コラム
2024年09月10日

投資部門別売買動向(24年8月)~事業法人が大幅買い越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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8月の日経平均株価は、上旬は日銀の追加利上げ懸念や8月米雇用統計の予想以上の悪化による米景気後退懸念、さらには1ドル146円台まで急速に円高が進行したことが嫌気され、5日の日経平均株価は前日比4,451円安の3万1,458円まで急落した。しかし、その後は日銀副総裁のハト派発言や米国の堅調な経済指標を受けて米景気後退懸念が和らぎ、日経平均株価は急速に反発し13日には3万6,000円台を回復した。1ドル149円台まで円安が進行したことも好感され、16日には3万8,062円まで上昇した。下旬はジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長のハト派発言を受けて、再び為替市場で円高が進行し日経平均株価は上値を抑えられる場面もあったが、3万8,000円台で底堅く推移した。月末の日経平均株価は3万8,647円で終えた。このように日経平均株価が推移するなか、事業法人、信託銀行が買い越す一方で、海外投資家、個人が売り越した(図表1)。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2024年8月(8月5日~30日)の投資部門別の売買動向を見ると、事業法人は現物と先物の合計で1兆1,241億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。2024年1月から8月までの自社株買い設定金額(TOPIX構成銘柄)は12兆円に達しており、既に2023年の年間設定金額9.4兆円を約2.6兆円上回っている。特に日経平均株価が過去最大の下げ幅4,451円を記録した5日を含む8月第1週(8月5日~9日)は、現物と先物の合計で4,934億円と大幅に買い越した。自社の株価が下落し、割安になった時点で積極的に自社株買いを行った企業が多かったことが推測される(図表2)。
図表2 特に8月第1週は大幅に買い越した
また、8月は信託銀行も現物と先物の合計で9,153億円の買い越しと2023年11月以来の買い越しだった。これは8月に入ってからの日経平均株価の急落を受け、年金基金等のリバランス買いが行われたことが理由と考えられる(図表3)。
図表3 2023年11月以来の買い越し
一方、海外投資家は現物と先物の合計で8月に9,549億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。8月第1週(8月5日~9日)は、先物が大幅に売り越された一方、現物は小幅に買い越した。しかし、8月第3~4週(8月19日~30日)に日経平均株価が3万8,000円台を回復して以降は、現物の買いは続かず売りが優勢となった(図表4)。
図表4 海外投資家は売り越し
また、8月は個人も現物と先物の合計で8,652億円の売り越しだった。7月下旬に買い越していたため、8月の月初に日経平均株価が急落した時は様子見姿勢が強く、その後反発した局面で売りが優勢となったと考えられる。通常、海外投資家は順張り、個人投資家は逆張りの傾向が強いが、8月は日経平均株価が乱高下するなかで、海外投資家と個人ともに売り越すという同方向の動きとなった(図表5)。
図表5 個人は8月すべての週で売り越した
 
 

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(2024年09月10日「研究員の眼」)

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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