2024年12月17日

新NISAは日本株式を押し上げたのか

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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1――新NISAから日本株式への流入は?

2024年の日本株式は年初から上昇し、7月上旬に日経平均株価、TOPIXが史上最高値を約更新した【図表1】。その後は方向感の乏しい展開となっているが、日経平均株価、TOPIXともに年初来の上昇率が15%以上で推移しており、高値を維持し年末を迎えそうである。
【図表1】 日経平均株価とTOPIXの推移
2024年は、少額投資非課税制度(NISA)が新NISAとして、大幅に制度拡充されて生まれ変わった。年間の投資枠が、これまでと比べて倍以上に増えた。それに伴って、NISA口座からの買付が投資信託、上場株式ともに大幅に増えている【図表2】。この新NISAからの買付が日本株式を押し上げたようにも見えるが、投信市場や日本株式市場を見ると、2024年に入ってから個人の資金が日本株式に向かう動きは限定的であった。
【図表2】 NISA口座における商品別買付額

2――投資信託経由は増えているが限定的

2――投資信託経由は増えているが限定的

まず、主に日本株式で運用している新NISA対象の投資信託の売買動向を見ると、2024年もそれ以前と同様に株価の変動に合わせて売買される傾向があった。インデックス型を中心に日本株式が上昇すると売却が膨らみ、下落すると買付が膨らんでおり、買付が顕著に増えている様子は見られなかった【図表3】。
【図表3】 主に日本株式で運用している新NISA対象投資信託の設定額と解約額
ただし、一部で変化の兆しが見られた。多少は、新NISAによって買付が増えている可能性もありそうである。例えば2024年は設定額が、指数に連動するいわゆるインデックス型だと1,500億円、全体だと3,000億円を上回り続けている。2023年以前は、インデックス型だと1,000億円未満、全体だと2,000億円を下回っている月があった。買付が少ない月の水準が、2024年に入ってから切りあがっている。また、2024年は利益確定売りが出やすい環境であり、以前なら売却超過に陥ってもおかしくなかったが、11月までで1.2兆円買い越されている。特に1月から3月は、日本株式が大きく上昇した割に買付が多かった。

3――個別銘柄は売り越し

3――個別銘柄は売り越し

次に個人の日本株式の売買を、NISA口座から信用取引ができないため現金取引で見ると、11月までの月間で買い越されたのは4月のみであった【図表4】。2024年に入ってからの売り越しの累計額は、6月までだと3.2兆円、さらに11月までだと5.6兆円に膨らんでいる。ただし、2024年が非常に売られやすい投資環境だったため、NISA口座からの買付が増えたことによって、これくらいの売り越しで収まったと見ることもできる。
【図表4】 二市場(東証・名証)の個人の株式売買の推移
そこで、一般NISAが始まった2014年からの日経平均株価の月間騰落率と個人の現金での株式売買の関係を見た【図表5】。日経平均株価が上昇すると売り越され、下落すると買い越される逆張り投資の傾向があるが、2024年も2014年から2023年と同じような傾向になっていた。つまり、過去10年と比べて買付が増えている様子は見られなかった。
【図表5】 個人の株式売買(縦軸)と日経平均株価の騰落率(横軸)

(2024年12月17日「基礎研レポート」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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