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- マレーシア経済:24年7-9月期の成長率は前年同期比+5.3%~内外需が好調で力強い成長
2024年11月15日
2024年7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比5.3%増1(前期:同5.9%増)と低下し、市場予想2(同5.3%増)および10月にマレーシア統計局が発表した暫定値(同5.3%)と一致する結果となった(図表1)。
7-9月期の実質GDPを需要項目別に見ると、民間消費の鈍化が押し下げ要因となった。
民間消費は前年同期比4.8%増となり、前期の同6.0%増から低下した。他方、政府消費は前年同期比4.9%増(前期:同3.6%増)と上昇した。
総固定資本形成は同15.3%増(前期:同11.5%増)と二桁増が続いた。建設投資が同18.6%増(前期:同12.6%増)、設備投資が同12.3%増(前期:同11.8%増)と、それぞれ上昇した。なお、投資を公共部門と民間部門に分けてみると、全体の4分の3を占める民間部門が同15.5%増(前期:同12.0%増)、公共部門が同14.4%増(前期:同9.1%増)と加速した。
純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲0.4%ポイント(前期:+0.1%ポイント)とやや悪化した。まず財・サービス輸出は同11.8%増(前期:同8.4%増)と二桁成長となった。輸出の内訳を見ると、財貨輸出(同9.2%増)が加速したほか、サービス輸出(同27.3%増)の好調が続いた。一方で財・サービス輸入も同13.5%増(前期:同8.7%増)と加速して輸出を上回る伸びとなった。
供給側を見ると、主にサービス業と鉱業の鈍化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表2)。
まずGDPの6割弱を占める第三次産業は前年同期比5.2%増(前期:同5.9%増)と低下した。宿泊業(同14.3%増)と不動産・ビジネスサービス(同14.2%増)、運輸・倉庫(同10.6%増)、が二桁増となり、卸売・小売(同4.2%増)が堅調に推移した一方、食料・飲料(同4.0%増)と金融・保険(同3.5%増)、情報・通信(同3.5%増)は伸び悩んだ。政府サービス(同5.1%増)は順調だった。
第二次産業は前年同期比5.7%増(前期:同5.0%増)と上昇した。まず製造業は同5.6%増(前期:同4.7%増)と上昇し、2四半期連続のプラス成長となった。内訳を見ると、金属製品(同9.9%増)や動植物性油脂(同15.5%増)、ゴム製品(同10.1%増)が好調だったほか、主力の電子機器(同5.7%増)が改善したが、輸送用機器(同0.3%増)や石油製品(同2.4%増)、食品加工(同3.9%増)、化学製品(同4.1%増)は伸び悩んだ。また建設業が同19.9%増となり、前期の同17.3%増から更に加速した。他方、鉱業は同3.9%減(前期:同2.7%増)となり、天然ガス(同2.8%減)と原油(同7.3%減)がそれぞれ減少した。
第一次産業は同3.9%増(前期:同7.3%増)と鈍化した。前期は好調だったパーム油(同7.3%増)と畜産(同2.7%増)が鈍化、漁業・養殖業(同0.5%減)が4期ぶりに減少した。
1 2024年11月15日、マレーシア中央銀行が2024年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
まずGDPの6割弱を占める第三次産
第二次産業は前年同期比5.7%増(前期:同5.0%増)と上昇した。まず製造業は同5.6%増(前期:同4.7%増)と上昇し、2四半期連続のプラス成長となった。内訳を見ると、金属製品(同9.9%増)や動植物性油脂(同15.5%増)、ゴム製品(同10.1%増)が好調だったほか、主力の電子機器(同5.7%増)が改善したが、輸送用機器(同0.3%増)や石油製品(同2.4%増)、食品加工(同3.9%増)、化学製品(同4.1%増)は伸び悩んだ。また建設業が同19.9%増となり、前期の同17.3%増から更に加速した。他方、鉱業は同3.9%減(前期:同2.7%増)となり、天然ガス(同2.8%減)と原油(同7.3%減)がそれぞれ減少した。
第一次産業は同3.9%増(前期:同7.3%増)と鈍化した。前期は好調だったパーム油(同7.3%増)と畜産(同2.7%増)が鈍化、漁業・養殖業(同0.5%減)が4期ぶりに減少した。
