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- 米インフレの鈍化が鮮明-コアサービス価格の低下から25年にかけてインフレの低下基調は持続へ
2024年08月26日
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1.はじめに
米国経済はFRBによる大幅な金融引締めの影響もあって労働市場をはじめ減速が続いている。一方、消費者物価指数(CPI)は総合指数が24年7月に前年同月比+2.9%と21年3月以来の水準に低下したほか、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除くコア指数も+3.2%と21年4月以来の水準に低下するなど足元でインフレ鈍化が鮮明となってきた。
このような状況に対してFRBは7月のFOMC会合で今後の金融政策の意思決定において従前のインフレ重視から労働市場や景気にも目配せする姿勢が示された。もっとも、今後利下げ開始時期や利下げペースをみる上では引き続きインフレ動向が重要な鍵を握っている。
本稿では7月のCPI動向を確認した後、CPIの主要な項目を中心に今後の見通しを論じた。結論から言えば、地政学リスクに伴うエネルギー価格の急騰を回避できる前提で、CPIはコアサービス価格の低下もあって、総合指数、コア指数ともに25年にかけて緩やかながら低下基調の持続が見込まれるというものだ。
このような状況に対してFRBは7月のFOMC会合で今後の金融政策の意思決定において従前のインフレ重視から労働市場や景気にも目配せする姿勢が示された。もっとも、今後利下げ開始時期や利下げペースをみる上では引き続きインフレ動向が重要な鍵を握っている。
本稿では7月のCPI動向を確認した後、CPIの主要な項目を中心に今後の見通しを論じた。結論から言えば、地政学リスクに伴うエネルギー価格の急騰を回避できる前提で、CPIはコアサービス価格の低下もあって、総合指数、コア指数ともに25年にかけて緩やかながら低下基調の持続が見込まれるというものだ。
2.米国のCPI等の動向
(7月CPIの振り返り)総合指数、コア指数ともに低下基調が持続
消費者物価(CPI)は総合指数が24年7月の前年同月比で+2.9%となり、4ヵ月連続で低下し21年3月以来の水準に低下した(前掲図表1)。また、コア指数も+3.2%と23年2月の+5.6%をピークに低下基調が持続、21年4月以来の水準に低下した。
とくに、コア指数は期間別にみても7月の前月比年率が+2.0%と24年1月の+4.8%でピークをつけた後、FRBの物価目標水準(2%)まで低下した(図表2)。また、3ヵ月前比年率が+2.3%と24年4月の+4.3%から3ヵ月連続で低下し、21年3月以来の水準となった。期間別のコア指数は前月比年率、3ヵ月前比年率ともに24年初から春先にかけて上昇に転じていたものの、4月以降は低下基調が持続しており、足元で物価上昇圧力が緩和していることを示している。
消費者物価(CPI)は総合指数が24年7月の前年同月比で+2.9%となり、4ヵ月連続で低下し21年3月以来の水準に低下した(前掲図表1)。また、コア指数も+3.2%と23年2月の+5.6%をピークに低下基調が持続、21年4月以来の水準に低下した。
とくに、コア指数は期間別にみても7月の前月比年率が+2.0%と24年1月の+4.8%でピークをつけた後、FRBの物価目標水準(2%)まで低下した(図表2)。また、3ヵ月前比年率が+2.3%と24年4月の+4.3%から3ヵ月連続で低下し、21年3月以来の水準となった。期間別のコア指数は前月比年率、3ヵ月前比年率ともに24年初から春先にかけて上昇に転じていたものの、4月以降は低下基調が持続しており、足元で物価上昇圧力が緩和していることを示している。
一方、24年7月のCPI(前年同月比)の内訳をみると食料品価格が+2.2%と24年2月以降はほぼ横這い推移で安定しているほか、エネルギー価格が+1.1%と24年3月以降はプラスに転じているものの非常に低位に留まっている(図表3)。コア指数では後述するように新車・中古車価格がマイナスになっていることもあってコア財価格が▲1.9%と24年1月からマイナスで推移しており、コアCPIの押し下げ要因となっている。これに対して、コアサービス価格のうちおよそ6割を占める住居費が+5.1%と23年3月につけた+8.2%のピークからは低下したものの、依然として物価目標を大幅に上回る水準で高止まりしている。さらに、コアサービス価格のうち、賃金との連動性の高さが指摘される住居費を除いた価格指数も+4.5%と24年4月の+4.9%をピークに3ヵ月連続で低下したものの、低下幅は限定的に留まっている。
(エネルギー・食料品価格)エネルギー、食料品ともに25年にかけて低位安定する見込み
原油価格は、22年2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻に伴い原油価格(WTI先物)はウクライナ侵攻前の90ドル台前半から、22年春先に一時120ドルを超える水準まで上昇した。その後はウクライナ侵攻が膠着状態に陥る中でウクライナ侵攻前を下回る水準に低下した。23年は中国の景気動向、欧米の金融政策、OPECプラスの減産などが材料視されたものの、概ね方向感のない展開が続いており、24年7月末が77.9ドルとなった(図表4)。
