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- 東南アジア経済の見通し~輸出の回復とインフレ圧力の緩和により、堅調な成長が続く
2024年09月26日
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1.東南アジア経済の概況と見通し
(経済概況:財輸出の復調により景気改善)
東南アジア5カ国(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム)の経済は足元の景気が改善している。2023年は財輸出が落ち込み景気減速したが、今年はインバウンド需要の回復が続くなか、財輸出が上向いている。また内需は、昨年から金融引き締めの累積効果が家計や企業活動の重石となっているが、インフレ圧力の緩和や労働市場の改善、政府主導のインフラ開発などが下支えとなり堅調な伸びを維持している。
東南アジア5カ国(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム)の経済は足元の景気が改善している。2023年は財輸出が落ち込み景気減速したが、今年はインバウンド需要の回復が続くなか、財輸出が上向いている。また内需は、昨年から金融引き締めの累積効果が家計や企業活動の重石となっているが、インフレ圧力の緩和や労働市場の改善、政府主導のインフラ開発などが下支えとなり堅調な伸びを維持している。


東南アジア5カ国の消費者物価上昇率(以下、インフレ率)は昨年後半から各国で底打ちの動きがみられたが、足元のインフレは落ち着いた推移が続いている(図表2)。2022年は世界的なインフレの波が東南アジアにも到来したが、昨年はエネルギー価格の下落や各国中銀の金融引締め等により鈍化傾向が続いた。そして今年前半は天候要因を背景とした食料インフレや通貨安を受けて上昇傾向がみられたものの、インフレは概ね安定して推移した。
先行きのインフレは落ち着いた推移が続くが、来年は徐々に上向くと予想する。当面はこれまでの利上げの累積効果が続くほか、9月の米国の利下げ開始に伴うドル安・自国通貨高により輸入価格が低下するだろう。もっとも、東南アジア各国は米国に合わせる形で利下げを進め、景気の回復傾向が続くなかで各国のインフレが徐々に加速する展開を予想する。

東南アジア5カ国の金融政策は、インフレが加速した2022年に金融引き締めを開始したが、昨年はインフレが落ち着きを取り戻すなかで、各国中銀は徐々に利上げ局面を終了していくこととなった(図表3)。しかし、今年半ばから米国の利下げ観測が高まり、ドル安圧力が強まったため、東南アジア通貨が上昇して現在は金利を引き下げる余地が生まれている。このため、米国に先行する形でフィリピン中銀が8月に、インドネシア中銀が9月にそれぞれ0.25%の利下げを実施した。
先行きは金融緩和に踏み切る国が更に増えると予想する。足元では利下げを実施した米国との間の金利差を反映して東南アジア通貨は上昇傾向が続いており、先行きのインフレ警戒感が和らいでいる。各国中銀は堅調な成長モメンタムを形成・維持するため米国に追随する形で金融緩和を進めるだろう。インドネシアとフィリピン、タイ、マレーシアが年内に利下げを実施、ベトナムは来年1-3月に利下げに踏み切ると予想する。
(経済見通し:輸出の回復とインフレ圧力の緩和により堅調な成長が続く)
東南アジア5カ国は輸出の回復とインフレ圧力の緩和により堅調な成長が続くだろう。
外需については、米国や中国の景気動向に不透明さが残っているが、今後は世界的に中央銀行の利下げが進み、世界経済の底堅い成長が予想される。引き続きIT関連需要が回復して財輸出の増加傾向が続くだろう。一方、サービス輸出はコロナ禍からの経済正常化により盛り上がりをみせた過去2年間と比べて勢いは落ちるものの、持続的に拡大するだろう。アジア地域のインバウンド需要はコロナ禍からの回復の途上にあり、今後は中国人観光客の復調が牽引役となるほか、ビザ優遇措置などの各国政府の観光促進策が外国人観光客の増加に寄与するとみられる。
内需は堅調に推移すると予想する。インフレ圧力の緩和や観光業・製造業の回復による労働市場の改善を受けて家計の実質所得が増加し、民間消費は堅調な伸びを維持するだろう。また投資は各国政府の大型インフラ整備計画の継続、輸出回復による製造業の業績改善、サプライチェーン多様化による東南アジアへの直接投資の流入などが支えとなり底堅い成長が続くと予想する。もっとも年内はこれまでの金融引締めの累積効果が家計・企業の活動を圧迫するため、内需は力強さに欠ける展開になるだろうが、金融緩和が進むなかで2025年は次第に内需が活性化して外需とバランスの取れた成長となるだろう。
東南アジア5カ国は輸出の回復とインフレ圧力の緩和により堅調な成長が続くだろう。
外需については、米国や中国の景気動向に不透明さが残っているが、今後は世界的に中央銀行の利下げが進み、世界経済の底堅い成長が予想される。引き続きIT関連需要が回復して財輸出の増加傾向が続くだろう。一方、サービス輸出はコロナ禍からの経済正常化により盛り上がりをみせた過去2年間と比べて勢いは落ちるものの、持続的に拡大するだろう。アジア地域のインバウンド需要はコロナ禍からの回復の途上にあり、今後は中国人観光客の復調が牽引役となるほか、ビザ優遇措置などの各国政府の観光促進策が外国人観光客の増加に寄与するとみられる。
内需は堅調に推移すると予想する。インフレ圧力の緩和や観光業・製造業の回復による労働市場の改善を受けて家計の実質所得が増加し、民間消費は堅調な伸びを維持するだろう。また投資は各国政府の大型インフラ整備計画の継続、輸出回復による製造業の業績改善、サプライチェーン多様化による東南アジアへの直接投資の流入などが支えとなり底堅い成長が続くと予想する。もっとも年内はこれまでの金融引締めの累積効果が家計・企業の活動を圧迫するため、内需は力強さに欠ける展開になるだろうが、金融緩和が進むなかで2025年は次第に内需が活性化して外需とバランスの取れた成長となるだろう。

今年11月には米国で大統領選挙が予定される。トランプ氏が大統領に返り咲けば対中関税率の引上げなど対中強硬路線が更に強まる可能性が高い。この場合、アセアン諸国では迂回輸出や代替生産が増加して米国向け輸出が増えるだろう。従って、米中経済の切り離しはアセアン経済にとってプラスの効果が見込まれるが、トランプ氏の米国第一主義の矛先は中国だけではなく、米国が貿易赤字を抱えるアセアン諸国に向けられ、制裁対象となるリスクもある。こうした潜在的なリスクが残る状況が続くと、国際金融市場における評価が下がり、東南アジアは海外資金の流出に晒されるリスクにも注意を払う必要が高まる。
(2024年09月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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