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- 貸出・マネタリー統計(24年11月)~企業の定期預金シフトが顕著に、個人の動きはまだ鈍い
2024年12月11日
1.貸出動向:地銀の貸出伸び率が6カ月連続で上昇
(貸出残高)
12月9日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、11月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.27%と前月(同2.90%)から上昇した(図表1)。伸び率の上昇は5カ月ぶりで、3カ月ぶりの高い伸び率にあたる。2023年1月以降は概ね3%前後の伸びを維持しており、コロナ前の2019年(概ね2%台)を上回る増勢が続いている。原材料価格の高止まり等に伴う運転資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが寄与する形で堅調な推移が続いていると考えられる。
業態別では、都銀等の伸びが前年比3.03%(前月は2.46%)と大きく上昇したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸びも前年比3.46%(前月は3.28%)とやや上昇した(図表2)。夏場以降、都銀等の伸びは方向感を欠いているが、地銀の伸びが6カ月連続で着実に上昇し、全体の伸びの支えとなっている。
12月9日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、11月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.27%と前月(同2.90%)から上昇した(図表1)。伸び率の上昇は5カ月ぶりで、3カ月ぶりの高い伸び率にあたる。2023年1月以降は概ね3%前後の伸びを維持しており、コロナ前の2019年(概ね2%台)を上回る増勢が続いている。原材料価格の高止まり等に伴う運転資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが寄与する形で堅調な推移が続いていると考えられる。
業態別では、都銀等の伸びが前年比3.03%(前月は2.46%)と大きく上昇したほか、地銀(第2地銀を含む)の伸びも前年比3.46%(前月は3.28%)とやや上昇した(図表2)。夏場以降、都銀等の伸びは方向感を欠いているが、地銀の伸びが6カ月連続で着実に上昇し、全体の伸びの支えとなっている。
(貸出金利)
10月の新規短期貸出金利は0.579%と前月(0.753%)から低下した(図表5)。ただし、当統計は月々の振れが大きいため、3カ月移動平均で均した系列で見ると、0.59%と2019年9月以来の水準に持ち直している。日銀のマイナス金利解除(3月)、利上げ(7月)を受けてコールレートやTiborといった短期市場金利が上昇したうえ、貸出金利に直接的な影響を及ぼす短期プライムレートも殆どの銀行で9月に引き上げられたことで、金利上昇が新規貸出に波及した。
10月の新規長期貸出金利は1.146%と前月(1.051%)から上昇し、2カ月連続で1%台となった。一方、3カ月移動平均では1.04%と、春以降1%強で頭打ちが続いている。固定金利貸出に影響を与える長期の国債利回りが足元で再び上昇しているため、今後の貸出金利への波及が注目される(図表6)。
10月の新規短期貸出金利は0.579%と前月(0.753%)から低下した(図表5)。ただし、当統計は月々の振れが大きいため、3カ月移動平均で均した系列で見ると、0.59%と2019年9月以来の水準に持ち直している。日銀のマイナス金利解除(3月)、利上げ(7月)を受けてコールレートやTiborといった短期市場金利が上昇したうえ、貸出金利に直接的な影響を及ぼす短期プライムレートも殆どの銀行で9月に引き上げられたことで、金利上昇が新規貸出に波及した。
10月の新規長期貸出金利は1.146%と前月(1.051%)から上昇し、2カ月連続で1%台となった。一方、3カ月移動平均では1.04%と、春以降1%強で頭打ちが続いている。固定金利貸出に影響を与える長期の国債利回りが足元で再び上昇しているため、今後の貸出金利への波及が注目される(図表6)。
2.マネタリーベース:国債買入れ減額を受けて前年割れが定着
12月3日に発表された11月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比▲0.3%と、前月(同▲0.3%)から横ばいとなり、3ヵ月連続での前年割れとなった(図表7)。
そして、前年割れの主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の前年割れである。金融政策正常化の一環として、日銀が8月から資金供給要因である長期国債買入れの減額を開始したことが日銀当座預金の伸び率押し下げに働いている(図表9)。
さらに、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.4%(前月も▲1.4%)、日銀券発行高の伸び率が同▲1.0%(前月も▲1.0%)と現金の伸びがともにマイナス圏で低迷していることも(図表7)、マネタリーベースの前年割れに繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、11月のマネタリーベースは前月比4.3兆円増と、ここ数カ月は小幅なプラスが続いている(図表10)。
今後も資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進められることで、マネタリーベースはじわりと減少幅を広げていくと見込まれる。
そして、前年割れの主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の前年割れである。金融政策正常化の一環として、日銀が8月から資金供給要因である長期国債買入れの減額を開始したことが日銀当座預金の伸び率押し下げに働いている(図表9)。
さらに、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.4%(前月も▲1.4%)、日銀券発行高の伸び率が同▲1.0%(前月も▲1.0%)と現金の伸びがともにマイナス圏で低迷していることも(図表7)、マネタリーベースの前年割れに繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、11月のマネタリーベースは前月比4.3兆円増と、ここ数カ月は小幅なプラスが続いている(図表10)。
