2024年12月02日

宿泊旅行統計調査2024年10月~日本人延べ宿泊者数は6ヵ月ぶりに前年比プラス~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.日本人延べ宿泊者数は6ヵ月ぶりに前年比プラス

観光庁が11月29日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2024年10月の延べ宿泊者数は6,011万人泊(9月:5,371万人泊)、前年同月比7.1(9月:同2.9%)、2019年比20.1%(9月:同10.1%)となった。2ヵ月連続で2019年比二桁の高い伸びとなった。

2024年10月の日本人延べ宿泊者数は4,481万人泊(9月:4,133万人泊)となった。2019年同月比では12.6%(9月:同2.0%)と大幅に伸びを高め、コロナ禍以降初めての二桁の伸びとなった。ただし、2019年10月に消費税増税によって宿泊者数が落ち込んだため、その反動で高い伸びとなった面もある。前年比では2.8%(9月:▲1.8%)と6ヵ月ぶりのプラスと、物価高の向かい風を受けながらも持ち直した。2024年10月の外国人延べ宿泊者数は1,529万人泊(9月:1,238万人泊)、2019年同月比は49.0%(9月:同49.8%)、前年比は22.4%(9月:同22.7%)となった。円安の追い風を受けて、外国人延べ宿泊者数は好調を続けており、延べ宿泊者数全体を押し上げている。
延べ宿泊者数の推移/日本人延べ宿泊者数の推移
客室稼働率の推移 2024年10月の客室稼働率は全体で66.1%(9月:同62.0%)、2019年同月差は2.5%(9月:同▲1.4%)と、コロナ禍以降、初めてプラスとなった。ただし、これについても2019年10月の消費税増税が影響している可能性がある。前年同月差では4.2%(9月:同2.3%)とプラスで推移している。宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は40.9%、2019年同月差1.4%(9月:同▲1.1%)、リゾートホテルは61.0%、2019年同月差3.2%(9月:同▲3.5%)、ビジネスホテルは80.0%、2019年同月差2.7%(9月:同▲0.7%)、シティホテルは77.5%、2019年同月差▲3.1%(9月:同▲7.7%)、簡易宿所は34.1%、2019年同月差1.4%(9月:同▲4.6%)であった。シティホテルで2019年同月差がマイナスとなったが、旅館、リゾートホテル、ビジネスホテル、簡易宿所ではプラスとなった。また、前年同月差をみると、旅館が前年同月差0.5%、リゾートホテルが同4.0%、ビジネスホテルが同5.4%、シティホテルが同2.4%、簡易宿所が同7.6%といずれもプラスとなった。

2.延べ宿泊者数は三大都市圏を中心に回復

速報より1ヵ月遅れて公表される都道府県別の延べ宿泊者数をみると、9月は東京都が2019年比33.8%、愛知県が同14.7%、大阪府が同18.7%と回復している一方、それ以外の地方では2019年比マイナスや一桁の伸びとなっている地域が多く、回復に差がみられる。
都道府県別延べ宿泊者数(2024年9月)
9月の外国人延べ宿泊者数をみると、東京都は2019年比89.3%、大阪府49.0%と大幅に増加した結果、三大都市圏1では同56.6%の高い伸びとなった。しかし、地方では2019年比36.1%と三大都市圏に比べると増加幅は小さい。

外国人延べ宿泊者数は大都市圏を中心に全体を押し上げている。今後も大都市へ外国人宿泊者が集中する傾向は継続することが予想される。
 
1 三大都市圏とは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県をいう

3.中国人延べ宿泊者数が持ち直し

外国人宿泊者数の推移 外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2024年10月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲9.0%(9月:同▲13.1%)と、マイナス幅が縮小している。10月の訪日中国人数は2019年比▲20.2%だが、中国人旅行者の宿泊日数が増加したことで、延べ宿泊者数は訪日外客数を上回る速度で回復している。

中国では消費が弱い動きになっていることから、中国人延べ宿泊者数が停滞するリスクはあるが、コロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって、外国人延べ宿泊者数は増加を続けることが予想される。日本人延べ宿泊者数は今回、2019年比二桁の高い伸びとなったが、これは、2019年10月に消費税増税によって宿泊者数が落ち込んだ反動もある。日本人の旅行需要は引き続き、物価高の向かい風を受けて横ばい圏内での推移が見込まれるため、今後の日本全体の旅行需要はインバウンド需要に左右されるだろう。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年12月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

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