コラム
2024年08月13日

投資部門別売買動向(24年7月)~海外投資家は大幅売り越し、年初来でも売り越しに転じる~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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7月の日経平均株価は、前半に上昇し後半に下落する「往って来い」の動きとなった。上旬は1ドル161円台までの円安進行、米ハイテク株の上昇が好感され、日経平均株価は、2日に4万円を突破し、11日に4万2,224円まで上昇した。しかし、中旬にはトランプ氏のドル高是正発言や、米国の対中半導体規制報道が嫌気され、一転して下落した。その後も、日米金融政策への不透明感や、1ドル153円台まで円高が進行したことから、日経平均株価は22日に4万円を割り、26日に3万7,667円まで下落した。31日に日銀が政策金利0.25%の引き上げと国債買い入れの減額計画を公表すると、1ドル149円台まで円高が進行したが、米国の対中半導体規制で日本や韓国が除外されるという報道を受けて買いが入り、月末の日経平均株価は3万9,101円で終えた。このように日経平均株価が推移するなか、個人、事業法人が買い越す一方で、海外投資家、信託銀行が売り越した(図表1)。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2024年7月(7月1日~8月2日)の投資部門別の売買動向をみると、個人は現物と先物の合計で1兆2,900億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった(図表2)。特に日経平均株価が約5,200円下落した7月第3~5週(7月16日~8月2日)は、現物と先物の合計で1兆6,370億円と大幅に買い越しており、株価が下落した時に買いを入れる逆張りの動きは顕在だった。
図表2 個人は買い越し
一方で、海外投資家は現物と先物の合計で7月に1兆5,905億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった(図表3)。7月第1~2週(7月1日~12日)は、現物と先物の合計で1兆8,550億円と買い越しており、日経平均株価は同期間に約1,600円上昇した。しかし、7月第3~5週(7月16日~8月2日)は、一転して3兆4,450億円と大幅に売り越しており、同期間に日経平均株価は約5,200円下落した。
図表3 海外投資家は月の前半買い越しも、後半は一転して大幅売り越し
海外投資家の年初来からの動向を確認するため、2024年1月以降の海外投資家の現物と先物の売買動向を、週次で累積した(図表4)。海外投資家は、2024年1月第2週以降、現物と先物の合計で買い越していたものの、7月第3週以降大幅売り越しに転じたことで、7月第5週は、年初来で見ても売り越しとなった。
図表4 海外投資家は年初来で売り越しに転じた
また、7月は信託銀行も現物と先物の合計で1兆651億円の売り越しと2023年12月から8カ月連続の売り越しだった(図表5)。7月は特に第2週(7月8日~12日)は9,970億円と大幅に売り越した。年金基金等のリバランス以外にも、上場投資信託(ETF)の分配金捻出のための売りが背景にあると思われる。ただし、日経平均株価が約5,200円下落した7月第3週~第5週(7月16日~8月2日)は現物と先物合計で3,240億円買い越しており、リバランスの売りは一旦は落ち着いた様子である。
図表5 信託銀行8カ月連続の売り越し
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年08月13日「研究員の眼」)

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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