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- 中国経済:24年7~9月期の評価-小幅減速にとどまるも内需悪化には歯止めがかからず、見かけよりも厳しい状況
2024年10月23日
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1.2024年7~9月のGDPの評価
中国国家統計局が2024年10月18日に発表した24年7~9月期の実質GDP成長率は、前年同期比+4.6%と、前期(24年4~6月期)の同+4.7%から小幅に減速し(図表1)、1~9月期の累計では、同+4.8%となった。他方、季節調整後の前期比(年率)は、前期比+3.6%と前期の同+2.0%から加速した。
前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+1.3%pt(前期+2.2%pt)、総資本形成が+1.2%pt(同+1.9%pt)、純輸出が+2.0%pt(同+0.6%pt)であった(図表2)。純輸出に関しては、輸出が高い伸びを続けた一方、輸入は減少したとみられる。内需の減速と輸出の拡大という年初来の構図のもと、政府消費悪化等の影響により内需の悪化度合いは強まっている。
前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+1.3%pt(前期+2.2%pt)、総資本形成が+1.2%pt(同+1.9%pt)、純輸出が+2.0%pt(同+0.6%pt)であった(図表2)。純輸出に関しては、輸出が高い伸びを続けた一方、輸入は減少したとみられる。内需の減速と輸出の拡大という年初来の構図のもと、政府消費悪化等の影響により内需の悪化度合いは強まっている。
産業別の実質GDP成長率をみると、第1次産業は前年同期比+3.2%(前期同+3.6%)、第2次産業は同+4.6%(前期同+5.6%)、第3次産業は同+4.8%(前期同+4.2%)となった(図表3)。製造業や建築業、卸小売業で減速が続いた一方、宿泊飲食業は横ばいとなり、金融業は加速した。不動産業は6四半期連続でマイナス成長となっているが、マイナス幅は1~3月期をピークに縮小傾向にある。
総じて、全体として内需が自律的回復力を欠いた不安定な状態に変わりはない。GDPデフレーターは、6四半期連続で前年同期比マイナスとなっており(図表4)、デフレ懸念も依然根強い。他方、9月単月では指標の一部に上向く兆しがみられる。今後は経済対策の効果により改善傾向が持続し、内需の減速に歯止めがかかるが注目点となるだろう。
総じて、全体として内需が自律的回復力を欠いた不安定な状態に変わりはない。GDPデフレーターは、6四半期連続で前年同期比マイナスとなっており(図表4)、デフレ懸念も依然根強い。他方、9月単月では指標の一部に上向く兆しがみられる。今後は経済対策の効果により改善傾向が持続し、内需の減速に歯止めがかかるが注目点となるだろう。
2.実体経済の動向
(生産・投資・外需)
生産の動向について、前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、8月から9月にかけて伸びが高まった(図表5)。政策支援や堅調な輸出を背景に年初来高い伸びを続けているハイテク製造業でも伸びが再び拡大した。サービス業部門の伸びは、5月以降、+4%台後半の水準で堅調な推移を続けてきたが、9月には+5%台に高まった。夏場の生産下押し要因として指摘されていた天候要因は、はく落したとみられる。
PMI調査の結果をみると、製造業では、前月から改善したが、依然として景気の好不況の境目である50を下回る水準にある。サービス業は、年初来50を上回る水準で推移を続けてきたが、9月には50を下回る水準に低下した(図表6)。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、7月以降具体的には発表されていないが、製造業、非製造業とも依然として6割を上回る水準にあるとみられる。
生産の動向について、前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、8月から9月にかけて伸びが高まった(図表5)。政策支援や堅調な輸出を背景に年初来高い伸びを続けているハイテク製造業でも伸びが再び拡大した。サービス業部門の伸びは、5月以降、+4%台後半の水準で堅調な推移を続けてきたが、9月には+5%台に高まった。夏場の生産下押し要因として指摘されていた天候要因は、はく落したとみられる。
PMI調査の結果をみると、製造業では、前月から改善したが、依然として景気の好不況の境目である50を下回る水準にある。サービス業は、年初来50を上回る水準で推移を続けてきたが、9月には50を下回る水準に低下した(図表6)。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、7月以降具体的には発表されていないが、製造業、非製造業とも依然として6割を上回る水準にあるとみられる。
投資の動向について、固定資産投資の前年同月比伸び率(名目、以下同)は、3月以降段階的に減速傾向にあったが、8月から9月にかけて改善が続いている(図表7)。業種別にみると、不動産開発投資のマイナス幅が徐々に縮小しているほか、製造業の投資についても、春先以降減速傾向にあったが、9月には持ち直した。また、インフラ投資の伸びが、9月になり前年同期比+17.5%と顕著に高まった。国債・地方債による資金調達が進んでいるほか、上述の天候要因のはく落が影響した可能性がある。なお、設備投資は、高水準ながらも5月をピークに減速を続けている。
外需の動向について、輸出(ドル建て)の伸びは、9月に減速した(図表8)。国・地域別では、ASEAN向けが5月をピークに減速を続けているのに加え、足もとで改善が続いていた日・米・EU向けの伸びも減速した。財別では、鉄鋼や自動車は比較的高い伸びを続けているのに対して、機械設備や電気電子製品、半導体の伸びは低下した。輸入(ドル建て)の伸びは、小幅に減速した。輸入価格の下落や内需の弱含み、在庫調整圧力の強まりの影響が続いているものとみられる。
外需の動向について、輸出(ドル建て)の伸びは、9月に減速した(図表8)。国・地域別では、ASEAN向けが5月をピークに減速を続けているのに加え、足もとで改善が続いていた日・米・EU向けの伸びも減速した。財別では、鉄鋼や自動車は比較的高い伸びを続けているのに対して、機械設備や電気電子製品、半導体の伸びは低下した。輸入(ドル建て)の伸びは、小幅に減速した。輸入価格の下落や内需の弱含み、在庫調整圧力の強まりの影響が続いているものとみられる。
(消費・家計)
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、春先以降勢いを欠いているが、9月は前月から加速した(図表9)。一定規模以上企業を対象にした統計で品目別の動向をみると、不動産関連の財(家具、建築・内装材)や宝飾品、化粧品で前年減が続いている(図表10)。不動産不況やマインドの冷え込みが引き続き影響しているとみられる。他方、家電・AV機器の伸びは、8月から9月にかけて伸びを高めており、家電買い替え支援策の効果が表れているとみられる。自動車については、9月になり前年比の減少幅が▲0.1%まで縮小した。過剰生産やガソリン車の販売不振を背景とする価格低下は続いている模様だが、一方で、買い替え支援策の効果が表れ始めた可能性がある。
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、春先以降勢いを欠いているが、9月は前月から加速した(図表9)。一定規模以上企業を対象にした統計で品目別の動向をみると、不動産関連の財(家具、建築・内装材)や宝飾品、化粧品で前年減が続いている(図表10)。不動産不況やマインドの冷え込みが引き続き影響しているとみられる。他方、家電・AV機器の伸びは、8月から9月にかけて伸びを高めており、家電買い替え支援策の効果が表れているとみられる。自動車については、9月になり前年比の減少幅が▲0.1%まで縮小した。過剰生産やガソリン車の販売不振を背景とする価格低下は続いている模様だが、一方で、買い替え支援策の効果が表れ始めた可能性がある。
(2024年10月23日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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