2024年10月17日

貿易統計24年9月-7-9月期の外需寄与度は前期比0.2%程度のプラスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出の低迷が続く

財務省が10月17日に公表した貿易統計によると、24年9月の貿易収支は▲2,943億円の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲2,121億円、当社予想は719億円)通りの結果となった。輸出が前年比▲1.7%(8月:同5.5%)と10ヵ月ぶりの減少となる一方、輸入が前年比2.1%(8月:同2.3%)と増加を維持したため、貿易収支は前年に比べ▲3,549億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲6.9%(8月:同▲2.7%)、輸出価格が前年比5.5%(8月:同8.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲1.3%(8月:同▲3.8%)、輸入価格が前年比3.4%(8月:同6.4%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲1,872億円と40ヵ月連続の赤字となったが、8月の▲4,720億円からは赤字幅が縮小した。輸出が前月比2.0%と2ヵ月ぶりに増加する一方、円高、原油安の影響で輸入が同▲1.2%と2ヵ月連続で減少した。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年9月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=82.9ドル(当研究所による試算値)と、8月の87.1ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台半ばで推移しており、指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年10月以降、80ドル前後で推移することが見込まれる。

2.中国向け輸出の減少ペースが加速

24年9月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲0.3%(8月:同▲7.7%)、EU向けが前年比▲11.2%(8月:同▲12.3%)、アジア向けが前年比▲9.0%(8月:同2.1%)、うち中国向けが前年比▲15.1%(8月:同▲4.9%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 24年7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比0.7%(4-6月期:同▲1.6%)、EU向けが前期比2.2%(4-6月期:同▲8.3%)、アジア向けが前期比▲1.1%(4-6月期:同0.4%)、うち中国向けが前期比▲4.9%(4-6月期:同▲3.8%)、全体では前期比▲0.1%(4-6月期:同0.3%)となった。

米国、EU向けは前期比でプラスとなったが、前期までの落ち込みの反動も含まれており、基調は強くない。また、景気低迷が続く中国向けは、23年7-9月期から5四半期連続で減少し、24年度入り後は減少ペースが加速している。
自動車生産と自動車輸出の推移 品目別には、グローバルなIT関連財の回復を受けて、半導体等製造装置や半導体等電子部品等のIT関連輸出(実質ベース)が増加する一方、自動車輸出が低迷している。9月の自動車輸出(対世界、台数ベース)は、前年比▲10.2%(8月:同▲11.8%)と4ヵ月連続の減少となった。季節調整値(当研究所による試算値)では、前月比1.8%(8月:同▲1.8%)と5ヵ月ぶりに増加したが、7-9月期は前期比▲4.1%と3四半期連続の減少となった。

海外経済の減速が続くなか、輸出は当面低調に推移する可能性が高い。

3.7-9月期の外需寄与度は前期比0.2%程度のプラスに

9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、24年7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比2%台後半、輸入が前期比2%程度の増加となった。この結果、7-9月期の外需寄与度は前期比0.2%(4-6月期:同▲0.1%)と3四半期ぶりのプラスとなることが予想される。

当研究所では、鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、10/31のweeklyエコノミストレターで24年7-9月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率を押し上げるものの、民間消費、設備投資などの国内需要が低迷したことから、前期比年率1%前後の成長にとどまると予想している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年10月17日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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