- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険会社経営 >
- 生成AIと保険-保険事業に、生成AIをどう活用できるか?
生成AIと保険-保険事業に、生成AIをどう活用できるか?
基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.333]

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1―はじめに
2―保険事業への生成AIの活用
生成AIにより、データソースを拡大して顧客のニーズを反映した商品の開発が可能となる。例えば、AIにより保険市場での消費者トレンドを分析し、商品開発を行うことが挙げられる。その際、サイバー空間上のデータを利用する可能性もある。生成AIの大規模言語モデル(LLM)を用いて、保険契約の加入条件や制約事項を起草したり、アクチュアリーが保険料を設定したりすることも考えられる。
生成Alの活用により、どの顧客にどの商品、チャネルで、どのようなメッセージを示すことが最適かといった、効果的なアプローチ方法を提案できる。営業フロントとバックオフィス、チャネル間の情報連携の向上にも生成AIの寄与が期待される。例えば、営業職員に対して顧客へのアプローチ方法を細かく提案する、電話応対中のオペレーターにリアルタイムで最善の返答案を提案する等が挙げられる。その際、過去のやり取りや、顧客の感情分析等が提案生成に組み込まれる。
保険会社は、保険の引受査定に生成AIを活用して、その迅速化を図っている。外部のビッグデータを用いて引受可否を判断したり、引受時の詐欺行為を検出したりすることが始められている。また、給付査定のパターンを分析して、それを他の類似した引受査定の改善に活用する取り組みも行われている。
給付支払には、従来よりAIの活用が推進されてきた。例えば、給付請求の自動評価、損害程度の判断、査定評価文書の即時作成などで、AIが活用されている。支払処理を自動で行うか、担当職員の手動で行うか。処理に際して、顧客からどのような情報を収受するか等を判断する「自動給付支払分類」も始まっている。
また、自己学習詐欺モデルや給付データ分析など、AIによる給付金詐欺の検出も進められている。その際IoT(モノのインターネット)とLLMを用いて、画像やメールからのデータ抽出も行われている。
さらに、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)のツールや3Dモデリング手法により被害を視覚化して、損害程度の判断をスムーズに行う。AIでの書類スキャンと関連情報の取得により給付支払登録を効率化する、など作業の簡素化も進められている。
契約者向けサービスにも生成AIが活用されている。チャットボットやアプリなどによる問い合わせにLLMを用いて自動で応答。顧客が契約内容を確認したり、給付請求を送信したり、各種情報をやり取りしたりできる会話型インターフェイスの導入。音声のテキスト変換や、メールのパーソナル化(送信メールの内容を契約者の好みや行動に応じてカスタマイズ)によるサービスの個別化等である。
財務管理についても、生成AIが活用されている。リアルタイムで財務を予測。諸規制の動向を監視して、対応が必要な場合にはアラートを発信。市場動向に応じて常に変化する財務のKPI(重要業績評価指標)やKRI(重要リスク指標)の状況をモニタリングし、必要時にはシナリオテストを実行する、等が挙げられる。再保険のリスク分析を自動で行うことも進められている。ALMに関しては、経済関連のニュースを監視してポートフォリオの調整・ヘッジを行ったり、市場動向の自動モニタリングを進めたり、市場レポートの要約を作成したり、戦略的資産配分(SAA)と戦術的資産配分(TAA)の最適化を図ったりする取り組みが挙げられる。
3―生成AIが抱える課題とその解決
また、生成AIの運用には、データセンターの消費電力など膨大なエネルギーが必要となる。化石エネルギーが大量消費されれば、地球温暖化の原因ともなりかねない。こうした気候変動問題への対応も今後進められるものと予想される。
(参考文献)“What should an actuary know about artificial intelligence?” (AAE, Jan. 2024)“A Primer on Generative AI for Actuaries”(SOA Research Institute, Feb. 2024)
(2024年12月06日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/28 | リスクアバースの原因-やり直しがきかないとリスクはとれない | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/22 | 審査の差の定量化-審査のブレはどれくらい? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/15 | 患者数:入院は減少、外来は増加-2023年の「患者調査」にコロナ禍の影響はどうあらわれたか? | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
2025/04/08 | センチネル効果の活用-監視されていると行動が改善する? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【生成AIと保険-保険事業に、生成AIをどう活用できるか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
生成AIと保険-保険事業に、生成AIをどう活用できるか?のレポート Topへ