1 2024年11月15日、マレーシア中央銀行が2024年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
7-9月期GDPの評価と先行きのポイント
マレーシア経済は輸出と投資の拡大に支えらえて2024年前半の成長率が前年同期比+5.1%となり、2023年前半の同+4.1%から加速したが、今回発表された7-9月期の成長率は前年同期比+5.3%となり、前期の同5.9%から鈍化した。
7-9月期は主に民間消費の鈍化と純輸出の悪化が成長率低下に繋がった。まず外需は、半導体サイクルの継続的な回復により電子機器の海外需要が拡大しており、財輸出(同+9.2%)が好調だった。またサービス輸出(同+27.3%)もインバウンド需要の回復により大幅な伸びが続いた。7-9月期の外国人旅行者数は7-9月期も順調に増加(同+23.8%)しており、コロナ禍前の水準を回復している(図表4)。このように輸出は好調だったが、資本財や中間財の国内需要が増えて輸入(同+13.5%)も大きく伸びため、純輸出はマイナスに寄与した。
まず内需はGDPの6割を占める民間消費が同+4.8%と堅調に拡大したが、ベース効果の影響で高水準だった前期の同6.0%から低下した。引き続き雇用者数の増加(図表3)やインフレの安定(同+1.9%)、更には政府の低所得層向け現金給付制度「スンバンガン・トゥナイ・ラフマー」の給付が開始したため、民間消費は前期比でみると6.4%増と大きく伸びた。
また総固定資本形成(同+15.3%)は、建設投資(同+14.4%)と設備投資(同+12.3%)が揃って二桁増となった。長期にわたるインフラ事業の進展や政府のマスタープランに盛り込まれた基幹事業の実行などにより順調に推移している。また投資が好調な背景には米中貿易摩擦を背景に中国に代わる生産拠点としてマレーシアは欧米や中国の半導体企業からの注目を集めていることもある。
7-9月期は主に民間消費の鈍化と純輸出の悪化が成長率低下に繋がった。まず外需は、半導体サイクルの継続的な回復により電子機器の海外需要が拡大しており、財輸出(同+9.2%)が好調だった。またサービス輸出(同+27.3%)もインバウンド需要の回復により大幅な伸びが続いた。7-9月期の外国人旅行者数は7-9月期も順調に増加(同+23.8%)しており、コロナ禍前の水準を回復している(図表4)。このように輸出は好調だったが、資本財や中間財の国内需要が増えて輸入(同+13.5%)も大きく伸びため、純輸出はマイナスに寄与した。
まず内需はGDPの6割を占める民間消費が同+4.8%と堅調に拡大したが、ベース効果の影響で高水準だった前期の同6.0%から低下した。引き続き雇用者数の増加(図表3)やインフレの安定(同+1.9%)、更には政府の低所得層向け現金給付制度「スンバンガン・トゥナイ・ラフマー」の給付が開始したため、民間消費は前期比でみると6.4%増と大きく伸びた。
また総固定資本形成(同+15.3%)は、建設投資(同+14.4%)と設備投資(同+12.3%)が揃って二桁増となった。長期にわたるインフラ事業の進展や政府のマスタープランに盛り込まれた基幹事業の実行などにより順調に推移している。また投資が好調な背景には米中貿易摩擦を背景に中国に代わる生産拠点としてマレーシアは欧米や中国の半導体企業からの注目を集めていることもある。
7-9月期の成長率は4-6月期から低下したものの、上述のとおりベース効果による民間消費の鈍化や内外需の拡大に伴う輸入の大幅な増加によるものであり、7-9月期のGDPは非常に良い内容であった。昨年は世界的な需要低迷により景気が減速したマレーシア経済だが、今年は内需・外需が順調に拡大しており通年の成長率は政府目標(4~5%)の上限を突破しそうだ。もっとも来年は政府が増税や燃料補助金の合理化を実施する計画であり、インフレ率は加速(政府予想は+2.0~3.5%)するとみられている。米トランプ新政権の行方や国際商品市況の動向次第でリンギ相場は不安定化してインフレが上振れする可能性も予想されるなか、マレーシア中銀は現行の金融政策を維持して、慎重な政策運営を続けるものとみられる。
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(2024年11月15日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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