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- ベトナム経済:24年7-9月期の成長率は前年同期比7.4%増~輸出と製造業に支えられ2四半期連続で加速
2024年10月07日
1.結果の概要:成長加速、市場予想を大きく上回る
2024年7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比7.4%増1(前期:同7.09%増)と上昇し、市場予想2(同6.10%増)を大きく上回る結果となった(図表1)。
産業別の伸び率をみると、まず鉱工業・建設業は同9.59%増となり、前期の同8.78%増から上昇した(図表1)。主力の製造業は同11.41%増(前期:同10.39%増)と加速した。また電気・ガス業が同8.06%増(前期:同13.31%増)と堅調に拡大した。一方、鉱業が同7.09%減(前期:同8.58%減)と低迷したほか、建設業が同7.09%増(前期:同7.76%増)と鈍化した。
GDPの4割強を占めるサービス業は同7.51%増となり、前期の同7.10%増から上昇した。サービス業の内訳を見ると、運輸・倉庫業(同11.07%増)が二桁成長となり、また宿泊・飲食業(同8.75%増)や金融業(同8.44%増)や卸売・小売業(同7.97%増)、党関連活動(同7.35%増)が堅調に推移した。一方、不動産業(同3.89%増)、保健・社会サービス(同4.36%増)、教育(同5.11%増)、情報・通信業(同4.90%増)、専門・科学技術サービス(同6.02%増)は相対的に緩やかな伸びにとどまった。
農林水産業は前年同期比2.58%増(前期:同3.64%増)と小幅に低下した。
1 10月6日、ベトナム統計総局(GSO)が2024年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
2.結果の評価と先行きのポイント
ベトナム経済は昨年、輸出の落ち込みや電力不足、不動産市場の停滞等により通年の成長率が同+5.1%(2022年:同+8.0%)と鈍化したが、年後半に輸出が増加に転じて景気は回復傾向にある。今年7-9月期の成長率は前年同期比7.4%(4-6月期:同+7.1%)だった。9月に大型台風が上陸して多くの事業活動が停止したものの、予想を覆して2四半期連続で成長が加速した。
7-9月期は主に鉱工業の改善が成長率上昇に繋がった。まず製造業(同+11.41%)は世界的な金融引き締めの影響で落ち込んでいた輸出が回復しており、前期の同+10.39%から加速した。通関ベースの貿易統計をみると、7-9月期の輸出(同+15.3%)はコンピュータ・電子部品や衣料品の出荷が米国向けを中心に回復して二桁成長が続いている(図表2)。また1-9月累計の海外直接投資(FDI)実行額は前年比+8.9%と順調に推移しており、デリスキングの観点でベトナムへの投資が活発化していることも製造業の好調につながったとみられる。また公共投資も拡大しており、建設業(同+7.07%)は堅調な伸びを維持した。
サービス業(同+7.51%)は前期の同+7.10%から加速した。ベトナム政府は外国人旅行者のビザ要件緩和や滞在可能期間の延長といった観光促進策を実施しており、7-9月期の外国人観光客が同+17.0%の387万人となった(図表3)。またモノの貿易量の増加したため、運輸・倉庫業(同+11.07%)と宿泊・飲食業(同+8.75%)が好調でサービス業全体を押し上げた。また7-9月期の消費者物価上昇率は同+3.48%(4-6月期が同+4.39%)となり、国際商品市況の価格下落を背景にガソリン価格が引き下げられて鈍化した(図表4)。更には雇用情勢の改善や付加価値税減税の継続、最低賃金の引き上げなども加わって家計の購買力が向上したため、小売業(同7.97%増)は堅調に拡大した。一方、不動産市場は回復傾向にあるものの、不動産業(同+3.89%)は緩やかな伸びにとどまった。
経済の先行きは世界的なIT関連需要と海外直接投資の拡大を受けて製造業生産が経済をけん引する展開が続きそうだ。また7月に最低賃金と公務員基礎給与の引き上げられており旺盛な消費需要が続くとみられ、内需も順調に推移しそうだ。今年8月には土地法などの不動産関連の法律が3本施行されており、今後も持続的な不動産市場の回復が続き、銀行の与信が増加する展開が予想される。従って、ベトナム経済の見通しは明るく、政府が掲げる通年の成長率目標(7.0%)の達成は狙える位置にあるが、地政学的な緊張や貿易紛争の激化により輸出が失速したり、不動産市場の回復が遅れたりすれば成長目標の達成が危うくなるだろう。
7-9月期は主に鉱工業の改善が成長率上昇に繋がった。まず製造業(同+11.41%)は世界的な金融引き締めの影響で落ち込んでいた輸出が回復しており、前期の同+10.39%から加速した。通関ベースの貿易統計をみると、7-9月期の輸出(同+15.3%)はコンピュータ・電子部品や衣料品の出荷が米国向けを中心に回復して二桁成長が続いている(図表2)。また1-9月累計の海外直接投資(FDI)実行額は前年比+8.9%と順調に推移しており、デリスキングの観点でベトナムへの投資が活発化していることも製造業の好調につながったとみられる。また公共投資も拡大しており、建設業(同+7.07%)は堅調な伸びを維持した。
サービス業(同+7.51%)は前期の同+7.10%から加速した。ベトナム政府は外国人旅行者のビザ要件緩和や滞在可能期間の延長といった観光促進策を実施しており、7-9月期の外国人観光客が同+17.0%の387万人となった(図表3)。またモノの貿易量の増加したため、運輸・倉庫業(同+11.07%)と宿泊・飲食業(同+8.75%)が好調でサービス業全体を押し上げた。また7-9月期の消費者物価上昇率は同+3.48%(4-6月期が同+4.39%)となり、国際商品市況の価格下落を背景にガソリン価格が引き下げられて鈍化した(図表4)。更には雇用情勢の改善や付加価値税減税の継続、最低賃金の引き上げなども加わって家計の購買力が向上したため、小売業(同7.97%増)は堅調に拡大した。一方、不動産市場は回復傾向にあるものの、不動産業(同+3.89%)は緩やかな伸びにとどまった。
経済の先行きは世界的なIT関連需要と海外直接投資の拡大を受けて製造業生産が経済をけん引する展開が続きそうだ。また7月に最低賃金と公務員基礎給与の引き上げられており旺盛な消費需要が続くとみられ、内需も順調に推移しそうだ。今年8月には土地法などの不動産関連の法律が3本施行されており、今後も持続的な不動産市場の回復が続き、銀行の与信が増加する展開が予想される。従って、ベトナム経済の見通しは明るく、政府が掲げる通年の成長率目標(7.0%)の達成は狙える位置にあるが、地政学的な緊張や貿易紛争の激化により輸出が失速したり、不動産市場の回復が遅れたりすれば成長目標の達成が危うくなるだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年10月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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