2024年12月17日

トランプ政権発足を受けて、円相場はどう動く?~マーケット・カルテ1月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 今月月初に1ドル150円台でスタートしたドル円は、中旬に水準を切り上げ、足元では153円台後半まで円安が進んでいる。中国政府による景気刺激策への期待からリスクオン(選好)の円売りが見られたほか、米物価指標の上振れによるFRBの利下げ鈍化懸念、日銀の12月利上げ見送り観測がそれぞれ円安ドル高に働いたためだ。

今後3カ月間を見通した場合、FRBが引き続き中立金利に向けた利下げプロセスを継続する一方、日銀は0.50%への追加利上げに踏み切ると見込まれ、日米金利差の縮小が円高ドル安に作用するだろう。ただし、1月20日に米国で発足するトランプ次期政権は早い段階でそれぞれインフレ促進的な要素を内包する「関税の一部引き上げ」と「不法移民の強制送還」を開始すると予想される。このため、市場では、米国のインフレ再燃に伴うFRBの利下げ停止観測が燻ることとなり、ドルの下値を支えると見ている。結果的にドル円はやや円高ドル安に振れるものの、水準は高止まりし、3カ月後の水準は1ドル150円台になると想定している。

ただし、1月下旬以降の相場展開については、トランプ次期政権が「どの政策を」、「どのタイミングで」、「どのレベルで」発動するかによって大きく変わり得る。つまり、トランプ次期大統領の出方次第の側面が強いわけだが、同氏の言動は予測困難であり、市場参加者の思惑も振れやすくなるだけに、ドル円の予想は幅を持って見ておきたい。

月初1.0%台後半でスタートした長期金利は、足元も横ばい圏の1.0%台後半で推移している。観測報道等を受けた日銀の12月利上げ観測後退が金利低下に働く一方で、米物価指標の上振れ等に伴うFRBの利下げペース鈍化懸念が金利上昇に作用し、上方・下方圧力が交錯したためだ。

今後3カ月間を見通した場合、FRBの利下げ実施が金利低下圧力となるものの、トランプ政権の政策発動によってFRBの利下げ停止観測が燻ることで影響は限定的になりそうだ。一方、日銀による追加利上げと段階的な国債買入れ減額が金利上昇圧力となるため、3ヵ月後は1.1%台にやや水準を切り上げると予想している。
 
(執筆時点:2024/12/17)

(2024年12月17日「基礎研マンスリー」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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