2024年11月26日

ニッセイ景況アンケート調査結果-全国調査結果 2024年度調査(2024年9月)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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調査結果のポイント

◆ 景況感は製造業で小幅に悪化したが、非製造業で改善したことで、改善。
一方、先行きは製造業で改善するものの、非製造業で悪化することから、小幅な悪化を見込む。

◆ 現在の経営課題は「原材料・人件費の増加」が前回から引き続き最多に。
次いで「人員の不足」が続いた。特に、1,000名超、300名超1,000名以下の企業で深刻な人手不足が続いている。

◆ 「人的資本経営」の取組みについて、「取組みを開始している」は13.4%、「取組みを検討し始めている」は28.0%と、着手している企業は4割。
一方、「人的資本経営という言葉を知らない」が25.9%と、企業による差が大きい。
規模別には、1,000名超企業で7割、300名超1,000以下の企業で6割、300名以下企業でも4割が着手。着手している割合は規模が大きいほど高い。


今回調査が行われた24年6月下旬~9月下旬は、物価高による逆風を受けながらも、賃上げの進展により、個人消費は緩やかに持ち直す中、円安の後押しを受けてインバウンド需要が好調となり、景気は緩やかに回復した。前回調査の23年7月上旬~10月上旬は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ引き下げられたことを背景として、個人消費を中心に景気が回復へ向かったことから、今回調査では景況感を中心に多くの項目で改善が続いていることが確認された。


調査結果要旨

I.景気動向
1.企業の景況感は非製造業を中心に改善、先行きは小幅な悪化を見込む
2.景況感は7地域で改善、2地域で悪化
3.23年度は増収増益、24年度は増益傾向が弱まる見通し

II.雇用、設備投資、販売・仕入価格
1.先行きは雇用意欲が一段と強まる見通し
2.24年度は設備投資の増勢が鈍化
3.業況の悪い企業においても販売価格の上昇傾向続く

III.経営課題・問題点
1.現在の経営課題は「原材料・人件費の増加」が前回から引き続き最多に
2.24年度はおよそ8割の企業が賃上げを実施
3.今後10年間で重要性を増す経営課題は「人材確保・育成」が64.9%で最多

IV.企業の人事労務管理の現状と課題
1.今後拡充させたい福利厚生制度
~今後拡充させたい福利厚生制度は、「人間ドックなど法定外の健康診断補助」(24.1%)、「メンタルヘルス対策」(21.1%)、「社内コミュニケーション促進施策」(17.9%)が上位3位~
~「人間ドックなど法定外の健康診断補助」を拡充させたい企業の割合は300名以下、非製造業、九州・沖縄が高い~
~「メンタルヘルス対策」を拡充させたい企業の割合は1,000名超、製造業、東海が高い~
~「社内コミュニケーション促進施策」を拡充させたい企業の割合は300名超1,000名以下、製造業、甲信越・北陸が高い~
~2024年4月に従業員数を「増やした」企業が、今後「拡充させたい」福利厚生制度は、「メンタルヘルス対策」、「人間ドックなど法定外の健康診断補助」、「社内コミュニケーション促進施策」、「自己啓発支援」が上位4位~

2.人事・労務戦略において重点的に取組んでいること
~人事・労務戦略において重点的に取組んでいることは、「人材の育成・能力開発」、「従業員の定着」、「優秀な人材の登用」が上位3位~
~「人材の育成・能力開発」を重点的に取組んでいる企業の割合は、1,000名超、製造業、甲信越・北陸が高い~
~「従業員の定着」を重点的に取組んでいる企業の割合は、300名超1,000名以下、非製造業、北海道が高い~
~「優秀な人材の登用」を重点的に取組んでいる企業の割合は、1,000名超、製造業、北海道が高い~

3.人事・労務上の課題
~「人事・労務上の課題」は、「労働時間の削減やWLBの実施」、「評価システムの整備」、「70歳までの延長雇用における環境整備」が上位3位~
~人事・労務上の課題が、「労働時間の削減やWLBの実施」であると回答した企業の割合は、1,000名超、非製造業、北海道が高い~
~人事・労務上の課題が、「評価システムの整備」であると回答した企業の   割合は、300名超1,000名以下、製造業、甲信越・北陸が高い~
~人事・労務上の課題が、「70歳までの延長雇用における環境整備」であると  回答した企業の割合は、1,000名超、製造業、東北が高い~
V.人的資本経営の導入実態

1.調査の背景

2.人的資本経営の認知・取組み実施の実態
~「人的資本経営」を意識した人材の活用を開始している割合は約13.4%。41.4%が着手している一方で「『人的資本経営』という言葉を知らない」も25.9%。
~企業の規模別では、規模の大きい企業で取組みを開始
~地域別では、東海地方で「着手している」の割合が高い
~事業展開についての興味・関心別では、「海外展開の強化」「株式上場」に興味・関心がある企業で、行動をおこしている割合が特に高い
~「取り組めていない」「取り組むつもりがない」理由は、ノウハウやリソースの不足が多い。その他、能力の見極めや「人材=資本」という考えの浸透の難しさなど

3.人材活用における課題
~人材の活用に向けた最大の課題は「人材の採用、人材の定着」次いで「従業員の育成、スキル向上」
~地域別では、北海道地方、甲信越・北陸地方で「人材の採用、人材の定着」が、東北地方と甲信越・北陸地方で「従業員の育成、スキル向上」「役割や業績に見合った人事制度・報酬」が全体と比べて高い
~「人的資本経営」の認知・実施状況別に、人材活用における課題は異なる

4.結果のまとめと得られた示唆

(2024年11月26日「ニッセイ景況アンケート」)

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