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- 2024~2026年度経済見通し(24年11月)
2024年11月18日
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(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)はコロナ禍以降、様々な政策の影響を受けており、基調が見極めにくくなっている。
コロナ禍以降の消費者物価に影響を与えた政策としては、旅行需要の喚起を目的とした「Go To トラベル事業(2020年7月~12月)」、「全国旅行支援(2022年10月~2023年7月)」、物価高対策として実施された「ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置(2022年1月~)」、「電気・ガス価格激変緩和対策(2023年2月2~)」が挙げられる。これらの政策は実施時には消費者物価の前年比上昇率を押し下げる一方、政策一巡後には押し上げる方向に働く。
これらの政策によるコアCPI上昇率への影響を試算すると、2022年1月から約2年間にわたって押し下げ要因となっていたが、電気・都市ガス代の値引き額の縮小や政策の一時停止などにより、2024年2月以降は押し上げ要因となっている。なお、「電気・ガス価格激変緩和対策」は2024年5月使用分(6月請求分)でいったん終了した後、8月~10月使用分について「酷暑乗り切り緊急支援」が開始されたが、前年同月に比べて値引き額が縮小していることなどから、政策要因はコアCPIの前年比上昇率を押し上げる方向に働いている。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)はコロナ禍以降、様々な政策の影響を受けており、基調が見極めにくくなっている。
コロナ禍以降の消費者物価に影響を与えた政策としては、旅行需要の喚起を目的とした「Go To トラベル事業(2020年7月~12月)」、「全国旅行支援(2022年10月~2023年7月)」、物価高対策として実施された「ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置(2022年1月~)」、「電気・ガス価格激変緩和対策(2023年2月2~)」が挙げられる。これらの政策は実施時には消費者物価の前年比上昇率を押し下げる一方、政策一巡後には押し上げる方向に働く。
これらの政策によるコアCPI上昇率への影響を試算すると、2022年1月から約2年間にわたって押し下げ要因となっていたが、電気・都市ガス代の値引き額の縮小や政策の一時停止などにより、2024年2月以降は押し上げ要因となっている。なお、「電気・ガス価格激変緩和対策」は2024年5月使用分(6月請求分)でいったん終了した後、8月~10月使用分について「酷暑乗り切り緊急支援」が開始されたが、前年同月に比べて値引き額が縮小していることなどから、政策要因はコアCPIの前年比上昇率を押し上げる方向に働いている。
コアCPI上昇率は2023年1月の前年比4.2%をピークとして大きく鈍化し、2023年9月以降は2%台で推移しているが、種々の政策がなければ、ピークは2022年12月の4.7%で、2022年10月~2023年4月まで7ヵ月にわたって4%台の高い伸びを続けていたと試算される3。一方、政策要因を除いたコアCPI上昇率はピーク時からの鈍化ペースが公表値よりも速い。公表値のコアCPI上昇率は2022年4月から2年半にわたり2%を上回っているが、政策要因を除いたコアCPI上昇率は2024年9月には1.8%と2%を割り込んでいる。消費者物価上昇率は様々な政策によって振れの大きな展開が続いているが、基調としては鈍化傾向が続いていると判断される。コアCPI上昇率は、先行きについても政策に左右されるだろう。現時点では、電気・都市ガス代の支援策は2024年10月使用分(11月請求分)まで、ガソリン、灯油等の激変緩和策は2024年末までとなっているが、11月中に策定される経済対策では、電気・都市ガス代の支援策の再開、ガソリン、灯油等の激変緩和策の延長が決まる公算が大きい。
今回の見通しでは、電気・都市ガス代の支援策は2025年1月使用分(2月請求分)に再開した後、3月使用分から値引き額を縮小した上で、2025年8月使用分(9月請求分)まで継続、ガソリン、灯油等の激変緩和策は補助金を段階的に縮小し、2024年12月から2ヵ月かけて価格上限を現在の175円から185円に引き上げられた後、終了すると想定した。
コアCPI上昇率は足もとの2%台前半から、「酷暑乗り切り緊急支援」終了後の2024年12月に3%程度まで急速に高まった後、電気・都市ガス代の支援策再開が見込まれる2025年2月以降は伸びが鈍化するだろう。ただし、電気・都市ガス代の値引き額は2024年夏に比べて小さいこと、ガソリン、灯油等の補助金額が縮減することから、エネルギー価格の上昇率は2024年末から2025年初にかけて加速する。このため、コアCPI上昇率は当面2%台の推移が続き、円高による財価格の上昇率鈍化を主因として日銀の物価目標である2%を割り込むのは2025年度後半と予想する。
財価格は政策要因でエネルギーを中心に振れの大きい動きが続いているが、先行きについては円高の進行に伴う輸入物価の低下を受けて、徐々に伸びが鈍化することが見込まれる。
財価格は政策要因でエネルギーを中心に振れの大きい動きが続いているが、先行きについては円高の進行に伴う輸入物価の低下を受けて、徐々に伸びが鈍化することが見込まれる。
一方、サービス価格は2023年後半以降、2%台前半の伸びが続いていたが、2024年度入り後は1%台半ばまで伸びが鈍化している。しかし、高水準の賃上げ率は2025年以降も継続する見込みであり、人件費増加に伴うコスト増が価格転嫁されることにより、サービス価格の上昇ペースは再び加速する可能性が高い。2025年度から2026年度にかけては消費者物価上昇率への寄与度はサービスが財を上回るだろう。コアCPIは、2023年度の前年比2.8%の後、2024年度が同2.6%、2025年度が同2.0%、2026年度が同1.7%、コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は2023年度の前年比3.9%の後、2024年度が同2.3%、2025年度が2.0%、2026年度が1.7%と予想する。
2 同対策は2023年1月に開始されたが、消費者物価指数に反映されるのは請求月の2023年2月からとなる
3 公表値のコアCPI上昇率が4%台となったのは、2022年12月、2023年1月の2ヵ月のみ
本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年11月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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