当研究所はイランとイスラエルによる全面戦争を回避する前提で原油価格見通し(WTI先物)を24年7-9月期に80ドルに小幅上昇した後、25年前半は75ドルで推移、その後は25年末にかけて77ドルまで上昇としており、25年末にかけて概ね75ドル~80ドルの狭いレンジで概ね横這い推移を予想している。24年秋口からOPECプラスによる減産縮小が開始されるため、需給緩和観測から原油価格は幾分弱含むものの、来年春先の米ドライブシーズンに伴う需要増加や来年夏場のOPECプラスの減産縮小の終了が原油価格を小幅に押上げるだろう。
また、ブルームバーグが集計したコンセンサス予想も当該期間において77ドル~80.6ドルの狭いレンジで推移することを予想しており、エネルギー価格による大幅な物価上昇を見込んでいない。
原油価格が当研究所の予想通りに推移した場合には、CPIにおけるエネルギー価格の影響はほぼニュートラルとみられる。一方、ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫など地政学リスクは燻っており、これらの進展次第では再び原油価格が急騰し、エネルギー価格がCPIを押し上げてインフレが再加速する可能性は残っている。
原油価格は、22年2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻に伴い原油価格(WTI先物)はウクライナ侵攻前の90ドル台前半から、22年春先に一時120ドルを超える水準まで上昇した。その後はウクライナ侵攻が膠着状態に陥る中でウクライナ侵攻前を下回る水準に低下した。23年は中国の景気動向、欧米の金融政策、OPECプラスの減産などが材料視されたものの、概ね方向感のない展開が続いており、24年7月末が77.9ドルとなった(図表4)。
当研究所はイランとイスラエルによる全面戦争を回避する前提で原油価格見通し(WTI先物)を24年7-9月期に80ドルに小幅上昇した後、25年前半は75ドルで推移、その後は25年末にかけて77ドルまで上昇としており、25年末にかけて概ね75ドル~80ドルの狭いレンジで概ね横這い推移を予想している。24年秋口からOPECプラスによる減産縮小が開始されるため、需給緩和観測から原油価格は幾分弱含むものの、来年春先の米ドライブシーズンに伴う需要増加や来年夏場のOPECプラスの減産縮小の終了が原油価格を小幅に押上げるだろう。
また、ブルームバーグが集計したコンセンサス予想も当該期間において77ドル~80.6ドルの狭いレンジで推移することを予想しており、エネルギー価格による大幅な物価上昇を見込んでいない。
原油価格が当研究所の予想通りに推移した場合には、CPIにおけるエネルギー価格の影響はほぼニュートラルとみられる。一方、ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫など地政学リスクは燻っており、これらの進展次第では再び原油価格が急騰し、エネルギー価格がCPIを押し上げてインフレが再加速する可能性は残っている。
一方、農務省(USDA)が発表するCPIにおける食料品価格の予想1は24年7月時点で24年が前年比+2.2%(予測レンジ:+1.5%~+2.9)と23年の+5.8%から低下し、足元の水準が持続すると見込まれているほか、25年が+2.0%(予測レンジ:▲3.7%~8.0%)と25年にかけて緩やかな低下が予想されている(前掲図表5)。このため、CPIの食料品価格も25年にかけて足元の安定した状況が続こう。
1 米商務省の経済調査局(ERS)の原材料や流通コストなども加味して毎月、今年および毎年7月から翌年の食品価格の年間変動率を予測。ERSは食品の現在の指数のレベルを分析し、食品のCPIの変化を調査し、食品のCPIの予測を構築。
1 米商務省の経済調査局(ERS)の原材料や流通コストなども加味して毎月、今年および毎年7月から翌年の食品価格の年間変動率を予測。ERSは食品の現在の指数のレベルを分析し、食品のCPIの変化を調査し、食品のCPIの予測を構築。

コア財価格(前年同月比)は、コロナ禍以前は概ねゼロ%近辺で推移していたものの、21年春先以降は上昇が顕著となり、22年2月には+12.3%まで上昇した(図表6)。コア財価格の上昇はコロナ禍に伴う供給制約の影響で自動車生産が減少したことから、中古車や新車の販売価格が大幅に上昇したことが大きい。実際に、中古車価格が21年6月に+45.2%まで上昇したほか、新車価格も22年4月に+13.2%まで上昇した。
その後、供給制約の回復に伴い自動車生産が回復に転じたこともあって、中古車および新車販売価格ともに低下に転じ、中古車が22年11月以降、新車も24年3月以降はマイナス転じて物価を押し下げている。
今後も中古車、新車ともにプラスに転じることが予想されるものの、景気減速に伴う自動車需要の低下も見込まれることから、大幅な上昇は見込み難い。このため、コア財価格はコロナ禍以前のゼロ%近辺での推移に戻ることが見込まれる。
(コアサービス(住居費))秋口以降、家賃指数の低下が緩やかになる可能性
CPIにおける住居費の構成要素である家賃指数は統計作成上、賃貸市場の家賃動向が反映するのにラグがあり、不動産情報サイトのZillowが推計する観察家賃指数(Zillow Observed Rent Index)2はCPIの家賃指数に概ね1年先行している。
CPIにおける住居費の構成要素である家賃指数は統計作成上、賃貸市場の家賃動向が反映するのにラグがあり、不動産情報サイトのZillowが推計する観察家賃指数(Zillow Observed Rent Index)2はCPIの家賃指数に概ね1年先行している。
(2024年08月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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