今後も資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進められることで、マネタリーベースはじわりと減少幅を広げていくと見込まれる。
3.マネーストック:企業の定期預金シフトが顕著に
12月10日に発表された11月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比1.22%(前月は1.19%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同0.72%(前月は0.68%)と、ともにやや上昇した(図表11)。M2・M3ともに、伸び率の上昇は8カ月ぶりとなる。
ただし、通貨量の伸びは2021年以降、低下基調を辿っている。貸出(による信用創造)は堅調に推移しているものの、財政赤字縮小や貿易赤字継続、家計の貯蓄率低下・リスク性資産への資金シフトなどが影響しているとみられる。
M3の内訳では、8カ月連続で最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月2.0%→当月1.8%)の伸びが低下し、全体の伸び率を押し下げた。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲2.5%→当月▲2.6%)のマイナス幅も拡大し、全体の伸び率低下に繋がった(図表12)。
一方、主に定期預金を意味する準通貨の伸びは前年比0.6%(前月は同0.2%)と2カ月連続でプラスとなった。判明している10月までの内訳では一般法人(企業)の伸びが前年比13.1%と大きく伸びている(図表13)。その反面、一般法人の預金通貨(普通預金など)は前年比▲0.2%と前年割れとなっている。すなわち、企業では普通・当座預金から定期預金へのシフトが顕著になっている。
日銀による金融政策正常化の進捗を受けて、多くの銀行が預金金利の段階的な引き上げに動いた結果(図表14)、従来はほぼゼロであった普通預金と定期預金の金利差が徐々に広がってきている。企業は、それぞれまとまった規模の預金を有するうえ、投資家などから常に利益の拡大を求められる立場にあるため、より多くの金利収入が得られる定期預金へと余裕資金をシフトさせていると考えられる。
一方、個人の準通貨については、10月時点で前年比▲3.6%と、マイナス幅がやや縮小ぎみとはいえ、依然大幅なマイナスが続いている。家計では、物価上昇のあおりを受けて、企業ほど資金余剰が発生していない中で、NISAによる証券運用や(定期預金よりも金利の高い)個人向け国債等へ一部資金がシフトしているためと考えられる。普通預金に資金を待機させながら、さらなる定期預金金利引き上げを待っている家計もあるかもしれない。
ただし、通貨量の伸びは2021年以降、低下基調を辿っている。貸出(による信用創造)は堅調に推移しているものの、財政赤字縮小や貿易赤字継続、家計の貯蓄率低下・リスク性資産への資金シフトなどが影響しているとみられる。
M3の内訳では、8カ月連続で最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月2.0%→当月1.8%)の伸びが低下し、全体の伸び率を押し下げた。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲2.5%→当月▲2.6%)のマイナス幅も拡大し、全体の伸び率低下に繋がった(図表12)。
一方、主に定期預金を意味する準通貨の伸びは前年比0.6%(前月は同0.2%)と2カ月連続でプラスとなった。判明している10月までの内訳では一般法人(企業)の伸びが前年比13.1%と大きく伸びている(図表13)。その反面、一般法人の預金通貨(普通預金など)は前年比▲0.2%と前年割れとなっている。すなわち、企業では普通・当座預金から定期預金へのシフトが顕著になっている。
日銀による金融政策正常化の進捗を受けて、多くの銀行が預金金利の段階的な引き上げに動いた結果(図表14)、従来はほぼゼロであった普通預金と定期預金の金利差が徐々に広がってきている。企業は、それぞれまとまった規模の預金を有するうえ、投資家などから常に利益の拡大を求められる立場にあるため、より多くの金利収入が得られる定期預金へと余裕資金をシフトさせていると考えられる。
一方、個人の準通貨については、10月時点で前年比▲3.6%と、マイナス幅がやや縮小ぎみとはいえ、依然大幅なマイナスが続いている。家計では、物価上昇のあおりを受けて、企業ほど資金余剰が発生していない中で、NISAによる証券運用や(定期預金よりも金利の高い)個人向け国債等へ一部資金がシフトしているためと考えられる。普通預金に資金を待機させながら、さらなる定期預金金利引き上げを待っている家計もあるかもしれない。
広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比3.21%(前月は3.15%)とやや上昇した(図表11)。伸び率の水準も3%台を維持しており、M2・M3を大きく上回っている。
内訳では、既述の通り、M3の伸びがやや上昇したほか、国債(前月27.3%→当月28.1%)の伸び率上昇、投資信託(私募やREITなどを含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲7.6%→当月▲7.1%)のマイナス幅縮小などが寄与した。また、規模の大きい金銭の信託(前月14.4%→当月14.4%)が高い伸びを維持し、広義流動性全体を底上げしている。
内訳では、既述の通り、M3の伸びがやや上昇したほか、国債(前月27.3%→当月28.1%)の伸び率上昇、投資信託(私募やREITなどを含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲7.6%→当月▲7.1%)のマイナス幅縮小などが寄与した。また、規模の大きい金銭の信託(前月14.4%→当月14.4%)が高い伸びを維持し、広義流動性全体を底上げしている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年12月11日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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