2024年08月19日

米住宅着工・許可件数(24年7月)-着工件数は市場予想を下回り、20年5月以来の水準に低下

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:住宅着工、許可件数ともに市場予想を下回る

8月16日、米国センサス局は7月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は123.8万件(前月改定値:132.9万件)と135.3万件から下方修正された前月を下回ったほか、市場予想の133.3万件(Bloomberg集計の中央値)も下回り、20年5月以来の水準に低下した(図表1、図表3)。

先行指標である着工許可件数(季節調整済、年率)は139.6万件(前月改定値:145.4万件)と144.6万件から上方修正された前月、市場予想の142.5万件を下回り、20年6月以来の水準に低下した(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:戸建て住宅の落ち込みが顕著

住宅着工件数の伸びは前月比▲6.8%(前月:+1.1%)と前月からマイナスに転じた(図表3)。集合住宅が+14.5%(前月:+4.6%)と前月から伸びが加速した一方、戸建てが▲14.1%(前月:▲0.1%)と前月からマイナス幅が拡大して着工件数全体を押し下げた(図表4)。

前年同月比は▲16.0%(前月:▲6.1%)と3ヵ月連続のマイナスとなったほか、マイナス幅が拡大した。内訳をみると、集合住宅が▲18.4%(前月:▲30.3%)と7ヵ月連続で2桁のマイナスとなったほか、戸建てが▲14.8%(前月:+6.6%)とマイナスに転じた。

地域別寄与度(前月比)は、北東部が+3.7%ポイント(前月:+1.1%ポイント)と2ヵ月連続でプラスを維持した一方、中西部が▲0.2%ポイント(前月:+1.9%ポイント)、南部が▲7.6%ポイント(前月:+0.3%ポイント)といずれも前月からマイナスに転じた。さらに、西部が▲2.7%ポイント(前月:▲2.3%ポイント)と2ヵ月連続マイナスとなった。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が▲4.0%(前月:+3.9%)と前月からマイナスに転じた(図表5)。戸建てが▲0.1%(前月:▲1.8%)とマイナス幅は縮小したものの、6ヵ月連続のマイナスとなったほか、集合住宅も▲11.1%(前月:+16.3%)とマイナスに転じた(図表6)。

前年同月比は▲7.0%(前月:▲2.6%)と6ヵ月連続のマイナスとなった。戸建てが▲1.6%(前月:▲0.7%)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、集合住宅が▲16.4%(前月:▲5.9%)と、こちらは17ヵ月連続のマイナスとなるなど悪化傾向が続いている。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、8月が39(前月:41)と小幅な改善を見込んだ市場予想(43)に反して4ヵ月連続で低下した(図表7)。

内訳は販売現況が44(前月:46)、客足が25(前月:27)とそれぞれ前月から低下した一方、販売見込みが49(前月:48)とこちらは2ヵ月連続で上昇するなど、販売現況とは対照的に販売見込みは幾分楽観的な見方となっている。

これに対して、NAHBのロバート・ディーツ主任エコノミストは「現在のインフレデータは連邦準備制度理事会による利下げを示しており、住宅ローン金利は8月第2週に大幅に低下しているため、購入者の関心と建設業者の感情は今後数カ月で改善するはずだ」と述べ住宅ローン金利の低下に伴う今後の住宅市場の回復に期待を示した。
 
 

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(2024年08月19日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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