コラム
2024年11月08日

内外株式ファンドで売却膨らむ~2024年10月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式ファンドへの資金流入がさらに鈍化

2024年10月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式ファンドに7,800億円の資金流入があった【図表1】。9月の8,900億円から1,500億円減少し、2024年に入って最小となった【図表2】。
【図表1】 2024年10月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
【図表2】外国株式ファンドの資金流出入
特に一般販売されている外国株式ファンドの中では、アクティブ型(【図表2】緑棒)で流入の減少が顕著であった。10月は「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド」(【図表3】赤太字)を中心に新規設定されたアクティブ型の外国株式ファンド9本に900億円と9月の600億円以上に新設ファンドが資金を集めていた。さらに人気の予想分配金提示型2本(青太字)なども9月以上の資金流入があった。それにもかかわらず、一般販売されているアクティブ型の外国株式ファンド全体だと1,500億円の資金流入と9月の2,700億円から1,200億円減少した。
【図表3】 2024年10月の推計純流入ランキング

一部のアクティブ型の外国株式ファンドで売りが膨らむ

これは一部のアクティブ型の外国株式ファンドで10月に売却が膨らんだためだと推察される。実際に10月に資金流出が大きかったファンドをみると上位10本中8本(【図表4】赤太字)がアクティブ型の外国株式ファンドであり、しかも8本すべてが9月から資金流出が加速していた。
 
10月は為替市場で1ドル140円台前半から150円台を超えるなど円安が進行した。さらに米国株式を中心に世界的に株価も上昇したため、上記の8本を含む多くの外国株式ファンドは基準価額が大きく上昇した。それに加えて11月初に米大統領選挙も控え、先行きに対して不透明感もあったため、基準価額が高いうちにと売却する人が多かったのかもしれない。
【図表4】 2024年10月の推計純流出ランキング

つみたて投資枠の存在感増す

一方で一般販売されているインデックス型の外国株式ファンド(【図表2】黄棒)も5,400億円と9月の5,600億円から減少したが、減少幅は小幅であった。8月以降でも5,000億円以上の資金流入が続いており、NISA口座、特につみたて投資枠から大規模な買付が続いていることがうかがえる。
 
実際にNISA口座からの買付状況をみると、つみたて投資枠(黄棒)から2024年1-3月に1兆400億円の買付があり、さらに4-6月は1兆1,700億円に増加している【図表5:左】。つまり4-6月は平均するとつみたて投資枠から毎月4,000億円弱の買付があった計算になる。
 
7月以降もつみたて投資枠からの買付は、証券会社10社では緩やかに増加している【図表5:右】。そのためNISA口座全体でも、つみたて投資枠から毎月4,000億円前後の買付が続いている可能性が高く、その大部分がインデックス型の外国株式ファンドに向かっていると推察される。
 
なお、成長投資枠からの買付は商品によらず年初と比べて落ち着いてきている。特に証券会社10社では8月、9月と成長投資枠からの投信の買付(緑棒)が一段と鈍化し、つみたて投資枠の買付額を下回っている【図表5:右】。
【図表5】 2024年のNISA口座からの買付

国内株式ファンドは今年初の売却超過に

また、10月は国内株式ファンドが流出額こそ400億円と少額ではあったが、2024年に入って初めて資金流出に転じた。日経平均株価が一時4万円目前まで上昇するなど月中に高値圏で推移したこともあり、国内株式ファンドもアクティブ型の外国株式ファンドと同様に売却が膨らんだようだ。
 
ただ、国内株式ファンドでは一般販売されているものに限ると、タイミング投資が多いインデックス型だけでなくアクティブ型も流出超過であった。しかも流出額がアクティブ型で600億円とインデックス型の200億円と比べて大きかったことはやや意外であった。

さらに外国債券ファンドも10月に資金流出に転じたこともあり、ファンド全体だと10月は8,100億円の資金流入と9月の1兆1,700億円から3,600億円減少し、2024年に入ってから初めての1兆円割れとなった。

一部のテーマ型の外国株式ファンドが特に好調

10月は円安に加えて世界的に株価が上昇する中、テーマ型の外国株式ファンドの中には月間の収益率が二桁になるなど特に高パフォーマンスをあげるものがあった【図表6】。
【図表6】 2024年10月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。

(2024年11月08日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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