2024年12月16日

図表でみる世界のGDP-日本が置かれている現状と世界のトレンド

三尾 幸吉郎

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1――日本が置かれている現状

GDP(国内総生産)は世界の勢力図を概観する上で最も重要な指標と言って良いだろう。GDPが大きければ、それ自体で関係各国への経済的な影響力は大きくなるし、国家の防衛予算を決めるに際してもGDP比を参考にするため、軍事力もGDPの大きさに比例する面がある。国家の研究開発費を決めるに際しても同様に、GDP比を参考にするため、科学技術力もGDPの大きさに応じて決まる面がある。

国際通貨基金(IMF)が公表した予測値を見ると、日本の2024年のGDPは約4兆ドルで、世界におけるシェアはじりじりと低下してきており、現在は3.7%となっている(図表-1)。米国は約29兆ドル(シェア26.5%)と上昇傾向を維持しており、2010年に日本を上回った中国は約18兆ドルと日本の約4.5倍になったものの、そのシェアは2021年をピークに低下し始めており、現在は16.6%となっている。そして日本が置かれている経済、軍事、科学技術の環境はそれに応じて変化してきている。

他方、GDPを人口で割り算した一人当たりGDPを見ると(図表-2)、日本は中国と比べると2.5倍くらいの水準にあるが、米国と比べると4割弱にとどまる。10年余り前までは、日本と米国がほぼ同水準で推移していたので、この10年ほどの間に日米の豊かさに大きな変化があったことがわかる。
(図表-1)世界と日本のGDP(米ドルベース)/(図表-2)日米中の一人当たりGDP(米ドルベース)

2――国・地域別に見たランキング

2――国・地域別に見たランキング

ここで世界各国・地域のGDPをランキング形式で確認してみよう(図表-3)。最初に左の列に掲載したGDP(米ドルベース)のランキングを見ると、1位は米国、2位は中国、3位はドイツで、日本は4位となっている。次に中央列に掲載した一人当たりGDP(米ドルベース)のランキングに目を転じると、ここもとの円安もあって、日本は主要先進国(G7)の中で最下位の39位にとどまっている。GDPを人口で割り算しているため、人口の少ない国・地域が上位に来る傾向があるとは言え、韓国や台湾よりも下に位置している。

最後に右の列に掲載したGDP(国際ドルベース)のランキングを確認しておこう。国際ドルとは、ある基準年において米ドルが持っていたのと同じ購買力平価を示す仮想的な通貨単位のことで、誤解を恐れずに言えば、米国でビッグマックを買うと1ドルのとき、日本でビッグマックを買うと150円なら、1国際ドル=150円という風に計算するものである。その国際ドルベースのGDPランキングを見ると、1位は中国、2位は米国、3位はインド、4位はロシアで、日本は5位である。中国、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカといった新興国・途上国のシェアが米ドルベースよりも大きくなる一方、米国、日本、ドイツ、フランス、英国、イタリア、カナダといった先進国のシェアは小さくなる。
(図表-3)国・地域別のGDPランキング(2024年、予想値)

3――G7とBRICSプラスの比較

3――G7とBRICSプラスの比較

最後に、世界で指導的立場にある主要先進国(G7)と、ここもと世界で存在感を高めつつある主要途上国(BRICSプラス)のGDPを比較してみよう。まず米ドルベースで見たGDPのシェアを見ると(図表-4)、G7のシェアは四半世紀前(2000年)には約65%だったが、2024年(予測値)には44.8%まで低下している。一方、BRICSプラスのシェアは約10%から25.8%まで上昇した。次に国際ドルベースを見ると(図表-5)、四半世紀前(2000年)に約45%だったG7のシェアは2024年(予測値)に29.1%まで低下した。一方、BRICSプラスのシェアは約20%から36.4%に上昇、G7を上回っている。

両者が異なる背景には、BRICSプラスの通貨が購買力平価より概ね割安なことがある。それがBRICSプラスにとっては、輸出競争力を高めたり、観光業を振興したりする利点があるのに加えて、G7にとっても輸入価格を押し下げ、インフレを抑制する利点があるため、ある種の均衡状態となっているのだ。ただし、BRICSプラスにとっては、G7からの輸入品が値上がりしインフレ気味になるという欠点もあり、G7にとっても、輸出品の値上がりで競争力を失い、製造業が衰退するという欠点もある。したがって、こうした欠点の方に世界の注目が集まる展開になった場合、1985年に起きたプラザ合意のような通貨の水準訂正が起きる可能性があると見ておくべきだろう。特に米国で次期大統領に就任するトランプ氏は、「製造大国の復活」を公言しているだけに、今後の成り行きを注視していきたい。
(図表-4)世界のGDP(米ドルベース)・世界のGDP(米ドル)/(図表-5)世界のGDP(国際ドル)・世界のGDP(国際ドル)
 
 

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(2024年12月16日「基礎研レター」)

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三尾 幸吉郎

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