される。ドルが一旦持ち直し、その後利上げ停止・先々の利下げの再び織り込まれていくことで下落していくイメージだ。原油価格の持ち直しに伴って日本の貿易赤字が継続することも円高の抑制に働く。結果、緩やかな円高ドル安となり、来年末に130円弱で着地すると予想している。
     
  4. 日本株については、年初に一旦下落する可能性が高いと見ている。米利上げが継続中であるうえ、足元の市場が先々の利下げを前もって織り込みすぎていることから、その修正が入ることで米金利が一旦上昇すると見込まれるためだ。また、欧米の景気後退色が強まることも逆風になる。一方、その後は、特に年の後半になるにつれて次第に再来年初からの米利下げ開始が意識されることで、米株価の上昇を通じて日本株も上昇に向かうだろう。現時点では、来年末時点の日経平均株価は29000円台と予想している。
     
  5. なお、日本の長期金利は、既述の通り、日銀の政策修正に伴って来年秋以降に0.3%台へ上昇すると想定。日銀が引き続き各種金利抑制策を存置することで、急上昇は避けられると見ている。緩和自体は継続するため、大幅な金利上昇は日銀が許容しないはずだ。

 
■目次

1. トピック: 2023年はどんな年?金融市場のテーマと展望
  ・2022年の振り返り・・・米インフレ・利上げに翻弄
  ・2023年はどんな年?
  ・中心的なシナリオとリスク
2. 日銀金融政策(11月)
  ・(日銀)維持(開催なし)
  ・今後の予想
3. 金融市場(11月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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